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映画「パイナップルツアーズ」は復帰50年で起動する“不発弾”だった⁈
本土復帰50年を気遣ってか、テレビでは沖縄にちなんだドラマやドキュメンタリーが目白押しといった感があります。
沖縄に縁が薄いボクにとっては、このムーブメント(と呼べるのかどうかわからないけれど)に触れた当初、少し無理やりに感じたのですが、それも当然。無理矢理だったのですね。
そんな折に試写の案内をいただいたのが「パイナップルツアーズ」。
どこかで聞いたことがあるタイトルの映画だなぁと思っていたら、30年前に公開されていた作品のデジタルリマスター版の上映だということなのですね。
◆どこかで聞いたことのある映画のこと
「パイナップルツアーズ」は3辺の短編映画からなるオムニバス形式の作品です。
3編は、登場人物の一部やシチュエーションが共通で、異なる3人の若手監督(当時)によって、別々の視点で描かれています。
もちろん、3作品はお互いにストーリーを補完し合う関係にはなく、言うなればパラレル・ワールドとして、沖縄という“特殊な”(→本土から見た)環境や関係性を切り取ろうとしています。
◆音楽映画としての「パイナップルツアーズ」
音楽を担当する照屋林賢は、1949年沖縄・コザ生まれのミュージシャン。祖父、父と沖縄を代表する音楽家の“名門”に育ち、1977年にりんけんバンドを結成、1990年に全国デビューを果たしています。
伝統的な三線や島太鼓の音色を、現代的な洋楽と融合させて、“沖縄ポップ”と呼ばれる日本初のワールド・ミュージックをいち早く手がけた存在として知られています。
本作では、その融合性を遺憾なく発揮し、プリミティヴな音によって映像に既成の色が付くことを回避し、作品の現代性を浮き立たせています。つまり、ともすればステレオタイプな“沖縄映画”という先入観に陥りがちなところを、みごとに打ち壊す効果を生んでいる、ということです。
◆まとめると・・・
なんでまた30年前の、話題になったとはいえ短編オムニバス映画をいまになってリマスターまでして上映したのか、という“ぼんやりとした疑問”は、とりあえず本土復帰50年つまりメモリアル・イヤーという説明で解決したように思わせるわけなのですけれど、実はこの映画を見ることによって生まれる「えっ、なに、このストーリー?」といった新たな疑問の発生が、連綿と続く沖縄らしいミステリアスな風土や文化を、とてもうまく表現していたから選ばれたのだと気づかされるわけなのです。
さすが新進気鋭の新人監督たち、というわけなのですが、その沖縄らしい不条理さは、後の「トリック」などにも影響与えているんじゃないかなどと思えば、かのリマスター上映が単なる節目に便乗しただけではない、なんらかの“兆候”があると勘繰らざるをえない。
そう、あの活劇の発端となった“不発弾”のように──。
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