【学会誌】IPAによるステンレス局部腐食と表面処理による耐食性向上
こんにちは。
『表面技術』2023年9月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になった部分をメモしておきたいと思います。
今回読んだ記事のタイトルは「イソプロピルアルコール中での電解研磨SUS316Lステンレス鋼の局部腐食とその防止のための表面処理法」で著者はマルイ鍍金工業㈱の石見さんと他数名の方々です。
内容
ステンレスSUS316Lの表面がイソプロピルアルコール(IPA)でどの程度腐食するか、どのような表面処理をすると耐食性が向上するか、という問題について検討しています。
製造されたIPAはステンレス容器で保管されることが多いですが、著者によれば、IPAでステンレスが僅かに腐食されるという通説があるものの、公表された研究結果はないということです。
今回の論文は、この点を確かめるという点で、重要な研究結果になるかもしれません。
ポイント
以下、結果や結論部分からポイントだと思う点をメモします。
複数の表面処理を施したステンレスをIPAに30日浸漬し、その前後で腐食状態を評価
評価方法
SEM観察:ピットの観察、面内密度の計測
塩化物中でのアノード分極曲線測定:孔食電位の測定
表面処理
加熱処理:0~450℃
電解研磨:リン酸-硫酸系電解液。あり/なし。
不働態か処理
硝酸処理
硝酸+モリデン酸ナトリウム
過酸化水素水処理
過酸化水素+クエン酸
IPA浸漬によってピットが増加することを確認
加熱処理の温度が高いほどピットが増加し孔食電位が低い
表面処理や加熱処理、電解研磨の有無で孔食電位が変化する
孔食電位が高い程、表面のピットが減少する
塩化物に対する耐食性が高い表面処理程、IPAへの耐食性が高い
IPAでステンレスが腐食することをハッキリさせたことも大切ですが、塩化物を用いたアノード分極測定でIPAへの耐食性を評価できることを示している点も重要だと思いました。
腐食のメカニズムまでは考察されていませんが、実用的には十分有用な結果が説明されていました。
今日は以上です。