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映画「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」がジェーン・バーキンのPVにならなかった理由
映画「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」
2021年5月27日から4K完全無修正版として順次公開される予定。
オリジナルは、1976年に公開されたフランス映画。日本公開は1983年。
あらすじ
アメリカのとある田舎町。荒涼とした風景の果てに、産業廃棄物の集積場が現われ、ゴミを満載したオンボロのトラックが到着する。ゴミを運んできたのは、ポーランド人のクランスキーとイタリア人のパドヴァン。彼らは同性愛のパートナーとして、放浪の旅にも似たこの仕事をともにしている。
ゴミを捨て終わって戻る途中、ロードサイドのさびれたドライヴインを見つけた彼らは、ここで食事をとろうと立ち寄ることにする。そこで働くボーイッシュなジョー(ジョニー)は、クランスキーと言葉を交わすうちに、お互いに惹かれ合っていることに気付く。そしてセックスへと進もうとするのだが、それぞれのパーソナルな現象が和合を阻むことになり、なかなか“恋人同士”になることができない。果たして彼らの行く末は…。
映画「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」のトピックス
セルジュ・ゲンズブールが初めてメガフォンをとった作品。
ヒロイン役のジェーン・バーキンは、ゲンズブールのパートナー。
そのセルジュ・ゲンズブールが作詞・作曲した同名タイトルの歌をもとに、歌詞などとは関係なく映画化された。
この曲は、1969年にジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールのデュエットで発表され、エロティックな内容と表現で物議をかもし出した。
もともとゲンズブールは、不倫関係にあったブリジット・バルドーのためにこの曲を書いて、1967年に彼女とのデュエットでレコーディングしたが、パルドーが発表を許さず、作品はお蔵入りとなり、2人の関係も破綻した。ちなみにこの音源は1986年に“動物保護団体への寄付”を条件にバルドーの許諾を得てリリースされている。
Jane Birkin et Serge Gainsbourg - Je T'aime,...Moi Non Plus
https://youtu.be/k3Fa4lOQfbA
クランスキーとパドヴァンはゲイ(男性同性愛者)、ボーイッシュなジョニー(劇中ではまさに“男の子”のように“ジョー”と呼ばれる)はジェンダーを超えた存在として描かれる。
ジョーとクランスキーのセックス・シーンは、いわゆる“男女”のものとして描かれていない。
周囲のゲイに対する嫌悪感に50年前の映画ならではの時代錯誤を見ることができるが、当時としてはこのテーマを正面から扱うこと自体がアヴァンギャルドだったことに留意したい。
とはいえ、現時点でもまだまだこの映画で描かれる反応がマジョリティであることも否めない。
Je t'aime... moi non plusは、「私はあなたを愛しているし、私はあなたを愛していない」の意。
逆説表現によって、愛≠セックス≠男女≠愛憎といった多様性を盛り込んだ内容だったことを表現したかったのではないか?
【5/29(土)公開】ジェーン・バーキン メッセージ動画 『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ 4K完全無修正版』日本公開に寄せてhttps://youtu.be/eADpgry3aqY
ボリス・ヴィアンに捧ぐ
本作はボリス・ヴィアンに捧げられている。
ボリス・ヴィアンは、フランスの作家、詩人、ジャズ・トランペット奏者。
Je suis snob Boris Vian
https://youtu.be/yFdYZQmQtcs
ならなかった理由
閉塞した旧世界へのレジスタンス、ダイバーシティを予見する近未来的視座、個性に準じた生き方への賞賛などなど、話題曲を踏み台として、見事に社会性にあふれたフィクションへと転換させている。
挿入曲として使われている「Je t'aime... moi non plus」もインストゥルメンタルにするなど、映画表現が歌詞とバッティングしないようにする配慮がある。
つまり、大ヒットした話題曲を利用しながら、まったく別人格の世界観を描くのに成功した“問題作”として屹立している。
Information
映画『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ 4K完全無修正版』公式サイト
http://www.cetera.co.jp/jetaime4K/