亜鉛ニッケル-シリカ粒子の複合めっき

こんにちは。
『表面技術』2022年6月号に亜鉛(Zn)合金の複合めっきに関する論文が掲載されていたので、自分なりに要点を書いておきたいと思います。

ちなみに、トップに使わせてもらった画像のような亜鉛めっきの模様が個人的に大好物です。

タイトルは『酸性塩化物浴から得られたZn-Ni-SiO2複合めっき被膜の耐食性』で、著者は奥野製薬工業㈱と広島大学の研究グループです。

背景・目的:Zn-NiめっきへのSiO2添加による耐食性改善の評価

鉄鋼材料への防錆処理として広く使われている亜鉛合金めっきですが、近年でも更なる防錆効果向上のための研究が進められているそうです。

この論文で取り上げられているZn-Ni(亜鉛ニッケル合金)の電解めっきもその一つです。
めっきで成膜するためには、塩基(アルカリ性)のジンケート浴が、つきまわり性や密着性の観点から有用ですが、排水処理への負担が大きいことが課題としてあるようです。

そこで、酸性浴からのZn-Ni合金を対象としています。
更にSiO2を添加した複合めっきにすることで耐食性が向上するらしいのですが、ここの部分の報告が少ないということで、めっきの析出過程や構造の考察とともに、塩水噴霧試験による評価結果が報告されています。

アプローチ

記載されている評価方法としては、2つのステップに分かれています。

①Zn-Ni-SiO2複合めっきの析出構造の分析・考察
②耐食性評価:電気化学測定・塩水噴霧試験

①SEM(表面/断面)、EDS、XPSの分析を通して、析出機構を考察

ZnやNiは通常の電解めっきのイメージ通り析出しますが、SiO2は負電荷なので陰極と反発する力が作用するそうです。
しかし、Niイオンが吸着すると正電荷を示すのでカソード側に析出することができるみたいです。ここは別の文献を引用しています。

膜の構造としては、表面にSiO2リッチの層ができて、それより深い部分はZn-Ni合金にわずかにSiO2が含まれている構造です。

考察によれば、SiO2が析出時に表面でゲル化し、ZnやNiはSiO2膜を通過して析出するため、SiO2膜を押し上げるように成長していくそうです。
少しこじ付け感はありますが、他の説明は思いつかないですね。

②耐食性評価

耐食性の評価には、まず電気化学測定を使っています。

電気化学測定は以下の投稿でも少し調べました。
今回は、腐食電位・腐食電流の評価に用いられています。

SiO2が添加されているZn-Ni膜は、添加されていないものに比べて腐食電位は高いですが、腐食電流を計算すると単純なZn-Ni膜よりも低くなり、耐食性が向上していると判断できるそうです。

次に、塩水噴霧試験の評価結果が示されています。
塩水噴霧試験については以下のHPのような説明が多いですね。

鉄のような金属材料は、酸化物や硫化物として採掘された鉱石を還元操作して、人為的に作られたものです。このため、空気中の酸素や水分に長時間触れていると、酸化鉄に戻ろうとする現象(腐食)が始まります。この腐食によって溶けだした金属イオンと水溶液の化学成分が反応して出来あがるものが錆です。錆は、雨の降らない場所よりも雨が降る場所、さらには海岸地方の方が生じやすい傾向にあります。これは、自然海水や雨水にさらされることで、イオンとして溶け出しやすくなり、腐食や錆の生成がより速く進むようになるためです。
 腐食を防ぐため、身の回りで使っている鉄には、めっきや塗装などの表面加工が施されています。このメッキ皮膜,塗装皮膜を施した金属材料などの耐食性を評価する方法の1つが塩水噴霧試験です。

株式会社ケミコート

以前、塩分量と腐食力は線形比例はしてなくて、3~5%くらいが最も腐食力が高いというのをどこかで見ましたが今回は見つけられませんでした。

鉄、Zn-Ni、SiO2添加Zn-Niで比較していますが、SiO2を添加したものが最も耐食性が良かったそうです。

以上です

亜鉛めっきはよく使われるめっきの一つだと思いますが、個人的には鉄系材料を使うことがあまりないので、これまではそれほど気にしていませんでした。

ただ、表面処理などのトピックスを調べると、必ずと言っていいほど目に入ってくるので、この分野は昔から主要な研究対象であるということを感じます。

複合めっきは「様々な機能を付与できる」と書かれることが多いですが、耐食機能付与の具体例を知れたのは良かったと思います。

使う機会が少ない気がしますが、今後の参考になればと思います。

いいなと思ったら応援しよう!