136.泥棒猫
2週間ぶりのデートだった。私は終日休みにして朝から彼のマンションへ向かい、彼は午後から半休を取ってくれた。でもなんだかんだ午前中は私も職場と連絡を取ったりしないといけなくて、お互い午前中は仕事をしていた。
前日、私の仕事に関係ある打ち合わせの会議案内が送られてきたので、「明日休みだけど、彼のマンションからこの打ち合わせだけは出るか…」と一瞬思ったけど、結局別の人に出てもらうことにした。そのあと、たまたま彼と仕事のことで業務時間中にオンラインで話したときに、彼も私と同じ会議の案内が来ていたようだった。
仕事中は、あくまで同僚の体で会話をする。
私「明日はお休みをいただくんで、会議出られないんですけどね」
彼「実は僕も明日午後は用事があって休むんで、出られないんですよねー」
私「そうなんですね(もちろん知ってるよ)」
彼「あ、でも僕は任意参加だから出なくていいのかも」
私「共有のために宛先に入れたってだけでしょうね。だから出なくて良いと思いますよ」
結局、私は終日休暇だし、彼は午後半休だから打ち合わせには出なかった。
会議開催者は何か勘付くかな?比較的休みの人が少ない週の真ん中に揃って休暇なんて…。
ランチは外で食べてそのあと100均で買い物をした。「なんか、部屋で欲しいものあります?」とか、私がしょっちゅうマンションに行くから聞いてきたのだろう。私は特にないかな、と答えた。
結局、掃除用品やら買って袋ももらわずに店を出てきたから、ダウンのポケットに商品を詰め込んでいた。
「なんだか、まるで万引きしたみたいですね」
「いやいや、堂々としすぎでしょう」
万引きってしたことあります?と聞いたら、小学生の頃小さな商店でやったことがあるらしい。今みたいに監視カメラもないし、捕まりはしなかった。
私は万引きしたことは一度もない。私は子どもの頃はいわゆる問題児ではあったが、なぜか人のものを盗んではいけないという信念があった。絶対にバレないとわかってても、神様が見ているから盗みをするといつかバチが当たるって。
そんな話をしてふと自分が何を言っているのかと笑った。
「それなのに、私はいつから人のものを平気で盗るようになったんでしょうね。人様の大事なものを、バレなきゃいいんだって。」
ふと呟くと、
「なんのことですか?」
わかってるくせに彼はとぼけた。
私は半年前からマンションに時々やってくる泥棒猫かな。
それはお互い様か。