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QOL

別れの3月、寂しさと期待を胸に人々は旅立つ季節

僕の周りも例外なく何人も旅立っていく。

2022年2月28日、3年間お世話になっていたカラオケのバイト先でプチ送別会をやってもらった。

ご時世を考慮して仕事終わりみんなで軽く話しながら社食を食うぐらいだったがそれでも嬉しかったし少しばかり涙も出た。

送別会の対象は店長と、僕含めて夜勤組4人(これにて夜勤組総離脱)。

みな歳が近くいつもバイト明けそのまま飲みに行くような仲だったにも関わらず案外みんなの就職先を知らず、いい機会だから各々聞いてみることした。

まず2個上の姉さんは掛け持ちで働いている介護職に本腰を入れるという。介護職の方々は本当に尊敬して頭が上がらない。そしてこの方のお陰でオムツの着脱知識が増えた。

たまに風俗を奢ってくれた同い年のS田は警察官になるらしい。
とりあえず俺のチャリンコ盗んだやつ捕まえるとこから始めてほしい。

そしてこのバイトに誘ってくれた大学のクラスメイト、M藤に至っては空の自衛隊だという。
なかなかにエリートだ。
僕はいまだにUFOが怖いからぜひ撃ち落としてきてもらいたい。と言ったら整備の方だった。まあなんにせよ凄い。
ちなみに兄は自宅を守っているという。

そんな仲良し3人が介護士、警察官、自衛隊、と立派な職に就き御徒町のカラオケを旅立っていくという状況に胸が痛くなり情けなさが胸を押し寄せた。

そんなもの普通だろと思われるかもしれないが、みんなで退職届の「退職理由(できるだけ詳しく)」の欄に記入した際、僕だけ就職の2文字を書くことができなかったのだ。
そしてさらに
「転居に伴い交通の便が悪くなったため」
と自分の怠惰を日本の鉄道業界のせいにした。

こうして僕の3年間はなんとも中身のない1行で幕を閉じた。

ここのカラオケバイトが僕に色んなことを教えてくれたのだ。

まず初めに風俗だ。御徒町は湯島の歓楽街からほど近い。
結局どれだけ働いても僕はバイト帰りに度々、朝からやってる湯島の人妻風俗を利用してバイト代を溶かしていった。いい店であることは僕が保証する。
そんなこんなでこの人妻風俗から僕の風俗人生が幕を開けた。

そして元々は親戚の家の間借りのつつじヶ丘から通っていたがその頃は貯金が50万ほどあった。そらそうだ、家賃を払わなくていいし飯も作ってもらえる。
50万なんて今思うと日本の国家予算ぐらいの規模だ。

結局、その辺も相まって調子に乗って御徒町へバイト(と人妻風俗)へ行きやすくしようと笹塚へ引っ越したのだった。厳密には代田橋やけど。
こうして人生初の一人暮らしが始まった。

そんな豪遊の日々のバチが当たり貯金が底をつきた。そうなってくると当たり前のように風俗は我慢対象に入る。

そうしていると自然と笹塚から御徒町へ通うモチベーションは下がってくる。

こうして御徒町のバイトを飛んだ。

ような感じになっていた。

そうこうしてる内にこちらでもバイトを始めて御徒町が疎遠になり始めたとき、悲しい知らせが舞い込んできた。

我々夜勤組が愛してやまないおじさん店長が他店へ移動が決まったという。

おじ店は独身貴族の恩恵を我々に全力で還元してくれた人だった。
早締めした日はそのまま居酒屋に連れて行ってくれたり店長のお金でクリスマスパーティー開いてくれたり、
あと急に酔って前歯3本と眼鏡を損傷したまま出勤してきたりもしてた。これは我らには何の関係もないが。

そして中番リーダーによるグループLINEへの夜勤組の晒し首の恐怖から我々夜勤組を守ってくれていた。

夜勤組のミスは中番の狩人からしたら恰好のストレス発散の捌け口だ。
おせっかい女子に悪戯がバレたわんぱく男子の帰り学活のように、大きな声でグループLINEに晒し上げられる。

そんな夜勤組は総じて気が弱く言い返さない。僕だってそう。
ただそんな我々が飲みのときみんなで愚痴って発散するのをにこやかに聞いてくれていた。

そんな店長が御徒町の地からいなくなるのだ。
それならもう店にいる理由もない。し、店長から直々に「黒川は俺以外の店長ならクビにされると思うから一緒に消えよう」とのお言葉をいただいた。

なんにせよ店長に感謝しかないし店長の下で働けてよかった。
店長と共に店を去ることができて光栄だ。

この店を辞めることになんの悔いもない。

けど今日カラオケに制服を返しに行ったら新しい店長に会った。めちゃくちゃ綺麗なギャルだった。

やっぱもう少し続けたらよかった。
残ったメンバーが羨ましい。

そんなこんなで僕の東京に出てきて初のバイト先とはお別れした。
これであの頃の上京して希望に溢れた新鮮な自分は完全消滅したと思う。
もうあの頃の自分を知る人はほぼいないし自分ももう殆どあの気持ちを忘れたのだ。

こういう事があるから3月は苦手だ。

とか思ってたら今日新生活で引っ越す友達からドライヤーを譲り受けた。これで自然乾燥から卒業だ。
あと米を炊いたまま半年ぐらいフタを開けてない炊飯器の代わりに炊飯器もくれた。
生活水準が1ランク上がった。

3月も悪いことばかりではないかもしれない。

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