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工学的ストーリー創作入門:本で学ぶ物語の作り方『マトリックス』編

0.前書き

『バイオレット・エヴァーガーデン』は、感情を失った少女が他人の手紙を書きながら、自分の感情を取り戻していく心温まる物語です。この作品を使って、ストーリー作りの基本を解説していきます。

1.コンセプト:物語の問いを設定する

まず、物語は「アイデア」から始まりますが、それをストーリーに発展させるには、問いを設定して「コンセプト」にまで昇華させる必要があります。『バイオレット・エヴァーガーデン』のコンセプトは、「感情を失った少女が、人々の手紙を書きながら、愛や感情を再発見する物語」です。この問いが、物語全体を通じて重要なテーマを生み出します。

考えるべきこと①
自分の物語で、「もし〜だったら?」という問いを設定してみましょう。例えば、「もし感情を持たない人が感情の意味を学ぶ旅に出たら?」という形で、ストーリー全体の基盤となる問いを考えます。この問いが物語の方向性を決定し、キャラクターの行動やストーリー展開に影響を与えます。

2.キャラクターの三次元:キャラクターに深みを持たせる方法

キャラクターはストーリーの核であり、キャラクターの行動や成長が物語を動かします。『バイオレット・エヴァーガーデン』のバイオレットは、感情を持たない少女として物語が始まりますが、物語を通じて感情を学び、成長していきます。この成長は「キャラクターの三次元」という考え方で説明できます。

第一の次元:外見と行動

「第一の次元」は、キャラクターの外見や表面的な行動を描く部分です。バイオレットは、戦争で感情を失った元兵士であり、感情の表現がほとんどないクールなキャラクターです。彼女の行動は、指令に従うように機械的であり、人間的な感情を見せません。

第二の次元:内面の葛藤と動機

「第二の次元」では、キャラクターの行動の裏にある内面的な葛藤や動機を描写します。バイオレットは、戦争中に指揮官ギルベルトから「愛している」と言われた言葉の意味を理解できず、その言葉の意味を探し求めます。彼女は、他人の感情や愛情を理解したいという内面的な欲求を持ち、そのために「自動手記人形」として手紙を書く仕事に就きます。

第三の次元:キャラクターの変化や成長

「第三の次元」は、キャラクターが物語を通じてどのように成長し、変化するかを描きます。バイオレットは、手紙を書きながら、依頼人の感情を通じて愛や感情の意味を学び、成長していきます。物語の終盤では、彼女自身も感情を取り戻し、他人との深い絆を築けるようになります。

考えるべきこと②
キャラクターの表面的な行動(第一の次元)だけでなく、その裏にある内面的な動機や葛藤(第二の次元)、そして物語を通じての成長(第三の次元)を意識して描いてみましょう。これによって、キャラクターが立体的に描かれ、読者に強い印象を与えることができます。

3.テーマ:物語が伝えるメッセージを深く掘り下げる

テーマは物語全体に貫かれるメッセージや思想です。『バイオレット・エヴァーガーデン』のテーマは「愛と感情の再発見」や「癒し」です。バイオレットは、感情を持たずに生きてきた彼女が、他人の手紙を書くことを通じて愛の本当の意味や感情の大切さを学んでいきます。

考えるべきこと③
自分の物語のテーマは何か? そのテーマがキャラクターやプロットにどのように影響しているかを考え、物語全体に一貫性を持たせましょう。テーマはストーリーの根底に流れるメッセージであり、キャラクターの成長や選択に影響を与える重要な要素です。

4.コンフリクトとキャラクターアーク:試練を乗り越えて成長するキャラクター

物語には、キャラクターが直面する「コンフリクト(対立や葛藤)」が不可欠です。このコンフリクトが、キャラクターの成長や変化を促します。『バイオレット・エヴァーガーデン』では、バイオレットが他人の感情や愛情を理解しようとする葛藤が中心です。

外的コンフリクト:他人との関わり
バイオレットは、依頼人たちの手紙を書く過程で、さまざまな感情に触れます。しかし、最初はその感情を理解することができず、彼女の機械的な行動が依頼人との間に摩擦を生むことがあります。この外的なコンフリクトが物語の展開に影響を与えます。

内的コンフリクト:感情の意味への疑問
バイオレットは、ギルベルトに言われた「愛している」という言葉の意味を理解できず、その意味を探し続けることが内的な葛藤の中心となります。彼女の感情が少しずつ芽生え、彼女が愛や感情を学んでいく過程が描かれます。

キャラクターアーク:成長と変化の道筋
バイオレットは物語を通じて感情を取り戻し、最終的には「愛」の意味を理解します。彼女のキャラクターアークは、感情を持たない兵士から、他人の感情を理解し、愛情を感じることができる人間へと成長する過程です。

考えるべきこと④
キャラクターにはどのような外的なコンフリクト(敵や障害)があり、それに対してどのような内面的な葛藤があるかを考えましょう。これらを組み合わせることで、キャラクターの成長を描き、物語に深みを持たせることができます。

5.プロットの構成:物語を4部構成で考える

物語を展開する際、全体を4つの段階(設定、反応、攻撃、解決)に分けることで、バランスの取れたストーリー構成を作ることができます。『バイオレット・エヴァーガーデン』もこの4部構成に沿って展開されています。

パート1:設定
物語の序盤では、バイオレットが戦争から戻り、感情を持たないまま新しい生活を始めます。彼女は「自動手記人形」として手紙を書く仕事に就きますが、感情を持たないためにその意味を理解できずにいます。

パート2:反応
バイオレットは手紙を書きながら、人々のさまざまな感情に触れますが、最初はそれを理解できず戸惑います。彼女は依頼人たちの感情を反映させることができず、摩擦を生みますが、次第に感情について学び始めます。

パート3:攻撃
バイオレットは依頼人たちの手紙を書きながら、自分自身の感情と向き合い始めます。彼女はギルベルトの「愛している」という言葉の意味を探し求め、ついにはその真の意味に気づきます。

パート4:解決
最終的に、バイオレットは感情を取り戻し、愛や感情を理解することができるようになります。彼女は他人との関わりを深め、感情豊かな「自動手記人形」として成長します。

考えるべきこと⑤
物語を4つのパートに分け、それぞれのパートでキャラクターがどのように成長し、どのような試練に直面するのかを考えてみましょう。この構成によって、物語全体の流れが整理され、読み手にもわかりやすいストーリーが作れます。


脚本・設定・台本製作に役立つアプリケーション「Admicrea」を開発しています。 本を読んで学んだことを忘れないため,本で得た知識を脚本(シナリオ)制作に役立てるためnoteを始めました。 よい小説・脚本を書きたいと思い勉強中です。ユーザーさんの物語の一部になれたら幸いです。