Cu/Ni界面の形成過程
こんにちは。
最近、銅とニッケルの合金について調べていて、以下の文献を読んだのでメモしておきたいと思います。
タイトルは『Cu/Ni界面の形成過程』というもので、エレクトロニクス実装学会で2013年頃に報告されているものです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejisso/27/0/27_302/_pdf
背景・目的
研究の対象は、パワーデバイスを実装するための接合材料の一種であるCu微粒子に関するものです。
Cuナノ粒子(~100nm)を使ったCu同士の接合では、Niを密着層とすると無圧でも十分な接合強度を得られるということですが、そのCu/Niの接合界面がどのように形成されるかを実験結果から考察しています。
アプローチと結果
まず、STEM-EDSを使って、Ni密着層とCuナノ粒子の接合界面の構造を分析しています。
この文献によると、接合界面では、Ni密着層に上(Cuナノ粒子側)に、均一に濡れ広がったようなCu層が形成されているということです。
このCu/Niの一様な界面が接合強度向上に寄与していると書かれています。
次に、Cu基板、Ni基板のそれぞれの上にCu-O薄膜を形成して、接合条件と同様の過熱を行った際の結合状態の変化をXPSを使って評価しています。
Cuナノ粒子の表面は$${Cu_2O}$$の自然酸化膜で覆われているますが、系を単純にするためにCu-O薄膜を形成していると思われます。
2つ目の実験では、Cu-O薄膜を形成したNi基板では、海面に金属Cuが形成されたのに対して、Cu基板では金属Cuが確認されなかったということです。
考察
2つの実験より、Ni基板とCu-O薄膜の界面では以下の現象が起きていると考察しています。
上記と同様のことが、Cuナノ粒子の場合も起こっていると考えているようです。
Niの自然酸化膜であるNiO中へCuが拡散することで界面構造が形成されているため、Cu拡散の起こらないCu基板では(無加圧では)接合界面が上手く形成されないという風に結論付けています。
つまり、Ni密着層を使ったCuナノ粒子接合では、接合温度である300℃付近で、Cuナノ粒子から金属Cuが生成されNi密着層中に溶けだしていくことで、強い接合界面を形成しているということのようです。
このような現象が起こるという仮説は、NiとCuが全率固溶する、という前提で成り立っているようです。
なるほど
Cu薄膜を形成するときにNiが密着層として機能することは知っていましたが、このような機構であれば、ある程度、納得です。
ただ、「NiとCuが全率固溶する」という部分が、勉強不足もあって理解しきれていないので、合金の基礎についても学んでみたいと思います。
また、イントロ部分で、金属微粒子はバルクよりも融点が低いという記述もあり、この部分に関しても気になっているので、文献を見つけたら読んでみたいと思います。
以上です。