擬似微小重力環境のための技術

はじめまして。趣味や仕事でいろいろな文献を読むけど、読むだけになってしまっているのでアウトプットの練習と未来の自分のために、学んだことや考えたことを書いていきたいと思います。

今回は擬似微小重力環境を作るための技術についてです。
文献は、化学工業(2021,Vol.72,No.12)で特集されている「擬似微小重力環境を実現するハイブリッド超電導バルク磁石装置の開発と磁気浮上応用」という記事です。タイトルだけだと全く理解できませんが、何となくカッコよい響きなので読んでみました。
著者は岩手大学と学習院大学の方のようです。

擬似微小重力環境は、宇宙空間などの微小重力環境を地球上で再現した環境のことです。
何のために必要かというと、高いところから落下して無重力を楽しむ娯楽に使うわけではなく、微小重力を利用した研究をするためのようです。

<擬似微小重力環境での実験例>
 ・タンパク質の高品質結晶成長
 ・発芽野菜(スプラウト)の鮮度保持
 ・創薬

その他に重力が生物に与える影響を調べたりしてるみたいですが、擬似微小重力環境では、どちらかといえば、重力による対流が無い環境での生体分子の動きや薬剤の配合や合成をしたいというニーズに対応しようとしているようです。(現状では数十mm程度のスケール感なので、あまり大きな生物では実験難しそうですね)

この環境を作る技術にはいくつか方式があるようですが、私が調べた感じでは、大きく2種類ありそうです。
 1.落下や回転を加える
  →重力を打ち消したり、360度で平均化したりすることで
 2.静電場や静磁場を使って物体を浮遊させる
  →強力な磁気力で物体を浮かせる

今回読んだ記事は2.の磁気力を使った方式で、磁性体だけではなく、生体や有機物のような常磁性/反磁性物質も磁気浮上できるらしいです。

従来の技術で磁気浮上で擬似微小重力環境を作るためには、それなりに大きな装置が必要らしく、気軽に使えるものではなかった。ということで、小型化できる可能性のある「ハイブリッド超電導バルク磁石」を使った装置を開発しているようです。

詳しい理屈はうまく書けないので記事を読み返すしかないですが、超電導バルク磁石というものを使った磁場収束レンズは従来技術(超電導コイル磁石,電磁石など)よりも、局所的に強い磁場を作り出すことができるようです。

何かすごそうだなと思うんですが、課題はいくつもありそうです。
<主な課題>
 ・浮上させるほどの磁場が発生できる空間が小さい
  φ30mm程度、大きくすると磁場が弱くなる
 ・装置の小型化
特に、有効エリアを大きくしようとすると収束する前の磁場を強くしないといけないので付帯設備が大きくなるらしいです。

とはいえ、うまく装置レイアウトを工夫すれば、ラボスケールで容易に運用できる磁気浮上装置を作れそうとのこと。
そんな大きさで意味あるの?と思うけど、宇宙で実験するには莫大な費用が掛かることを考えると、地上の実験室で水準を絞れるのはかなり有難いかもしれないです。

ものづくりの観点で見ると、擬似微小重力環境で製品を生産できるようになるのは相当ハードルが高いが、不具合発生のメカニズム究明や新技術の原理追及や要因切り分け等で活躍するできるかもしれないと感じました。

《参考文献》
・『化学工業』2021, Vol.72, No.12, p.781
・Jaxa 有人宇宙飛行技術部門HP(https://humans-in-space.jaxa.jp/glossary/detail/000484.html
・清原光学HP(https://www.koptic.co.jp/opt/product/protein/protein-apparatus.html
・Forbs記事(https://forbesjapan.com/articles/detail/32688
・植物工場・農業ビジネスオンライン(https://innoplex.org/archives/51134

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