死ぬ気で恋活をしていた頃の話。2
前回の続きです。そちらを読んでから読むと1.7倍楽しく読めると思いますので、ぜひ!!!!!!!(ガチ)
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週6でバイトをしながら必死恋活の毎日。アプリを使ってやり取りをしていた中で一番可能性を感じる人とのご飯が近づいていた。
その人はチャットでも盛り上がっていたし、LINEを交換してからもかなりの頻度で連絡をとっていた、ような、気がする。そしてご飯に行くことになった頃、初めて電話がかかってきて「何か食べたいものありますか?」とわざわざ聞いてくれた。関西弁の人で、私は方言に弱くてチョロかったからすぐに気に入った。お互いお酒が好きだったので、彼の行きつけの渋谷の居酒屋に行くことになった。予約も取ってくれた。大人だと思った。
当日、18時に渋谷で待ち合わせた。それなりに男性ウケの良さそうなロングスカートを履いて行った。私は筋肉質な男性が苦手なのだが、もろそれだった。けれど、顔を見た瞬間に「写真と全然違うじゃん」と思うことにも、もう慣れていた。
お店は二階建てになっている狭い居酒屋で、かなり賑わっていた。メニューはどれも美味しそうで、お酒も美味しかった。話もそれなりに続いたが、特別楽しいというわけではなかった。社会人の彼と、大学生の私だったからかもしれないが、やたらと自慢話が多かったような気がする。そして、会計は割り勘だった。私はこの時以外にも、男性と食事をすると大抵割り勘になることが多かった。その度に私は、「奢ってカッコつけたい」と思われるような女ではないんだと実感して、悲しくなった。
2時間ほど経って解散して、今日も何も収穫がなかったなあと一人反省会をした。アプリで出会う人は、どれもなかなかピンとくるものがなく、一度食事に行っても、その後もう一度会うことになった人もいなかった。この活動には何か意味があるのだろうかと思い始めていて、「彼氏が欲しい」と思っている頃はできないと言うし、丁度シェアハウスを出て実家に帰る頃だったから、アプリをやめようかなと思っていた。
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しかし最後に一人だけ、会ってみたいと思える人がいた。連絡を取り始めてからすぐに会いたいと言われ、私が当時働いていた場所のすぐ近くで働いていたので、連絡を取り始めた次の日に急いで仕事を終わらせ、近くのカフェで待っている彼の元へ向かった。
初めてアプリを通して、想像よりかっこいいと思える人に出会った。背も180cmくらいあって、関西出身の社会人だった(またしても方言にやられる)。近くにある私オススメのカレー屋さんに行った。奢ってくれたので、その後のカフェは私が出した。
このデート中、なぜか彼が作ったパワーポイントを見せられた。とにかく自分が作ったパワーポイントを力説していた。特技がパワーポイントらしい。「すごいですね」しか出てこなかった。はっきりと記憶に残っている。
他にも自分のスペックを福利厚生と題して紹介してくるなど(Netflix見放題、料理できる、自宅が広いetc...)、色々とクセの強めな人だったが、ビジュアルに騙されてそこまで嫌な印象は残らなかったから怖い。
食事の後半はとにかくパワーポイントばかり見せられたが(今思い出しても笑える)、「恋人候補になってる?」と聞かれたり、やたらと未来を見据えてくるものだから、私もその気になってしまった。また来週会おうと言われた。
そして次の週、仕事帰りの彼と待ち合わせた。私は彼と出会ってから数日の間に彼の名前をTwitterで検索し、アカウントを見つけていた。公開されていたので、彼が今日待ち合わせた町に住んでいるということを知るのもあっという間だった。2回目のデートで家に招かれるというのはいかがなものか。
とはいえ、彼からの情報は特になかったので、もしかしたら外食かもしれない。何も言われていないのに、Twitterで知った情報だけで危険視するのもおかしな話だ。私は少し緊張しながら、待ち合わせ場所に向かった。
彼を見つけた時、胸が高鳴った。先ほども書いたが、背が高くてスタイルが良くて、この人の隣に並んで歩けると思ったら、にやけてしまうような理想の人だった。(この時点で完全に盲目化していて草)
落ち合ってすぐに「スーパーでご飯買って家で食べよう」と言われた。ああやっぱり、と思った。まあ、むしろその覚悟をしていてよかった。買い物の間、やたらとパーソナルスペースに入り込んでくるような距離の近さ。ドキドキが止まらなかった。
男の人の部屋に行くのは、二人きりでは初めてだった。飲み会の後、終電をなくして4次会をやるためにサークルの後輩の部屋に行くような感覚とは、まるで違う。彼の家は、家賃を会社がほとんど負担しているという、駅のすぐそばにある立派なマンションだった。
想像していたより遥かに汚い部屋だったが、社会人の一人暮らしなんてこんなものだろうとも思った。テレビをつけて一緒にYouTubeを見ながら、お酒を飲みながら買った惣菜を食べた。恐ろしいことに、私はこの時に彼が好きだと言って見せてくれたYouTubeを今も見ている。面白かったから、仕方ない。そのYouTuberに罪はないのだ。
そしてそれは、私がやっと彼との雰囲気に慣れた頃、これはまずいと思った。私はそもそも彼と出会ったばかりで、付き合ってもいない人と遊ぶつもりはなかった。(ならまず部屋に上がるなよと言う話ではあるが)
必死に彼の動きを食い止め、急いで身支度を整えて家を出た。彼は駅まで送ってくれたが「友達の家に遊びに行く」と言って、私とは違う路線に乗った。なぜかその頃にはもう冷静になっていて「こんな時間から会うって、絶対セフレだろ」と考えていた。
帰り道に今日あったことを整理して、彼と会うのは終わりにするつもりだった。それまで、マッチングアプリで会った人は申し訳ないけどイマイチで、良い出会いとは言えなかった。でも、彼は違った。とにかく顔とスタイルがドンピシャでタイプだった。そして、私を女として見てくれていることも、遊びだとわかっているのに良い意味に捉えてしまった。
けれど私は道徳心を盾にして生きてきたような人間だったから、付き合っていない人と行為をするなどといったことは、友達の話を聞くだけで十分で(私に話したら怒られそうだから言わないでね、と他の友達に口止めをされるほど道徳心があった)、実際自分がやるとなると無理だった。
彼と付き合うことはきっとできない。遊びで終わる。全てわかっているのに、私は彼にもう一度会いたいと思ってしまった。その矛盾を誰かに肯定してもらいたくて、いろんな友達に相談したけれど、その相談は何の意味も果たさなかった。結局、その一週間後、自分から「会いたい」と連絡をした。
そして「美味しそう」と一度思ってしまったものを食べた私はそこで目標を達成してしまい、燃え尽きていた。事実上、一応彼と付き合うことにはなったのだが、前回同様、違う路線に乗って友達の家に向かう彼を見て「もう二度と会うことはない」と確信した。
次の日の夕方、友達に事の顛末を話していると、彼から「昨日はありがとう、これからよろしくね」というLINEが来たが、3時間ほど間を空けてから「ごめんなさい。元彼から連絡が来て、やっぱり忘れられないのでよりを戻すことにしました。さようなら」といったようなメッセージを送った。彼からは「わかった」と返信があって、そのままブロックした。
自分の気持ちの変化にも驚いていたし、俗に言う「やり逃げ」のようなものをした自分にも驚いた。きっとこんなことをするのは後にも先にもこの時だけ、であって欲しい。今そう思いながら書いている。
そうして、必死の恋活は終わりを迎えた。結局彼氏を作ることなく(正確に言うと一日だけ付き合っていたが)、2ヶ月ほど続いたマッチングアプリ生活に終止符を打った。