『パルクブロッサム101』あとがき

毎日ノート更新!と息巻いていたが、うっかり一日更新を忘れたことでなし崩し的に崩壊した。なんとか巻き返せるか頑張ろうとは思っている。

『パルクブロッサム101』について

先日の文学フリマ東京で同人誌として発行した長編小説です。
現在カクヨムコンにも参加しておりWEBでも読めます。お暇な方は読んでみてください。
↑終了しました!WEBで読んでいただいた方ありがとうございました!

先日、大変ありがたいことに、あのクソ分厚い文庫を読了し、なおかつ感想を送ってくださる猛者が現れました。

趣味で書いた未熟な小説で、片手の数で足りるほどにしか頒布しておらず、450ページという長編。
このハードルを飛び越え読んでくださった方には本当に感謝しかありません。
自分で発行しといて「え!?読み終えた!?」と半信半疑になってしまう。

本当にありがとうございます。
感想を貰って初めて、「小説を一本書き上げた」という実感が得られるように思います。
読んでもらわなければあんなもん、ただの重たい紙束に過ぎません。
小説にしてくれたのは間違いなく貴方です。
本当にありがとうございます。

以下、お話の内容に触れていきます。
がっつり最後のページまで言及します。

書いたきっかけ

もともと理路整然とした思考に苦手意識があったため、せっかくだからそういったことに挑戦しよう。そうだ。ミステリーを書こうと思ったのがきっかけです。

結果、ミステリーにはならなかった。
これまで書いた中で最もファンタジー色の強いお話になりました。
やっぱ苦手なもんは難しい。

書き始めたのは一作目の長編『さみしい裏切者たちよ』のすぐあとでしたが、話の内容が暗くなるにつれ気持ちも徐々に沈んだため、一度は頓挫させました。
(そのあとに明るい話『星を抱く旅路』を書き上げました。)

その後、『真志の春』を書き終えた後、やはり途中のままにしておくには心残りで再着手し、完成させました。

死んだらどうなるんだろう

ミステリーを書こうってのに、大人ぶった小学生みたいなことが気になって仕方がない。
私なりに死後の世界を夢想して、きっとこうなんじゃないかと思いながら書きました。

輪廻転生や来世の仕組みって、どうなってるんだろう。
それを運営している者はどんな奴らなんだろう。お化けってなんだろう。

地縛霊であるおっさんの未練を解消するややファンタジーよりのミステリーのつもりが、気付いたら主人公の要くん本人が死んでました。
やっぱ死後の世界を実体験していただいてなんぼやろ。ファンタジーだし(ミステリーどこいった)。

私は登場人物をなんとなく考えて、プロットはあまり気にせずお話を書き始めます。走り出したら振り返らずに最後まで走り抜ける。とりあえず、矛盾やキャラ崩壊なんか気にせずに。

後から考えたらこれでミステリが書けるワケなかったわと失笑しております。

壮大な死生観の話に手を出してみたはいいものの、結局いつも通り「君と僕」の話になりました。

草間要について

主人公。要は作中に出てくる「石」と関連させて要石にかけてます。草間は、一回死ぬので「草葉の陰から」という言葉の語感に寄せて名付けました。

強運で恵まれているキャラとして書きました。
そして、その強運を覆すほどのぼんやりで迂闊で、恵まれているからこその自己中。人に頼ることが当たり前で助けてもらえるのも当たり前。だからこそ、無謀にも突っ込んでいける。
そんな馬鹿で愛すべき主人公です。

主人公らしくきっちり最後には答えを掴んで成長する。
そんな王道主人公を書きたくて造形しました。

あと、ありふれた平凡さ。
彼を囲む人々に非凡な属性を担ってもらう分、とことん平凡であってほしかったです。

そして、前世から揺るがぬ年上好きの恋愛体質です。
恋愛体質というより一途なのかしら。店長に惹かれる理由もそんなにはっきりなさそう…。ただ、自分が弱っている時に優しくしてもらった相手だから一瞬で懐いてしまったというか…。

穂垂さんにも言えることですが、自分の直感を一途に信じきれる能力があるように思います。
ある意味純粋。
ただ、人を見る目はありません。馬鹿だから。将来壺とか買わされてそう。
でも、そういう時に助けてくれる人(志賀、叶子さんはじめ、野路、気が向いたら花見さんも多分助けてくれるだろう)を捕まえとく才能はあるんだろうなきっと。

物語の最後は店長との恋愛成就という夢を叶えた彼ですが、代償として薄命であったと思います。
あの世の少年との因縁は、彼が本当に死ぬ時まで持ち越されました。
それは多分、お話のラストからそう遠くない未来だと思います。
しかし、彼は今回の経験を生かし、タダでは死んでやらぬだろうと思います。

今後もどんどん平凡な青年から、主人公格のある人格に成長してほしいと思います。頑張れ!


志賀矜持について

志賀登場2作目ですね。
時間軸では『さみしい裏切者たちよ』の数年前です。大学生志賀、猫を被らず一人称「俺」で頑張ってます。彼のバックグラウンドを捏ねくり回すのは大変楽しかったです。

また、あの世編裏では語り手を担ってくれてます。
かなこさん交えた破天荒組は話の展開がスピーディーで大変好き。
私は誰かに振り回される志賀が好きなので、またいつか書きたいと思ってます。

特にかなこさんに振り回される志賀は書きたい。

「俺が好きな人たちの中で一番つらいのは俺でありたいと思ってる」
なんて、痺れるセリフを吐いてましたね。
彼の行動の指針はきっとこれからもずっとこれなんでしょう。
とはいえ私は、彼自身が「事情を抱えた人に懐きがち」な傾向が強いと思ってます。
自分の抱える劣等感を扱いきれず、他者を助けることでその劣等感を払拭しようと奮闘している。でも、大手を振って善人ぶるのは優秀な兄たちや家への反発心が邪魔してできない。
ある意味、一番息苦しそうだと思います。
甘えた思考の要くんとは大違い。
しかし、そんな要くんは「全く要は仕方ねぇな」と志賀の自尊心を満たすので、2人は良いコンビだったと思います。持ちつ持たれつ。

振り回されてはいるけれど、結局彼は、振り回されるのが自分の本分であると心の何処かで割り切ってそう。
無自覚なドM。

『さみしい裏切者たちよ』と今作は志賀を軸に繋がっています。
私自身、彼がここまで活躍してくれるとは思っていなくて、しかし、ここまで来たなら裏主人公として志賀の今後も書きたいなという気持ちがあります。創作意欲を刺激してくれる存在です。すごくありがたい。
志賀に影響を及ぼす人は、草間要→金森三吾と変遷してます。加えて、夏尾先輩から厄介な置土産を押し付けられているという設定がございます。
いつかその辺りも書けたらいいな。
志賀の旅は続く…!

おっさん(古堂尊)と園田ほたる

おっさんはキャラクターとして成立させるのが苦しかったです。「なんも覚えてない」と言うキャラをどう表現していいのか分からない。
加えて、後半で出てくるやや屈折して鬱々としたダウナーな雰囲気と乖離させてはならぬ…という両立が難しかったです。

また、彼の主だった過去を直接知るのはあの世編裏の語り手である志賀です。
志賀は古堂の意思を尊重し、彼の過去を詳しく要には話しません。主人公である要くんはある意味、古堂のキレイな部分のみしか見ずに物語を終えています。

要と古堂は友人として関係を得ましたが、古堂は要の中に「なぜか」かつての想い人ほたるの面影を垣間見ます。
それにより過去の自分の行動に後悔とまでは言わないけれど迷いが生じている。それを赤の他人である志賀に否定してもらうことで迷いを捨てる…。
ここの描写はかつて古堂の世界はほたると自分の二人だけであったけれど、要(ほたる)の介入により他者との関わりを持ち、志賀との会話で完全に変化している。ということを描きたく苦心しました。
全然伝えられる力が足りなかった。

加えて現在カクヨムで『奈落の糸』という番外編を書いてます。これは私が完成後しばらく経ってから本編を読み直した時、
「うわぁ~!!古堂さんの描写が全然足りてない〜!!未熟をさらしまくって読んでて私がしんどい〜!!」
と、辛くなったので理解を深めようと書き始めたものです。
せいぜい4万字程度を想定してたのにすでに倍まで膨れ上がってます。しかも主人公は三好っていう……。
↑こちら無事完結しまして『奈落の糸』改め『水流と稲妻の余韻』の題で同人誌にまとめてます!
ご興味ある方いらっしゃいましたらぜひ…。
通販もあります。→https://after-cake.booth.pm/

古堂の名前なんですがパルクブロッサムの方では「たける」なんですが、水流の方では「みこと」になってます(字は一緒で尊)。
同一人物です。

古堂は性的にだらしねぇクズなんですが、「たける」という名前がいつもご贔屓にしてくれている友人に近しい人物と同じ名前だということが判明し、私が勝手に気まずくなって後から変えました。
同人誌買ってくれた方すみません。

次回刷り直す時は「古堂尊」はみことさんになります。
めちゃめちゃ作者の事情…。

ほたるさんに関しては、平凡な人間って本当に平凡なのか?という疑問を持って書きました。

私自身、特筆すべく特徴無く平凡に日々を生きています。
しかし、自分のことを完全に平凡であるとは言い切れません。なぜなら、他人から見てどう写るか分からないし、自分が異なっている、異質であるという可能性を除外するのは、身勝手に繋がる一歩のように感じるからです。
また、自分を平凡と括ることで何かの責任から逃れている(それが何かは分からないけど…)、責任から逃れ美味い汁だけ啜って生きようというズルい感じがしてしまう…。
かといって非凡であるかと聞かれれば断じてNO。
なんだろ、なんて言えばいいんだろ…非凡ではないが、平凡と自ら括るのも危うい。そんな風に感じながら生きてます。そんな感じの人物を、きちんと言葉にしたかった!みたいな…。

この二人は自分を平凡であると評価してますが、やってること見たら、まあ普通ではないですよね…。
平凡って言葉ってきっと、本当の意味で、非凡な対象から見た羨望、という見方でしか純粋な平凡さは見えない気がする。
この2人は無自覚に非凡ではあったけど、そういった側面は誰にでも眠ってるもんなのだと私は思います。
……やっぱり上手く説明できないや。保留!

野路一世と花見亘

殺せなかった。ノジは。

当初は屋上で死ぬ予定でした。要に死の不条理を味わってもらうために用意したキャラでした。でも、書いてるうちに殺せなくなりました。
特にあの世編の野路の過去を書き終えてからは、なんていうか、可愛くて殺せんかった!

一番作中で予想外な動きをしてくれたのが彼でした。
ニヒルで掴みどころのないキャラとして書き始めたのに、作中一、ひたむきで少年らしさを残すキャラになりました。これだから長編小説を書くのは面白い。
彼の変化は要くんがいたからこそのものであり、彼があの部屋に引っ越して来なければ、ノジは花見さんに再会することもありませんでした。
書いていてとても楽しかったです。

また、花見さんに関してはもう少し描きたかったという思いもあります。彼のややズレた執着をもう少し書きたかった。

花見さんは利害関係を重視して付き合う人間を選ぶ冷めた人間です。
多分、大人になってからは友人らしい友人も作れなかったような気がする。野路が一緒にいたからこそ生き生きと楽しく生活できててんだろうな。
だから野路が死んでから少しおかしくなっちゃった。

身近な人間の自殺っていうのは割と人の思考回路を根本から覆す恐ろしくて比較的ありがちな出来事だと思ってます。

作中で愛の重さは古堂&ほたるペアがぶっちぎっておりますか、次点で愛が重いのは花見さんだと思ってます。重い男。
(重い=ほたる≧古堂>>花見>>普通=要=ノジ>>志賀=かなこ=ドライ)

この二人に関しては恋愛感情アリよりの表現をいくつかしましたが、実際はそんなことなかったと思います。
幼少期から一緒に育ってきたから互いに特別に思っているし、尊敬の気持ちも持っている。かつ、自分の我儘を無条件に受け入れてくれる相手であるともお互いが当然のように信じています。
ほたると古堂が運命的な繋がりを持っていたとするのなら、この2人は年月で培った絆的な繋がりを持っていたのでは。

小さい子が特別仲良しな相手を独占したいような、そういう幼稚な愛情があったのではなかろうか。

まあ、ぶっちゃけると恋愛感情に類似の気持ちがあったとしても、それはそれでアリ!と思ってます。

2人で旨いものいっぱい食べろ!

書いてた時の話

このお話をしている時、実生活の私は割と詰んでました。詰めば詰むほど筆が進んでハイになり、そして力尽きてしばらく布団で横向きになる日々を過ごしました。
バカだよバカ。

私はお話の最後を決めず、とりあえず完結まで書いて、推敲の段階でキャラの性格や伏線を調整します。
だから、最後に要くんが「自分として死ぬことにこだわる」という結論を得ることは初めふんわりとしか決まってませんでした。

横向きになった状態で鬱々とした気持ちになって死ぬことについて考えた時、私は要くんに反対でした。

私は来世に問題を持ち越したい……。
そう考えて楽な方へと流され行く自身の怠惰さを恥じる日々でした。

とはいえ、あの時に書ける精一杯を本にすることができて良かったと感じます。
日々色々悩むことはあるけれど、それをお話にして「完結」させる。
それに私はある種自浄効果を見出しているのだと感じます。まったく面倒くさいね。ほんとに。

まとめ

私の夢は商業出版して印税がっぽがぽ儲けて、お金がいっぱい!という安心感を胸に創作活動を続けることです。
その心は、現状の自分がお金を持たないことや承認欲求が満たされないこと、やりたいことが満足にできないことなどに不満と不安を抱えていることを意味します。

自作のキャラクター達は私の中で息づいているように感じます。彼らは時に現実の自分を助けるために創造されたのだと感じることがよくあります。
少なくとも私の物語は書き手の現実と密に繋がってると感じます。自己投影はしませんが。

「明日死のうが百年後に死のうが変わらない。僕は僕だよ」
という要くんの言葉は正直私の願望です。
いずれ必ず死ぬからこそ、そう思いながら日々生きていきたいと強く思います。

印税も心の底から欲しいけど、私はきっと自分を助けるためにお話を書いてるんだろなぁと思わされたお話です。

まあこんなしんみり語れるほど出来の良い本ではありませんが、一人でも「良かった!」と言ってくださる方がいたことで、私もまた救われるんだと思いました。

以上!

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