かに道楽

頭を悩ませる問題というのは突然にやってくる。通常運転に組み込まれた悩みとは別の突発的に発生する悩み。それは大抵、他者からの質問で幕を開ける。

「かに道楽の蟹を一晩で消し去る方法は?」

「えっ?どういう事?」

「どういう事って、そのままだよ、頭の体操」

頭の体操か、ふむふむ。

普通先に言わん?

ご存知『かに道楽』の蟹と言えば、お店よりも、それ自体がランドマークになる知名度と存在感を持つ大きさである。かつて道頓堀川の底で眠っていたカーネルサンダース人形ぐらいなら最低一人か、せめて二人いれば運べなくはないかもしれないが、流石にそのレベルの大きさではない。それなりの人出と、道具が必要だろう。しかも、高所作業になるので足場を確保して、運べるサイズまで蟹を分解して、運び出すとして、どうだろう、慣れている人であれば一晩で可能だろうか。時間制限も難しい所だ。

まてよ、これが頭の体操という事なら、アプローチが間違えているのかもしれない「消し去る方法」であるなら「消し去ったかのように見える方法」でも良いのかもしれない。そんなマジックだかイリュージョンだかハンドパワーを見た事がある気がする。あのトリックは蟹を消した状態の写真を大きく印刷して上から被せる、とかだろうか。かなりの大きさになるが、そういったシートかフィルムを用意して蟹の上に被せるだけなら時間は一瞬で済むから問題の「一晩で」というのもクリアできる。

しかし、そこまでうまく消えた様に見えるのだろうか。蟹の上から黒いシートをかぶせて消えたと言い張った方が確実かもしれない。もしくは蟹を塗装した方が確実か、黒い塗料を塗るだけなら一晩で可能だろうか。

とんち的な回答としては、解体する前日のかに道楽だったという方向性もあるかもしれない。その日が解体日だったので、翌日には蟹は無くなっていました。めでたしめでたし、といくだろうか。消し去る方法が問題なので、これは少し毛色が違うか。

これはどっちよりのルートを選択するのが正解に近いのかをまず…

「正解は、巨人を呼んできて蟹を食べて貰う、だね」

「はっ?えっ?ちょ、ルールがわからないしシンキングタイム中なんだけど」

「巨人が蟹アレルギーかどうかは確認した方が良いと思う」

「うん、まぁ、そうね」

100兆円欲しい