292.彼にとっての幸せってなんだろうな
この間、彼から丸一日連絡が来なかった。24時間以上連絡がなかったのは初めてのことだった。
でも、日曜日だし、忙しくて隙がなかったか、夜は寝落ちしたのかな?くらいに思っていたけど、翌朝になって彼の方からメールが来て、連絡しなかった理由は少しだけ意外だった。
「闇堕ちしていました」
彼が闇堕ちというのはまぁ珍しいかもしれない。
「こちらの生活が嫌になって嫌になって」
とのこと。
先週末あたりから奥さんが体調を崩してたようで、機嫌が悪くて会話をしてないというのは土曜日の夜に聞いていた。
「気分屋の人好きじゃないなー。不満募り。」
奥さんは理由もなく機嫌が悪いことがままある。(彼は原因がわからないことも多い)。気分で家族を振り回すのは如何なものかといつも思うけど、体調が悪いときは仕方ないのかなと奥さんに少し理解を示してあげる。
私も彼と結婚してたら、イライラをぶつけてしまうときはあるかもしれないし。
「一緒に暮らすと色々出てくるのかな」
「色々ね。自分の部屋もないし、別居するかー」
「一人部屋は欲しかったですよね。
別居したら電話し放題、オ◯ニーし放題」
「電話、オナ◯ーし放題、イイナ」
そんなくだらないやりとりをし、お互いを思いながらセルフプレジャーをして眠りについた。
翌日の日曜日に彼は連絡を絶った。
そして月曜日は朝メールをくれた。彼は有給休暇で仕事は休みだったけど、メールの返信はゆっくりで文字数もいつにも増して少なめ。
彼は落ち込むと外に発散せずに内に籠るタイプであることを私は知っている。前に仕事で色々あって連絡が途絶えたことがあった。ちょうどデートがキャンセルになったことも重なって、タイミング悪く私の心も不安定になっていた。
「仕事の悩みなら私に言ってくれたらいいのに。私にも言えないことなんですか?」なんて感情的にメールしたら、「うわ、面倒くせぇ!」とケータイを放り投げたと後で白状していた。
彼は落ち込んだ時はそっとしておいてほしいタイプである。
きっと週末に何かすごくウンザリすることがあったのだろうけど、彼の方から話さない限り私はしつこく詮索しないでおく。
でもやはり、「こっちの生活が嫌になって」という言葉には私も胸が痛む。単身赴任で自由を味わって彼女もできて、一度背中に生えた羽はたぶん折れずにひっそり小さく畳まれているだけなのだろう。
でも、若い頃みたいに無断欠勤して車で逃亡するわけにもいかないし、彼女の家に転がり込むこともできないし、お金がないからホテルに雲隠れすることもできない。
今の状況を打破する解決策なんて何もなくて、「いつか離婚してやる」などと心の中で呟くだけで実行には移さない。
仕事が休みの平日なんて、子どもたちは学校なんだから奥さんを家に置いて一人で遊びに出かければいいのに。
なぜか彼はそれができないんだ。
自由になれないと思い込んでいるか、奥さんに家から出ないように透明な鎖でも繋がれているのか。
私は色々言いたいことはあってもあれこれメールに書かず、この間の泊まりデートの時に彼が私の携帯で撮ってくれた写真を送った。
某観光地の撮影スポットで私一人でポーズを取っている写真に「楽しかったですね」と一言添えて。
「マイさん可愛いなー。楽しかったなー」
と一言返ってきた。
離れていても私はずっと思ってるから、それが彼が生きる上でプラスに働いてくれればいいと思うけど、私に出会わなければ家族と過ごす生活に疑問を持ったり、嫌になることもなかったのかも知れず。
彼にとって何が幸せなのかわからないなと思う。