【学会誌】カーボンニュートラルに求められる表面技術
こんにちは。
『表面技術』2023年12月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になった部分やポイントをメモしておきたいと思います。
今回読んだ記事のタイトルは「カーボンニュートラルを実現するエネルギー技術と表面処理技術の役割」で著者は京都大学の石原さんです。
内容
カーボンニュートラルにおいて重要となると考えられるエネルギーシステムの概説と、関連する表面処理技術について説明しています。
著者の石原慶一さんはエネルギー関連に使われる材料の研究をされているようですね。
メモ
汽力発電(水蒸気でタービンを回すタイプの発電)
高温酸化や凝着を防止する目的の表面硬化(窒化)処理(弁体や弁棒の摺動部)
ガスタービン発電
燃料が水素に置き換わっていいくと考えられる
1600℃まで上昇するので耐熱対策が重要
タービン等は遮熱コーティングが重要
高効率化のためには、各部材の高温・腐食・エロ―ジョン対策で表面処理が使われる
水力発電
タービン部材において砂やキャビテーションによるエロ―ジョンが問題になる
耐摩耗性や低摩擦を有する超硬合金の溶射などが重要になる
太陽光発電
表面反射を防止するための表面処理
誘電体や屈折率の異なる多層膜の塗布
エッチングによるテクスチャの付与
風力発電
摩擦抵抗の低減や耐腐食性能の向上が必要
エネルギー貯蔵
蓄電池
正極材として、酸化物、フッ化物、Li複合材をはじめとしたさまざまなコーティング
水素・アンモニアの使用
安価な電極材料としてのNi合金
カソードにラネーニッケル
熱電発熱
ゼーベック効果を利用した熱電素子を使う
高温側の集熱効果を上げるために黒色塗装
自動車の省エネ
駆動系の低摩擦損失のための表面技術
自動車エアコンの表面処理:防食性、親水性、異臭発生の抑制
燃料電池のセパレータ
ステンレス+Auめっきの代替材料:チタンやステンレス+カーボン皮膜
航空機の省エネ
タービン周りの熱遮蔽コーティング
Pt-Alボンドコート+ジルコニアトップコート
船舶の省エネ
摩擦係数を低減する船底塗装
微量のポリマー添加し、ポリマーを微量溶出することでトムズ効果を発現させ摩擦抵抗を下げる
民生機器の省エネ
小型化・集積化による熱問題や電磁波漏洩問題
吸熱・電磁シールド等の性能向上が必要
長期耐食性、耐ごみ付着性、耐汚染等によるメンテナンスフリー化
エアコンの省エネ
熱交換機の性能が支配的
現在はアルミニウムが使われるが、クロメートが不要なジルコニウム系処理が検討されている
表面処理の技術
めっきや塗装は、別素材との複合化のためリサイクル性が劣化
剥離技術が必要
リサイクル等も考慮した技術開発が必要
概説なのでそれぞれの内容に大きなつながりはなく、上記以外にも重要な内容は多かったと感じます。
全体を通して、これから求められる課題として、熱問題と劣化に対する機能を向上することだと感じました。これらは、表面処理技術に昔から求められるものですので、これまでの成果を如何に実用化していくか、少しずつ改善していくかが求められると思います。
今日は以上です。