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末澤誠也の上ハモに、後頭部から殴られた時の話


WE AREでの出来事

それは6月16日、「WE ARE 〜let's get the party STARTO!」の見逃し配信が始まった週末のこと。

私は同担(キンプリ髙橋担)の友人と本公演を大画面・大音量で楽しむために、カラオケBOXにいた。

これを読んでいるAぇ担=キンプリ担でない人でも、ウィア魂を観た人ならばこの日髙橋海人(というか永瀬廉)がどういう状況で、キンプリのパフォーマンスがいかに、他の事務所にはないこの事務所ならではの「繋がり」を感じられる、まさに事務所を象徴するようなものであったかをご存じのことと思う。
配信当日は仕事で観れなかった友人と、あの日海人がどれほど頑張っていたか・どれほど温かく心強い仲間に支えられているかを目の当たりにして感動を分かち合いたい、それが第一義であった。

各グループ1曲ずつのパフォーマンスが終わり、ジェシー主導のMCが始まった頃、「何か食べよう」とタブレットからフードを注文して画面に目線を戻すと、大吾のV振りからのAぇ! groupのVTRが流れ始めた。

デビュー前からのKinKiのオタクをやっている世紀越えの事務所担の自分も、嵐のオタクをやっていて関ジャニも通ってきたゆるい事務所担の友人も、このひと月前にデビューしたAぇ! groupのことは知っている。《A》BEGINNINGが流れ始め、1番が終わった頃、「デビュー曲って大事だよね、良い曲もらったよね」と話しかけたところで、店員さんが入ってきた。

せっかくの鑑賞会、店員さんの室内滞留時間は短い方がいい。配膳を手伝うべく、画面に背を向けていたところである。

ものすごい声量・ロングトーンの上ハモが、主旋律を圧倒して、2.1chのパイオニアのスピーカーから頭部を直撃してきた。

配膳の手が止まる。殴られた、と言っていい。それほどの衝撃に、思わず画面を振り返った。

「いやすごいなwww 超音波やんwwww」

店員さんが部屋を辞するのを待って私はそのように友人に声をかけたと明確に記憶している(友人は「大黒摩季」と表現していた)。

その後、本来ならばバンバンッ!!に廉も参加するはずだったこと、廉に届けようと言ってくれる関西組がいかにエモいかについてに話題は移り、そこからAぇの出番は(後半のKAT-TUNとの絡みはあったものの特に目立ったものも)なく1周終わって2周目、雑談などしていると室温も上がっていき、エアコンを操作するべく立ち上がった時、奇しくも《A》BEGINNINGが掛かって、再び「いやすごいな、ガチで超音波やん」と振り返ることとなった。

2回とも画面など観ていない。それでもオープンしたてのカラオケBOX、シアタールームの整った音響で、ただ1人、末澤誠也の声だけが「俺の歌を聴け」と後頭部をブン殴ってきた。

アイドルであるにもかかわらず、それも抜群に容姿が良くてダンスも上手くて、視覚的な加点要素も十二分にあるにもかかわらず、彼は歌声だけで、筋金入りのアイドルオタクを振り返らせたのだ。


歌声という楽器

この日時点ではネトフリ配信の告知はされていなかったため、見逃し配信期間いっぱい、可能な限り楽しもうと、通勤のお供にもこれを聴いた。事務所担といえども好きの強弱はあるため、好きなグループをメインにしていたが、Aビギはゆうに30回は聴いたと思う。これはもう完全にハマっている。バラエティ番組での実績からその歌唱力とバラエティ力の高さを知っていた佐野ちゃんをゆるく応援していたし、グループでの曲を聞いても客観的に1番歌がうまいのは末澤誠也ではないだろう。ただ歌声というのはピアノやバイオリンと同じで、それぞれ個々の音色を持った"楽器"だ。そしてこれは後で知ることになるが、佐野ちゃんが「自分の歌割りが減っても構わない」と言った通り、私もまた、あの痛みのある、末澤誠也の"声という楽器が奏でる音"に、すっかり惚れ込んだのだ。


2019年〜の逆算の記憶

Aぇ! groupとの出会いは何もWE AREが初ではない。

昔からの末澤担なら当然知っての通り、彼と海人は「ボーイフレンド降臨」で共演していて、我々海人担は彼を明確に認知している。

いや、何ならもっと前に、私は彼らを生で観ている。
2021-2022、マリウスがアイドルを卒業した最後のカウコン、私は東京ドームでTV放送に乗ってない全Jr.グループのパフォーマンスを観ている(もっとも正真正銘の天井席で、Jr.のコーナーはほぼ上の空だったが)。

もっと遡れば、知ってるワイフでも「Jr.の子(誠也くんのこと)がキュンキュン演技しててかわいいね」と当時のTwitterで呟いていたし、1番古い記憶でいうと、2019年8月、THE夜会にヨコに連れられてやってきた6人を、翔担の私はきっちり見ていて、「初の全国ネット放送で先輩のアタマを叩けるこの子(佐野ちゃんのこと)すごい!」と呟いてもいた。

サタプラMCがマルちゃんからまっさんに移った時には、ああ、近々Aぇ! groupはデビューするんだな(そうでなければただのJr.を全国ネットの朝の情報番組のメインMCにするわけがない)と感じていたし、彼らを見つけてあげられる機会は十分すぎるほどあった。


2023年、事務所担としての遺憾


それでもアイドルとして人生半分まっとうに頑張ってきた人間の才能が、30になろうかという時まで事務所担にさえ届いていなかった。これはやはり少クラの関東偏重によるところが大きかったと思うし、この"機会の不平等"を憂慮してあれこれと手を尽くしたのが他でもない関ジャニ(当時)だったというのが、関ジャニ自身の歴史に裏打ちされた説明不要の説得力を持って胸に迫る。

その上、2023年には事務所のオタクにとってはもはや忘れられない状況が起きて、東西問わず、事務所設立以来間違いなく最大の難局であった。
デビューの時につけてもらえるあらゆるタイアップ・レギュラー番組、映画やドラマのオファー、そういった「初期装備」が極端に乏しい時に、彼らは船を漕ぎ出すこととなったわけだ。

中居先輩が金スマでスノストに言ったことがあって、曰く、アイドルのデビューというのは、一つ一つ実力で勝ち取って山頂に到達するのではなく、一気にヘリコプターでてっぺんまで連れて行ってくれるようなものだというような趣旨の話なのだが、今の事務所にそこまで高い山に登らせる力はないし、現役デビュー組の数から言っても、分配してあげられる仕事は昔のように潤沢でもない。

世紀越えの事務所担として、もっと早く彼らを推すことができていれば。
記憶を遡れば遡るほど、そんな後悔が湧いてくる。遺憾の一言に尽きる。
これは一介のオタクに何ができるかという話でなく、残念な社会を作った大人としての責任感のようなものだ。あの2023年の事務所の状況に関して、当面の犠牲と引き換えに、時間が解決・終息することは目に見えていたけれど、当事者にとっての「当面の犠牲」の内訳は、人生を左右するだけの時間であり、物事だったはずなのだ。


グループという飛行機が巡航高度に昇るまで


この事務所は(少なくとも90年以降)、グループアイドルを中心に大きくなってきたし、ファンもまた、個人でなくグループの中の個人を「消費」してきた。
アイドルにおけるソロとグループの決定的な差は、個々人の能力だけでなく、「関係性」を含めてコンテンツとして消費できるかという点にある。
つまりこの事務所のファンは多かれ少なかれ、自分の推しが、「仲間を信頼し、尊敬し、共助の心をもって何かを成し遂げようとする」姿に好感を持っている。少なくとも私はそうだ。それゆえ私は一貫して箱推しであり、末澤誠也の上ハモ出ではあるが、メンバー全員に対して同じようにコミットしている。

彼らは去年、環境の荒波に機会を喪失し、さらには仲間を喪失した。

それでも彼らがAぇ! groupという飛行機を乗り捨てることはなかった。仲間を信頼し、尊敬し、共助の心をもって一つ一つの夢を成し遂げようとするに相応しい関係がそこにあると彼ら自身が確信していたからこその選択なのだと思う。
正解か不正解かは分からない。
ただ、「関係」を惜しむことが出来る人は、グループという一つの乗り物を共同運行できる人だ。
アイドルでなくたって、他人を大切にし、関係を大事にできる人が良いに決まっているし、ファンとして、不安も忌憚もなく応援できるというものだ。

見つけるのが遅くなったけれど、遅かろうが何だろうが、自分たちのグループを諦めなかったこの子達が巡航高度に到達するまで、私はAぇ! groupを圧倒的に応援してあげたい。

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