Boom Festival 2022 追憶レポート
2年に1回開かれる夢の祭典Boom Festival。チケットを抽選で手に入れ、マドリッドからポルトガル東部にあるBoomlandまでヒッチハイクにヒッチハイクを重ね行ってきました。10日間仲間とキャンプをして、新しい友達を作って音楽を聴いてワークショップに参加して。そんな夢のような体験をより鮮明に残すためにnoteを書きます。また次のBoomはなんと来年とのことなので、参加を検討されている方の参考になれば幸いです!
ヨーロッパでの準備体操
1週間過ごした海外沿いのヤングでヒップな街バルセロナから、スペイン王宮の品格溢れるハイソなセントラル、マドリードまで特急電車で移動。2階建で一列4席というゆったりした座席でがっつり2時間半爆睡し、マドリードに到着。※ちなみにマドリード Atocha駅には有料トイレしかないので1ユーロを私のように渋りたい場合は車内でおトイレを済ませておきましょう
Uberで予約したグランヴィア通りのホテルに向かう途中、マドリードに今も残る大航海時代のスペインのパワフルさに圧倒。バルセロナは道が狭くてちょっと薄暗くて、ピカソやらガウディやらの奇抜なアートや移民文化が混じり合うクールな街。一方でマドリードは、スペイン帝国の当時のすさまじさを見せつけられる統一した美しさを放つ街。
マドリードでは1泊しかなかったので、ピンチョスをぱくっと食べてさっそく必要品の調達にでかける。ちなみにマドリード、バルセロナとは比にならないくらい暑い。日本のあつさがリザードンだとすると、マドリードの暑さはヴァ・ルーダニアといったところ。少しでも日に当たろうものなら一気にエナジーゲージが50%ほどやられる。そんなこんなで今までスペイン人のシエスタ(お昼寝)を笑っていたけれど、あれは夏の暑さが特段厳しいこの地中海気候で生活する人たちの知恵だったのかと反省。というわけですこし暑さが落ち着く6時ごろからお出かけする。
Boom Festivalでの必需品
Boom Festivalの準備をするにあたって色々と調べてみたがまず情報が少ない。公式ページの端から端まで、HTMLに穴が開くほど読み込んでみたがそこでは限定された情報しかアクセスできない。これもまた、噂話をもって人々をコネクトさせようとするBoom Festivalによる仕掛けかの一部か(フッ)・・・とニヤリとしつつReddit(海外の2chみたいな掲示板)を読み漁る。しかしそこでもなお情報が限られている。みんな「らしい」「みたい」という伝聞調で、確からしい情報が見つからない。というものそもそもBoom Festivalは隔年開催で、かつ前回はコロナで "延期" となったので 2018年が最終開催。そのためみんな記憶が曖昧なのか、古参はどこかのコミューンに篭ってしまったのか、それとも賢人たちはインターネットたるものを信用していないのか、とにもかくにも情報がない。私はえいやで行きましたが、今回私の限られた経験をもとに、必要品やらを残しますので少しでも参考になればと思います。
衣服
とりあえず暑い。日中は40度を易々と超えるので、おしゃれとかなんとか言ってられない。といいつつ、Boomerたちは暑さを感じないおまじないをかけているのか、全然余裕な雰囲気で生活している。日本のムシッジメッな暑さは慣れていても、砂漠気候に近いBoomの暑さでの野外生活は未体験に近い。夜4時ごろ15度程度まで底冷えし、7時ごろに日が登る。そこからぐんぐんと気温があがり、11時ごろまでは気持ちよさをもって夏感を感じることができる。しかし12時ごろからだんだん太陽様の本気がみなぎり、徐々に攻撃的な暑さに変わっていく。正午という文字を信じでこれで暑さのピークだろうと思ったら大間違い。ポルトガル・スペインでは第1次世界大戦時の標準時子午線を決めた際、本来UTC-1であるところを政治的な理由でUTC+0にしたのと、さらにサマータイムを採用しているため正午が4時くらいにずれているイメージ。そのため日が落ちるのも遅く、日没が9時半で10時過ぎくらいまで明るい。
というわけで日本から気合をいれて持っていたパーティ服の出番は10時以降に限定され、日中はとりあえず暑さとの戦いになる。ちなみに夜はロンT
がちょうどいいくらいの気候なので、ジャケットなどは用意しなくていい。夜は好きな格好ができる唯一のまぼろしタイム。
40度と聞くと引いてしまって、よーしBoomは諦めよっかとUターンしてしまいそうになる方、どうかそちらでお引き止まりください。攻略法がございます。
それは、水の蒸発と太陽光の遮断。人間が暑さを感じると汗をかいて体の体温を下げるのと同じ要領で、濡れた布をまとって体温を下げるのでございます。日本でそんなことすると蒸し暑さに拍車をかけてしまうので想像もできないけど、よく砂漠の民が布を着込んでいるのは太陽光を遮断して体温を維持するという知恵の結集なのだ。そこで私も飛行機の移動用にと持って行ったヨガパンツとTシャツを着たまま野外シャワーを浴び、その上から濡らした布をまとう。あら不思議、流浪の民のような格好に。流浪の民の "ファッション"とは、過酷な環境のなかで身を守るアウトプットとしての最終形態だったのかと少し感心した。体を衣類で濡らして日陰にいると、信じられないくらい涼しい。涼しいを超えて少し寒い。そんなわけで、暑さでビビっている方はとりあえず濡れても動きやすい服と、軽いコットンの大判の布を持って行っていけば全然OK。ちなみに、私の友達の日本人は暑さをもろともせず、終始上裸で暑くなると湖に飛びこむという方法で暑さとともに生活をしていたので、暑さにつよい元気っ子は湖作戦でも!
小物類
上記の理由から、体を濡らすためのスプレーを持っていくと最高。とくに人気DJの時にはフロアに人が密集し、中央では風がなかなか届かないのでかなり暑い。そんな中でも、スプレーに水をいれてシュッシュと顔や体を濡らすと快適に過ごすことができる。私は小さなスプレーを持って行きましたが、50mlの小ささでは30分も持たなかった。できるだけ大きなサイズがおすすめ。スプレーに水をいれて、ダンスフロアでシュッシュと周りを濡らしてあげるとたちまち友達ができますので、そういった意味でもおすすめです。ちなみにBoomでも売ってるので現地調達でもOK!たしか5ユーロくらいだった。
あとは大変乾燥している土地なので、特に人が多いところに行くと土埃がひどくなる。鼻口を覆う布を持っていくと快適に過ごせますが、途中からそんなこと気にならなくなる。しかし土埃は馬鹿にできず、気にせずドスドス吸い込んだ翌日は咳がゴホゴホでますので、暑さ対策でもっていく大判の布を顔にまとうようにすると良いと思います。
キャンプ用品
私はご丁寧に日本からキャンプ用品を持って行きましたが、Boomの前に3週間旅行していたこともあってかなり辛かった・・・。日本から持っていかなくても、2つの方法で現地調達ができました。
その① DECATHLON で購入する
ヨーロッパの激安アウトドア用品店。2人用テントが25ユーロ、ハンモックが10ユーロ、タープが20ユーロ、そんな調子で購入できちゃいます。マドリードやリスボンなど主要都市に数店舗あり、海外Boomerのほとんどはデカトロンのキャンプ用品を使っていました。みんな同じように現地調達するため、水曜日(木曜日からBoomがOpen)にはデカトロンのキャンプ用品はまじで空っぽになります。タープが欲しかったので数店舗足を運びましたが、テントをはじめとするキャンプ用品はすべて完売。そのためこの形で現地調達する人は、すこし早めに店舗にいくことをおすすめします
その② Boom で購入する
デカトロンのキャンプ用品が、なんとBoomのスーパーマーケットで売ってます。Boomのスーパーマーケットはキャンプエリアとフロアのちょうど真ん中に位置していて、必要なものは大体揃います。そこで、1商品にあたり5ユーロのマークアップでテント・寝袋などなど全てのものが買えますのでこちらで買うのもおすすめです。ちなみに、Boom Busではなく別の方法で来る方はメインゲートからキャンプエリアまでかなりの道(しかも悪路)を歩くことになるので、できるだけ身軽で来ることをお勧めします。
靴
これは諸説ありますが、個人的なベストプラクティスはスニーカーでした。ブームのフロアは砂です。土埃が立たない様に、湖の砂を持ってきています。そのためとても踏みずらく、どしんどしんと踊るのが簡単ではありません。裸足で過ごしている人もいますが、乾燥した地帯なのでトゲのある植物がたくさん生えていて、素足で普段過ごしていない人の薄い皮にはドシドシトゲが入り込んできます。サンダルで過ごすのもありですが、フロアで踊るとなるとどうしても砂が入ってきて気持ち悪い。そして、なによりとりあえず毎日信じられないくらい歩きます。おそらく10kmは余裕で歩きます。ということで、私は10日間で色々試した結果歩きやすくて乾燥しやすいスニーカーがベストであると思いました。あとは靴を何足か持っていくのもおすすめ(靴擦れしたときに休ませるため)
いざゆかん、Boomlandへ
私はBoom Busのチケットを持っていたのですが、急遽参加を決めた友達が持っていなかったので別の方法で向かうことにしました。まずマドリードからBlahblah Carという相乗りサービスを使って、スペインの国境の小さな街 Valverde del fresnoに行きます。そこで一泊したのち、Boomlandまで車で送ってもらいます。Google Mapでは街から50分とのことだったので余裕をこいていたのですが、いきなり出現する長蛇の列。そしてその列の横では老若男女が車から出て、音楽を爆音でかけて踊り狂ってる。そう、すでにBoomは始まっていたのだ・・・・
さすがに送ってくれている少女に一緒に車で待ってもらうのは申し訳ないので、荷物を下ろしてヒッチハイクすることに。動かない車を回って次のポイントまで乗せてくれとお願いします。幸いにも優しいフランス人のおねえさん2人がさも美しいRVに招待してくれまして、そこでアプリコットを食べながら雑談。2人は15年来の親友で、それぞれ会社を辞めて世界中を旅してるとのこと。2時間ほどゆったり運転をして、Boomのゲート近くで停車。RVは今日ここで停車し、彼女たちも寝るとのことだったので感謝を伝えつつ徒歩で入場。すでに真っ暗になった道をてくてくと歩き、かなり殺気だったスタッフたちにバーコードを読み取ってもらいブレスレットをゲット。牛歩で進む車をヒッチハイクし、次に拾ってくれたのは元プロ水泳選手のデンマーク人。バルセロナオリンピックの強化選手としてバルセロナに移り住んだという人生の歩みに耳を傾けつつ、次の停車場に到着。どうやらこの先は一度に数台しか進めないらしく、数千という車がここで待機している。彼もここで仮眠をとるとのことだったので、私たちはまたテクテクと歩き、進んでいる車をヒッチハイクすることに。ヒッチハイクをしていると、みんな笑顔でこっちをみてくれたり「すまんね席がないんだよ、見つかるといいな〜」って叫んでくれたり、とっても優しい。この時すでに1時過ぎ。眠気と戦いながらヒッチハイクを続けると、70年代の雰囲気を身に纏ったキャンパーバンが泊まってくれた。カモンカモンと呼ばれ、急いで車に乗り込む。拾ってくれたのはオランダ人カップル。付き合って4ヶ月で1ヶ月このキャンパーバンで一緒に旅をするらしい。こんな道を進んでいくんかい!?という道を強面なポルトガル警官たちに案内されながらのっそり進み、Boomのメインゲートに到着。この時すでに4時ごろ。お互いを起こし合いながら、休みながら進む。メインゲートではリストバンドを確認され、welcomeということでパンフレットと喫煙者には吸い殻入れと、希望者にはコンドームと女性用避妊具が渡される。パンフレットはキラキラ光っていて、ついにきたのか〜〜〜と感動する。RVは着いた順にランダムに案内され、自分達で停車場所を選ぶことはできない。2人の停車を見守って、お礼をいって前にすすむ。
メインゲートから、目指すキャンプエリアまでは3kmほどある。眠たいなんてもんじゃないけど最後の力を振り絞って暗い道を進む。メインロードには光がポツポツとともされてて、その道を辿りながら目的地まで声をかけあいながら進んだ。道は石がたくさんゴロゴロころがってて、土ぼこりがたった。何度か休憩を挟みながら目的のキャンプエリアまで到着。
荷物を置いて、真っ暗の中ライトをもって木のはえる斜面の中でベースキャンプを見つける。前入りしたから選び放題だと思ったらそんなことはなかった。すでにたくさんのテントが立っていて、メインロード近くのエリアは埋まっていた。のっそり山を登り、日の出の方向を確認し、日陰を作ってくれる木々を探す。なんとなくここだろうと決めて、テントを貼って泥のように眠ったのが6時半。10時に起床。友達たちに場所を伝えて、場所をちょっと移動して、ベースキャンプ作りを開始。日陰になっていないエリアにタープを貼って、ちょうどいい木を見つけてハンモックをぶら下げる。なんとなく10日間の家が完成。Boom Busできた友達たちも午後くらいに到着。こうしてBoomの地に私の家と家族ができたのである(感動)
っというわけで50分で着くはずが、見事12時間かかる羽目になったけどこれでもどうやら早い方だったよう。というわけで楽さを重視するとおすすめはBoom Busです。(Boom Busでは会場内まで送り届けてくれるので、メインゲートから荷物を持って歩く必要もない)しかし、Boomに行くまでもすでにBoomであるとすると・・・・もしかしたら難所を乗り越えながら自力でいくのもまたそれも悦というものかもしれません。
Boomでの生活
Boomは10日間続くので、フェスというより、生活様式となっていきます。普段の生活とは全く違ったアンテナを使って生きていくため、新しい自分と向き合うことができるのがなんといっても一番美しいところ。
携帯電話
Boomでは "unplug to connect" というスローガンのもと、携帯電話を使うことを非推奨しています。多くのboomerたちが携帯を持ち歩かず生活をしています。電波は入る通信会社と入らない通信会社があります(Orangeは入りました)充電は、Central Plazaというフードコートエリアに充電コーナーが用意されていて、充電が必要な場合は自分でコードを持って行って充電します。でもやっぱりBoomにおいては携帯を触っている人がほとんどいません。ごはんを一人で食べている人も、誰かを待っている人も、普段であれば片手に携帯をもって過ごしている場面で、誰もが外をぼーっと眺めています。ぼーっとしている人の顔は美しいな〜と何度も思わされました。写真や動画を撮っている人もほどんどいません。昔のように限定されたフィルム数を大切に使うように、感動的なポイントで撮影している印象を受けました。ちなみにセルフィースティックは公式HPに持ち込み論外であると記載があります。話はそれますが、他に持ってってはいけないものとして国旗があります。国はわたしたちを隔てるもの、として他のフェスティバルのように国旗を掲げることをNGとしています。会話でも、Where are you from? ではなくて、Where do you live? と聞かれることが多かった。
ごはん
先述したスーパーマーケットは24時間営業で、必要なものがだいたい揃います。フルーツ、パン、塩、シャンプー、ジュースなどなど。値段は普通のスーパーよりももちろん高いです。2~3倍くらいするのかな?フードコートは2ヶ所にあり、インド料理・日本料理・イスラエル料理・イタリア料理・フローズンヨーグルトなどさまざま。値段はだいたい8〜10ユーロほど。そとの世界よりちょっと高いです。自分で料理もできますが、かなり暑いので火を使って料理するのはかなり過酷です。薪がつねにくべられている釜がよういされていて、そこで料理したい場合はお好きにどうぞというところ。ちなみにガスの持ち込みは禁止なので、キャンプエリアで自炊することはNGです。
シャワー
シャワーは6am~12pm / 6pm~0amまで使えます。ほとんど並ぶことはありません。水は冷たいですが、気候が暑いので全く気になりません。男女兼用で、みんな外で裸になってからシャワーに入ります。最初は裸体に驚きますが、どんどん慣れてきます。シャワー以外でも裸体をたくさんみます。男女共に裸の人がたくさんいます。最初は脳が裸にレーザーフォーカスしますがいつの間にかに裸がどんどん当たり前になって、頭が裸を特別認識することもなくなってきます。裸でごはんを食べている人がいて、裸で踊っている人がいて、そういえばどうして裸ってだめなんだっけ?とふと不思議に思うモーメントもあったりしました。どこにいるかという箱によって自分の行動規範が変わり、当たり前が変わる。人間の適用力の高さに驚くと同時に、自分の自由意志はいかに限定的かを痛感します。
水
水はそこらじゅうに飲める水道があります。少し待ちますが、待ってる間に友達ができます。水は押し式なので、前の人がボタンを押してくれたりします。水は貴重なので、無駄にならないように自分の水道がいっぱいになってきたら次の人に目で合図して、はいよッと譲ります。
トイレ
トイレはコンポストトイレを採用していますが、ほとんど匂いは気になりませんでした。ボランティアがよく掃除をしてくれていて、だいたいいつも清潔に保たれています。トイレットペーパーは常に補充されているので持っていく必要はありません。かなり感動。しかしメインステージの近くで、特に忙しい時間帯は並ぶのでトイレは空いている場所で済ませるのが重要です。ちなみにたくさんの自然にかこまれていますが、野トイレはNGです。みんなこのルールをリスペクトしていて、これも感動ポイントの一つでした(以前Tomorrowloandに行ったときはメインステージでトイレ(大)をするのが当たり前という謎行動があって、かなり幻滅したのでその対照としてマナーの良さに感動しました)ちなみに、フロアにゴミが落ちていることもかなり少ないです。みんなこまめにゴミを拾って、端っこに集めていました。ゴミを踏んづけて嫌な思いをした、という経験はほとんどありませんでした。
時間
Boomでは太陽が時計になりました。私は毎日ハンモックで寝起きしていたので、毎朝の日差しの加減で時間を把握していました。昼からはその暑さでだいたいの時間がわかってきます。正確には、数字で示される時間ではなく "動いてはいけない時間" という時間として認識します。日が落ち着いてきて、日没があって夜がきます。時間は1時間おきに分かれ存在するものではなく、生活が時間を分け存在させます。寝る時間、朝のゆっくりした時間、ごはんの時間、人との交流の時間、暑さから身を守る時間、音楽を聴く時間、夕日を眺める時間、夜の時間、寝る時間。その生活内容は太陽によって決められる気候や光によって決まります。時計は見たいアーティストや参加したいワークショップのために必要になりますが、それもどんどん減って行きます。
Boomはめちゃくちゃ広いです。テントからメインステージまで全力で歩いて45分、ワークショップが行われている場所までは1時間、一番端までは1時間半かかります。そのため、普段のフェスみたいに「このアーティストを聴いて、そのあとこのステージにいってこのアーティストを聴いて」といった予定は立てることがほぼできません。予定していたことはほぼ実現しません。人生と同じです。予定は予定に過ぎません。なんとなく歩いていた時にかっこいい曲が流れていたらそのまま踊って、なんとなく歩いていたら面白いワークショップが始まったら参加して、新しい友達ができたらそいつらと輪を作って話し込んで、そんな感じで目の前に現れたことを楽しみます。予定してたのとは違うけど、予定の中では得られなかった体験の中に自分の生の唯一さを感じます。これもまた人生と同じわけです。
Boomの楽しみ方
Boomはそこらじゅうでいろんなことが起こっています。ステージで踊るだけが楽しみ方ではありませんでした。普段私はパーティにいるとほぼその時間をフロアで過ごすタイプですが、むしろ今回10日間のなかでステージで踊ったのはかなり限定的で、ほとんどの時間をフロア以外の場所で過ごしました。
ワークショップ
ワークショップがそこらじゅうで行われています。英語を話せなくても参加できるものがたくさんあります。瞑想だったり、カカオセレモニーだったり、カポエラだったり、単独で参加するとしたら80ユーロはするような有名セッションが無料で参加できます。毎朝ヨガも行われます。
マッサージ
マッサージもそこらじゅうで行われています。だいたい50分で35ユーロ。名前を書いて登録して、時間になったらマッサージを受けに行きます。オイルマッサージやタイマッサージなど、さまざまさ種類のマッサージが行われています。公式のものとして登録されているものもあれば、自分で木陰にコーナーを設けて行っている人などさまざま。
湖や泥
Boomlandには湖があり、ちょどいい水温になっています。多くの人がビーチにいくようにパラソルをもっていって、そこで日光浴を楽しんでいます。水をつかったワークショップがあったり、湖のなかにブランコがあっていろんな楽しみ方ができます。中には車でウィンドサーフィンやカヌーを持ってきている人もいて、みんな好きなように水遊びをしていました。また泥のプールも用意されていて、みんな裸になって泥遊びをします。全身泥だらけになったあとは、湖に飛びこんで泥を流します。
講演とアート
私は参加することはできませんでしたが、毎日多くの講演が行われていいます。自然環境の保護やからリレーションシップまで内容は様々。またアートラウンジもあり、アーティストの活動を生で見ることができるらしい
ショッピング
世界中からたくさんのショップが出店しています。革製品や布など、欲しいものが目白押し。ショップだけではなく、毎日開かれるバザールも面白かったです。バザールはフリマ形式で、誰でもそこで出店できるみたい。値段も安く、いろんなものが買えます。
なんにもしない
Boomでひとつ学んだ楽しみの一つ、それは「なにもしない」こと。ほんとうに何もしない。一緒にいる友達と話もしない。とりあえずどっかを眺めてぼーっとする。考えに耽ったりもしない。そんな時間を過ごしてみて、時間がゆっくり流れていくのを感じました。めちゃくちゃどうでもいいことに気がついてみたり、感謝してみたり、なんかとりあえず生きてるってことを感じられる楽しい遊びがなんにもしないことでした。
Boom 2022での最高モーメント
今回4回、Boomで涙を流しました。まず1回目は、オープニングセレモニー。Boomは木曜日の朝からGate Openしますが、土曜日の6時まで4つ打ち音は流れません。ハープのパフォーマンスだったりのchill musicは流れますが、お目当てのダンダカ音楽に関してはみんな約2日間、お預け状態なわけです。そんなわけで車やキャンプ場で自分たちでで音楽を流したり、スーパーマーケットで流れる音で踊ったりして溢れ出るエナジーを垂れ流します。そんな人々の気持ちが高まった土曜日の夕方、オープニングセレモニーがメインステージで始まります。まずは日本の太鼓チームがどんどこかっかとパフォーマンスをします。かなりかっこいいですが、やっぱりみんなまだソワソワしています。待ち疲れて座っちゃう人もいたりします。私もキョロキョロと周りをみます。そして6時、太鼓の最後の音が鳴り響き、盛大な拍手が会場響き渡ったあと・・・・
ダンダカダンダカダンダカダンダカ --
スピーカーが初めのベースを鳴らした瞬間。
会場が、揺れます。
文字通り揺れます。
みんなの笑顔が爆発します。汗が飛ぶのが見えます。太陽の光が汗で光る体やキラキラ光る目を照らします。これだけの恍惚感と感動に溢れた瞬間は今まで経験したこと無かったように思います。そこにいる全員の生きる力みたいなものが全力で爆発していて、私は友達になったばかりのポルトガル人ロドリゴ(たしか?)の横でほろりと涙を流しました。
2回目に泣いたのは3日目に参加したワークショップ。暑さから逃れるために木陰で昼寝して、目覚めてみたら目の前でワークショップが始まりました。なんか暑いしもう寝れないし、とりあえず行ってみるかということでそそくさと参加。"Alchemy ritual to awaken the essence of your soul" という名前で、なんのことやねんと思いながら、趣旨もわからぬまま床に腰を落とす。その後は言われるがままに簡単な瞑想から。そのあと呼吸法を使った瞑想。私は普段から瞑想を行いますが、ここまで深い瞑想に入ったのは人生で初めてで、ワークショップ後の温もりは1日中続きました。
次に泣いたのもワークショップで、これは友達みんなで参加しました。SUCO Sessionsというヘッドフォンをつかったworkout + meditationワークショップで、なんだかヤングセレブが好きそうなアクティビティだなと最初かなり懐疑的だったのですが、これまたいつのまにかに感動して泣いてました。知らない人と踊ったり、笑ったり、なんだか恥ずかしいような笑っちゃうような不思議体験の中に、他人への愛や自分への慈しみというものを見ました。
ちなみにこの2つのワークショップとも、そこまで英語は必要ありません。英語が分かった方がもちろん便利ですが、英語がまったく分からなくても周りを見て真似すれば大丈夫。ぜひ英語が話せなくても参加してみることをおすすめします!
そして最後に泣いたのは、Ace Ventura。最後の夜は普段音楽が止まる6pm〜10pm (Grounding timeと呼ばれ、この時間でスピーカーと人々の心と体を休めているのが目的だそう)も音楽が続きます。ちょうど大トリの前を飾るAce Venturaのラストに、彼はBoom 2018のAstrixのセットのオープニングトラックを流しやがりました。なんども繰り返し聞いたこのトラック。これをこの場で、聞けるとは・・・・・(涙)落ちゆく日を見ながら感動の涙を流しました。
涙で霞んだ目の先で、Astrixがてくてく登場してきて、Alpha Portalに。くーにくいぜこのやろう
Boomから帰ってきてやりたいこと
Boomでは普段の生活を捨て、新しい自分と過ごせたということが一番の収穫でした。一時的に出現したあの自分のなかで、今後のデフォルトモードの自分に残したいものを記しておこうと思います
1) 携帯を触る時間を減らす
2) 今に集中する
3) 人とものを分け合う
4) 他人にもっとやさしくなる
5) 瞑想を深める
6) 体を鍛え整える
7) もっと本を読む
8) 大切な人たちに愛を伝えスキンシップを増やす
9) 自分に感謝する
10) Life your truth
11) ぼーっとしてなにもしてない時間をもっと楽しむ
最後に
Boomではみんな誰か素敵な人と出会っても携帯で連絡先を交換しないみたいで、その時の邂逅を全力で楽しみます。だから今でもBoomの非公式掲示板では人探しの投稿で溢れています。
「4日目のDekelがプレイしているときに左スピーカー前近くで僕は運命の人と出会いました。彼女は着物を着ていて、大きなネックレスをつけ、素敵な赤毛の髪をなびかせる魅力的な人です。僕たちはお互いの手を取り合い、魔法のような時間を過ごしました。またあなたに逢いたい。もしこの投稿を見たら連絡してください。愛を込めて」
こんなかんじ。
なんつーか、生きる時代に囚われず、美しい物を美しいまま体験するのがBoomの醍醐味なのかもしれません。
というわけで!来年のBoom、一緒に楽しみましょう🌈
※ 写真は一部Facebookグループよりお借りしています