毎日椅子に座り続ける~ライティンググループのすすめ
大きな仕事を成し遂げるひとは偉大だ。
例えば、800ページにもなるような大作を書き上げること。
ボリューミーでかつ内容の素晴らしい本を書ける作家は、類い稀な才能に恵まれている。
多くのひとはそう思うだろう。わたしもそう思っていた。
きっと、とびぬけた才能を持ち合わせてこの世に降りてきた人々もいるだろう。
でも、そう思って小さな自分を振り返りテンションが下がるとき、必ず思い出すことばがある。
アメリカの作家アン・ラモット氏の2017年のTEDトークだ。
「人生と執筆から学んだ12の真実」と題されたスピーチで、12項目のどれも秀逸なのだがわたしが特に気に入っているのが6番目。
アン・ラモット氏のこの言葉を胸に、自分も毎日椅子を暖めようと志だけ高く思っていた。
そんなとき、アフリカンアメリカンの友人に教えてもらったのが、「ライティンググループ」だ。
彼女は普段、アメリカで大学教員をしているのだが、大学の授業に様々な課外活動(ヨガやサウンドヒーリング、ズンバのクラスを教えている)にと忙しく、どうしても本や論文を書き上げる時間を取るのが大変だった。
そんな中、同様に本や論文など何かしらを書きたいけれど時間が取れないという悩みを持っている仲間とともに4人で始めたのがライティンググループだそうだ。
やり方は簡単。
週に一度、時間を決めてズームなどオンラインであつまる。
そして、一時間各自の作業に没頭し、最後に進捗を簡単にシェアするだけだ。
たとえその日は生産的に書けなかったとしても、ほんの少し自分の課題に手を付けただけだったとしても、それらはすべて大切なプログレス。それをお互いほめたたえる。
それだけだ。
これに影響を受けたわたしは、さっそく興味がありそうな日本のお友だちを誘ってライティンググループなるものを始めた。
試行錯誤ではあったが、シンプルなルールということもあり、昨年の7月から現在まで半年以上毎週継続している。
メンバーは今のところお友だちかそのお友だちという繋がりなのだが、自分のための文章を書きたいライター、旅記録を書きたい会社員など、実に多様で、それぞれが自らのやりたい執筆プロジェクトを自由に進めている。
忙しい毎日に流されれば椅子に座って書く時間が取れずじまいになりがちななかで、少なくともここだけは時間を確保することで、集まった皆の執筆プロジェクトにも良い効果がもたらされているのではないだろうか。きっと。
わたしは、現在2本の長編エッセイを書き進めているところ。
締め切りが自分次第であればついさぼってしまいがちだが、仲間がいると思うと無理のない範囲で挫折せず進められる気がする。
書きたいことはたくさんあれど、欲張らずにひとつずつやっていけばやがて大きなプロジェクトも終わる。
せっかく雨雲出版という自分の出版レーベルを作ったのだから、どんな本をどんな読者に届けたいかなと考えるだけで楽しい。
仲間がいると、心の支えにもなってくれる気がする。
そんなわけで、今夜は今週のライティンググループ。
皆が画面の向こうで黙々と作業している顔を見て、最後に少し言葉を交わすだけだけれど、いつもとても楽しみにしている。
言葉と文章が心に響いたら、サポートいただけるとうれしいです。