TECWC2024 TRI-EFFECT-A回顧 ~異次元から現れ、瞬く間に駆け抜けていく~

強い。
それはなぜか。
それはこの男が「しゃけごはん」だからである。

…とまあ冗談はこの辺にして、日本時間12/8(日)に行われた「TECWC2024 TRI-EFFECT-A」を軽く振り返ってみようと思う。
なお、ここでは基本的に決勝戦のみ振り返っていくこととするのでご了承いただきたい。


TECWCとは?TRI-EFFECT-Aとは?

まずは、この大会がどんな大会なのか、というところを軽く触れていく。

TECWCとは

「Tetris Effect: Connected World Championship」の略。
「Tetris Effect: Connected」を発売するEnhanceが主催する公式大会で、「CONNECTED 2021」として初開催されてから今年が4年目となる。
上級者から初級者まで、あらゆるスキルレベルのプレイヤーが参加でき、
個人戦の「CLASSIC SCORE ATTACK」、「SCORE ATTACK」、「ZONE BATTLE」、3人1チームで競う「CONNECTED BATTLE」の4部門で争われる。

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https://www.tetriseffect.game/ja/tournaments/

TRI-EFFECT-Aとは

TECWCの各部門のうち、個人戦の3部門のTOP 4のプレイヤー計12人によって争われるのが「TRI-EFFECT-A」。
「CLASSIC SCORE ATTACK」、「SCORE ATTACK」、「ZONE BATTLE」の3種目のトライアスロン形式で争われる、真の「Tetris Effect: Connected」チャンピオンを決定する大会となっている。

TRI-EFFECT-A回顧

準決勝

ここでは基本的に決勝戦について触れていくが、配信はTOP4からだったので、準決勝についてもあらかじめ触れておこう。
まず第1試合はSupershocky vs Zin_ss。
Score Attack部門でもTRI-EFFECT-Aでも何度も対決している因縁の相手同士の対決となったこのカードは、まずCSAをSupershockyが、次いでZONE Battleをジーンが取り、勝負はSAにもつれ込む。
このSAでも1本目をジーンが取ったものの、2本目はわずか37,875点差でが取ってSupershocky3本目にまでもつれ込み、その3本目は序盤こそジーンがリードしたものの終盤に乱れてSupershockyが逆転勝ち。3連覇に向けて決勝進出を果たした形となった。

一方第2試合はしゃけごはん vs doremyで、ここはしゃけごはんが圧倒した。
まずZONE Battle。doremyもZONE BattleではTOP8に進出していたが、相手はその王者。しゃけごはんが難なくストレートで制した。
次はdoremyが選択したCSAだったのだが、ここでもしゃけごはんは魅せた。
トランジション(Lv.19到達)前にTRT(テトリスレート=ライン消去における4ライン消しの割合)70%近いというCSA勢にも劣らない高効率でスコアを伸ばす。
さすがにトランジション後の操作は苦しそうだったが、その貯金を生かしてdoremyに逆転を許さずにこちらもストレートで取ってみせ、決勝進出を決めた。

決勝戦 Supershocky vs しゃけごはん

試合を実況する際は、あらかじめ試合展開を予想して臨む。
今回の決勝を実況するうえで、私の脳内での展開予想は以下の通りだった。

  • CSA:しゃけごはんはBlock PartyでTOP4に入っていたしワンチャン勝てるかも…?

  • ZONE Battle:まずしゃけごはんは負けないだろう

  • SA:Supershocky相手に勝ち切れるだろうか…?

順番がCSA→ZONE→SAと決まっていた以上、しゃけごはんの勝算はCSA→ZONEの連勝で、SAまでもつれた際は厳しいというのが、私の展開予想だった。もちろん実際に彼らと戦っているプレイヤーからすればこの限りではないだろうが、あくまで私の予想として、これを頭の片隅に入れたうえでこの先を見ていただきたい。

Classic Score Attack

結果的に見れば、Supershockyの経験からくる安定感が光った形になった。

CSAにおけるスコア推移

上記を見ていただければわかるが、トランジション前の効率でいえばしゃけごはんの方が勝っている。ただ、しゃけごはんはトランジション後の操作に不安を抱えている一方で、Supershockyはトランジション後のでも安定感があるのだ。
実際に映像を見ていただければわかるのだが、しゃけごはんの操作が間に合わずトップアウトした後でも、Supershockyは平然と平積みを続けている。そして準決勝のdoremyほどトランジション時点での差がついていなかったからこそ、Supershockyが逆転できたという感じの試合だった。
聞いたところによればSupershockyはCSAのルールの基になった「NESテトリス」でmaxout(カンストである999999点を超えること)を達成していたとのことで、CSAはむしろSupershockyにとっては確実に取らなければいけない種目だったのかもしれない。

CSAでは、とにかくSupershockyの安定感が光った形になった

ZONE Battle

CSAでしゃけごはんが負けたことで不安になった私の心配をよそに、ZONEの試合が始まったのだが、結論から言うとここは全く心配の必要がなかった。
確か、この4本先取でZONEの火力が70を超えたことはなかった気がする。
しかしそれは露骨にパフェループでのZONEを狙ってツモが噛み合わなかっただけで、内容的には圧勝であった。
むしろ決勝戦でそれをやろうとするってどんだけ強メンタルなの…自分の実力に自信がなきゃできない芸当でしょ…。

露骨にパフェループのZONEを狙っていくしゃけごはん

Score Attack

といった感じでZONE Battleを勝利したしゃけごはんだったが、戦いはSAでの決着となった。「これはまずい」と私が思ったのは、先に書いたとおりである。
しゃけごはんがZONE Battleで負けたところを見たことがないように、SupershockyがSAで負けたところを見たことがないのだ。
しかも、1本差とかギリギリの戦いになればなるほど真価を発揮してくるから、Supershockyに勝つのは相当難しいと思っていた。少なくとも同じく実況席にいたエンハンスの山本さんはそう思っていたと思う。

しかし、この不安はいい意味で裏切られることとなる。

第1ゲームが始まると、とにかく目についたのはしゃけごはんの積みの速さだ。
SAではとにかくミスなくST積みを積み切るのが大切である。
確かに、先にトップアウトした際に相手のスコアが下回っていた際、相手に2分間の制限時間が設けられるが、超上級者同士の戦いだと、まずその2分間で間に合わないということはない。
そういう意味でも、ST積みをミスしないように、ミノが設置されるギリギリまで置き場所を考えながら立ち回るのが一般的である。
しかし、しゃけごはんはそのセオリーの真逆を行くかのようにサクサクと積んでいく。
そして彼の恐ろしいところは、速さがありながら一切のミスがないことである。
あっという間にSPEED LV.が変化する100LINESを超えたが依然としてしゃけごはんの手は止まらない。
この時点でSupershokcyとは28LINES、41万点の差をつけている。
それでもしゃけごはんは止まらない。むしろSPPED LV.が上がるごとに加速していき、ノーミスのままST積みを続けていく。
そうして操作が難しくなるSPEED LV.29まで到達するが、しゃけごはんはまだまだスコアを重ね、たった4分足らずで300万点の大台に到達した

しゃけごはんは4分かからずに300万点超えのスコアを叩き出す

信じられない。思わず絶叫する。「なんだこれは!?」と。
結局しゃけごはんはその後も細かく消し続け、202LINES、3072381点でトップアウトとなった。SPEED LV.20スタートでこんなスコア見たことない…
Supershockyも270万点を超える高いスコアを叩き出した。それでも、しゃけごはんと消したライン数は一緒だったのだが、スコアの差は295881点と30万点近い差があった。
…いや、本当に信じられない。もうこの時点でしゃけごはんの勝利を確信したほどだ。これには勝てない…
その後行われた第2ゲームでも、しゃけごはんは圧倒した。
このゲームでも4分足らずで2910686点を叩き出す。しかもT-Spin以外でTミノを積みに使わなければいけない時でも、ライン消去のないT-spinでスコアを稼いでいるから効率がとても高い。LV.29でうまく操作ができていればこの試合も300万点超えがあり得たのでは?という内容だった。
SupershockyはLV.23付近でST積みが乱れ、DT砲やTSTタワーを組んでなんとかスコアを稼ごうとするが、ついに追いつくことはできなかった。

ここに、Tetris Effect: Connectedの新たなチャンピオン、新たな怪物が誕生した瞬間だった

準決勝第1試合と決勝戦における、SAのスコアと時間の比較
しゃけごはんの効率と速度が際立っている

上記を見てもわかるが、SAで2強と言われるSupershockyとジーンでさえ、スコアを叩き出すのに6分近くかかる。勘違いしてはいけないのは、SupershockyはSAの中では非常に速度のあるプレイヤーということである。
それを相手にしてたった4分で、しかもそれを上回るスコアを叩き出すのだから末恐ろしい。
今回はTRI-EFFECT-A以外ではZONE Battle部門しか参加していなかったが、おそらくScore Attack部門に参加していても優勝できただろう。

全体を振り返って

とにかくしゃけごはんは強かった。来年以降もTRI-EFFECT-Aで高い壁として立ちはだかると思われる。
ZONE Battleについてはこの先もまず負けることはないだろう。彼はZONE Battle部門で、予選から負けなしの完全優勝を果たしている。準決勝のJayden戦では98ATTACKというとんでもない火力のZONEを放っている。ここに関しては、現状他のプレイヤーが付け入る隙はほとんどなさそうである。
Score Attackは、準決勝でSAに回ることなく決勝進出を果たしたことで、あの決勝の衝撃があった。もし、Supershockyとの決勝戦でCSAを取っていたならば、彼のSAでのプレイングがこうして多くの人々の前で明かされることはなかったのだ。ツモによってはST積みが積めなくなるという可能性もあるし、絶対のない種目といえるが、決勝で見せた積みが出せればこちらもまず負けないだろう。
残るはClassic Score Attackだが、正直現状でもかなり強い。さすがにCSAの超上級者との比較だと厳しいが、こうしてTRI-EFFECT-Aだけを見据えるなら今の状態でも十分といってもいいかもしれない。ただ、さらに強くなろうと思うのであれば、本家NESテトリスでやっているような「ローリング」という操作方法を学習し、maxoutを狙えるようになればいいのではないか。それが叶った時、しゃけごはんは「完璧で究極のテトリスプレイヤー」となるだろう。

準優勝のSupershockyは、決勝で敗れこそしたが「さすが王者」という戦いぶりを見せてきた。準決勝のジーンとのSAや、決勝のCSAなど、これ以上落としたくない場面では幾度となく強さと安定感を見せてきた。これは自分の実力に自信を持っているからだろう。
決勝のSAについてはしゃけごはんが強すぎたというだけで、本人もTOP4の戦いでは5戦中3戦で270万点を超えるスコアを出している。やはり安定感が光る。
来年もSA、そしてTRI-EFFECT-Aで優勝争いをすることになるだろう。SAについてはまだ3連覇中で、王座防衛にむけてのレベルアップを期待したい。

本記事では触れてこなかったが、3位にはdoremyが入った。
元々doremyにはTRI-EFFECT-Aの出場資格はなかった。ところが出場予定選手にキャンセルが出て、ワイルドカードでの出場となった。こうしたチャンスを生かして結果を残せたのは、2022年に準優勝を経験している実力があってのことだろう。
どの部門もそつなくこなすが突出している部門がないという印象で、今後もTRI-EFFECT-Aの出場は相手関係次第となるかもしれない。今回はZONE Battle部門のみエントリーしていたが、出場できれば上位争いができるだけに、多部門でエントリーするのもよさそうである。

4位となったジーンはこれでTRI-EFFECT-Aでは「3・4・4」位。毎回TOP4に進出しているのだから素晴らしいプレイヤーである。
その3回とも準決勝でSupershockyと激突しており、スコアはいずれも「1-2」。CSAは落とし、ZBを取り、SAでの決着というパターンなのだが、なかなかSAで上回れておらず、本人ももどかしいことだろう。
実力的には結果ほど大きく劣っていないという印象だし、2本先取の勝負であれば勝つタイミングはありそうな気がするが、これがSupershockyの勝負強さなのだろうか。来年以降も戦うことになるだろうから、リベンジするところをぜひ見てみたい。

最後に(コメンテーターとして)

ご視聴いただきありがとうございました。
毎年最後の大一番の実況を任せていただき、とてもうれしく思います。
実況の質としては、今年はあまり両方の画面を追えていないかなという感じがします。決勝戦のScore Attackなんかほとんどしゃけごはんさんの方ばっかり見ちゃってましたね…(それだけプレイが素晴らしかったということでもありますが)
また来年以降も、大会が開催され、お声がかかれば実況させていただきたいなと思っております。
長くなってしまいましたが、この記事も読んでいただきありがとうございました。
感想とか指摘とかお気持ちとかありましたら、Xの方でいただければと思います。
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