8月の日記-もちろんわたしたちの美しさが損なわれることはない
8.1
仕事で富士山を撮りにいったのに富士山がみえなくって、「いや、流石に、ちょっと待ちます」とカメラマンに言ってはみたんだけれど一向に埒が明かず、帰りの車で「これは、合成では?」「いらすとやで緑の三角形あればそれでいけるっしょ」などと有る事無い事へらへら喋りながら成果のなさを紛らわしたりした。
あまりにも豊かな言葉を話す人と話をした。ずっとそのことについて考えてきたのだろう、とお話を聞きながら思った。洗練されていながら、美しく、そして何より、少しでも「そこ」を捉えようとする細やかさが満ちていた。サッカーボールと友達になる、という言い方があるけれど、ここまで言葉と仲良くなれるんだな、と思った。言葉の方からもその人を信頼しているような感じがした。
8.2
昼は展示を回る。暑かったので新宿の地下をフルに活用した。意外とどこまでも地下で行ける感じ好き。夜は今泉力哉さんのウェビナーを聴きに銀座に行く。始まる前に蔦屋書店行きたくてGINZA SIX行って出口迷ってギリギリになって今泉さんの真ん前しか空いてなくってそこに座った。前すぎてどうしよっかな、と思ったけども、あまりにも自分がいつも考えていたことと今泉さんの考え方が近かったので、マジでのめり込むように聞けた。普段そういうことはしないのだけれど、質疑応答で思いっきり手を上げて質問したりした。
8.3
友達と会う。なんかウザ可愛くなっていた(褒めている)。家にものをとりに帰っている間、前の駐車場で爽を食べてる時間が、なんだかめっちゃ夏だった。
夜は米澤さんのトークショーを聴きに広尾へ行った。広尾のあたりってすごい広尾だよね。駅前のDEAN &DELUCAでキッシュを食べた。たまにすごい食べたくなるよねこのキッシュ、ということを食べた時に思い出した。
8.4
ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』を読み終わる。すごかったな。想像力よ。一瞬だけとても美しいベランダとお風呂場のシーンがあって、そういう煌めきみたいなものに懲りずに涙をしてしまう。
そういう煌めきだけを掬うようにして本や音楽を作っている、し、それがなんというか大学時代のコンプレックスみたいなものになっていたと思う。最近は、なんていうかな、なりたいもの、みたいな、「こういうことができたら」みたいなものがない。わたしの制作にそれは必要ないのだ。なんていうんだろう。少しでも点数を高く取ろうと努力することが大切ではないのだ。テスト用紙に名前も書かずに静まり返った大教室で席を立てることの方がわたしにとっては大切で、そう。今の自分ができるだけそのままの透明である方がいい。テストをサボったってもちろんわたしたちのうつくしさが損なわれることはない。
8.5
仕事に行く気が起きないから好きな喫茶店によってマフィンを買っていく。マフィンの食べ方わかんないな、モスバーガーの食べ方くらいわからん。上品に食べれたらいいよね。食べ方ってあるからな、品の良さ、みたいなものは数少ない、大事にしたいことかもしれない。
8.6
東京ラブストーリーみはじめる。家の固定電話デカすぎる。1Lペットボトルくらいある。一話の完成度が凄くって、一周したら一話だけ繰り返しみようかな、と思った。なんかさ、恋愛を書きたいと思う。それはなんだろう、恋愛をしたいのではない。恋愛という虚構を通すことを通じて、わたしはわたしの愛をあらわせるように思う。
8.7
清里の野外バレエを見に行ったのだけれど、雨で中止になってしまって、その後電車もとまったりして、大変だった。電車は霧深い清里駅にホグワーツ急行みたいに訪れて、そのまま「倒木の可能性がある」とかなんとかでもう終日動かなくなってしまった(結局タクシーで帰った)。
バレエが中止になって、花火だけが上がった。「花火を見にきたんだね」とパートナーと言い合った。パートナーが近くに落ちる雷をすごく怖がっていて、雷って死の予感だ、と不意に思った。
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