わたしと喜屋武くん

友人の喜屋武くんが33歳の誕生日を迎えた。
今週パーティーをするらしく、わたしとキャンのハッシュタグを使って文章や表現をしてほしいと。
私もそれに乗っかって、喜屋武くんとのことを書く。

喜屋武くんの第一印象は、タイなどでバックパッカーをしてそうな人懐っこい青年。
象のマークのタイビール、チャーンのタンクトップを着ていて、短パン、日焼け、キャップ。
旅とかしてるの?と聞いてみると、一人旅したいんですけどね〜と言っていた。
行ったことはないらしい。
その後、仲良くなってからも、一人旅の話はぽつぽつと出るけど、行ってなさそうな様子。
当時、私は一人旅行きたいと言いつつ行かない人なのか〜と思ったりしていたけど、いや、喜屋武くんは一人旅ではなく、人と旅をしたいのだと思う。
一人よりも友人と一緒の旅の方が楽しそうに生き生きとしている。
PORTOの店長旅行も、ほったらかし温泉の旅も、SNSから楽しそうな写真が流れてくる。

7年くらい前だろうか。
大学を卒業した喜屋武くんが、石垣島に数ヶ月帰省していた時があった。
確か、夏の頃で、あんなに東京や新宿を愛している喜屋武くんがサクッと石垣に帰ったのも驚いたけど、なかなか帰ってこない。
9月になっても帰ってこなくて、心配になっていた頃、手紙が届いた。
元気に過ごしている事と、お父さんの手伝いの肉体労働が大変だけど身体を動かして気持ちいいと。
ロマンチストな喜屋武くんは、星の砂が入った小瓶も入れて送ってくれた。
手紙も星の砂も嬉しくて、ワーって思ったけども、急に襲ってくる不安のように、喜屋武くんはもう東京に帰ってこないのではないかと、うすうす感じていた気持ちが大きくなる。
このまま、もう会うこともなくなってしまうのだろうか。
自分の友人の中で、喜屋武くんは大切な存在なんだと気付いた時でもある。
東京に帰ってこないの?ってLINEを送ると、そのうちね〜とか、もう少しかな〜とか、そんな返答なのだ。
あまりガシガシ聞くことはできないし、そのうち帰ってくるかと思いつつも、ヤキモキしてたら、あっさりと帰ってきたのだった。
良かった、喜屋武くんはまだ東京も新宿も好きでいたんだとホッとしたのを覚えている。

喜屋武くんのルーツも素敵だった。
石垣島の崎枝という地域に彼は生まれ育ち、数年前に私も喜屋武くんと一緒に遊びに行った。

喜屋武父とは、東京で何回か会ったことがある。
父のすごいところは、おもてなしの心、盛り上げる心、人との垣根を取り払う心、それらが自然と身体の中から溢れ出す。
料理を作りながら、お酒を飲みながら、初めての人でも、通りすがりの人でも、一緒に歌い踊る。
人間の本来の姿のような、自由さを父から感じる。

喜屋武母は、喜屋武くんの良いところも悪いところも、全部丸っとお見通しな感じだった。
母親だから当たり前か…。
離れてるからこそバシッと東京の現実を伝えるし、愛ある誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントを何度も見てきた。

喜屋武くんとたまに飲みにいく時は、赤提灯のあるような飲み屋が多い。
近況から幼い頃の話、最近読んだ面白い本や友人の話で盛り上がる。
クリスマスの沢木耕太郎さんのラジオを、それぞれ聴いて(今年も聞いたよと連絡を取り合う)ある年には送ったメールが採用されて番組でオリジナル曲を歌ったこともある彼だ。
大晦日に昼から浅草で飲んだりもしたね。

会計時にお金がないってなって、んじゃ多く払うよしょうがないな〜ってのも何度かあったり、今度返すよの言葉をもう私自身が忘れていたり。
どんな場所でも冬にビーサンで現れることもあったり。
過去には、おいおい大丈夫かよ!?って思うこともあったけど、その度に喜屋武くんってある意味、天然記念物に近いんじゃないかなと思う。
ルールや普通とされることに、とらわれているのは、私の方なのかもしれない。

喜屋武くんがきっかけで繋がった人や広がったことがある。
それらは、自分にとって大切にしたい人や場所になっている。
喜屋武くんは、人と人を繋げるのがうまく、初対面の場が苦手な人がいても、その場にいるみんなが居心地の良い空間になるように、紹介したり話題をふっている。
人と人を繋げるのは、喜屋武くんにとって天性の才能だと私は思う。
喜屋武くんは、スーツで働いてる時もあったけど、今の方が生き生きしているので、見ていて気持ちがいい。

たまにTwitterなどを見て心配になる時もある。
自分よりも沢山の人に囲まれているから、きっと喜屋武くんは誰かに話をしていたりするのだろうと思うけど、そんな人こそ相談できない場合もあると思う。
会えば平気に見せているのか、大丈夫そうに振る舞っている。でも、話をしてくれたら私はしっかりと聞きたい。
聞くくらいしかできないけれど、ビールを飲みながら話を聞ける。

7年前の石垣から帰ってこないかもと、勝手に心配していた夏を思い出して懐かしむ。
今はあの頃よりもさらにたくさんの仲間に囲まれていて、笑顔の写真がSNSにたくさん上がってくる。

33年目の新たな物語が始まるね。
誕生日おめでとう。喜屋武くん。

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