第32話：人間の欲求は底なしだ
AGA治療を始めて5ヵ月が経とうとしている。頭頂部の薄毛は、かなり改善されてきた。治療を始める前と比べると、まるで別人のように見えるほどだ。
けれど、そこで満足できるほど人間の欲求は単純ではなかった。
頭頂部の変化と新たな悩み
以前は、ただ髪を取り戻したいと願っていた。頭頂部が透けて見えるのが嫌で、毎日鏡を見ては落ち込んでいた。
でも今、その悩みはほとんど解決されつつある。髪の密度が増え、スタイリング次第で薄毛が気にならなくなった。治療前の自分と比べると、雲泥の差だ。
「やってよかったな」
そう思える瞬間も増えてきた。
だが、その一方で、新たな欲求が生まれていた。
伸びない前髪
今の僕が気になって仕方ないのは、前髪だ。
治療前には普通に生えていた前髪が、初期脱毛で抜けてから、一向に伸びる気配がない。最初は「まぁ、そのうち生えてくるだろう」と軽く考えていたが、予想外にこの短い状態が続いている。
「こんなはずじゃなかった…」
頭頂部の心配が薄れたことで、今は完全に前髪のことばかり考えてしまうようになった。
新たな欲求の強まり
今の僕にとって、AGA治療の最優先事項は前髪の復活になっている。
「頭頂部が生えたんだから、前髪も生えてくれよ…」
そんな願いを抱きながら、今日も鏡の前で前髪を確認する。治療を始めた頃の悩みが解消されても、次の悩みが生まれる――人間の欲求は、本当に底なしだと思い知らされる。
頭頂部の悩みから解放された僕が、次に求めるのは前髪の復活。果たして、それは叶うのか。
■つづく → 近日公開
■はじめから → 第1話「頭頂部の危機、気づきの瞬間」
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