【学会誌】リンのサプライチェーン
こんにちは。
『表面技術』2023年9月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になった部分をメモしておきたいと思います。
今回読んだ記事のタイトルは「わが国の脆弱なリンサプライチェーン-その実態と求められる根本的な強靭化策-」で著者はリン循環産業振興機構の大竹さんです。
内容
リンのサプライチェーンの現状と今後の課題について解説されています。
表面技術協会の記事ということもあってなのか、無電解めっきの還元剤となる次亜リン酸の原料の黄リンに関する言及が多いです。日本は産業分野的にも次亜リン酸を多用してるということなのだろうと思います。
リンのサプライチェーンがまとめられており、全体像を把握するにはちょうど良い内容だと思います。
リン供給
世界のリン鉱石生産量の約9割は生産国が国内で消費
輸出されるのは生産量の1割程度
その半分が米国・インド・ブラジルなど、食糧生産が盛んな生産国が輸入
日本などの非生産国の輸入は約5%
リン鉱石のやく85%が農業分野で消費される
黄リンの生産は中国が世界シェア7割
その約半分が半導体製造等に使用される高純度リン酸(乾式リン酸)の生産に使われる
日本のサプライチェーン
リン製品の約81%を中国に依存
黄リンはほぼ全量ベトナムに依存
2022年にはベトナム産黄リンの価格が急騰
2022年に中国が輸出を制限した際は、急遽モロッコやヨルダンから輸入を増やした
サプライチェーンのリスク
黄リンを生産している国は、中国、米国、ベトナム、カザフスタンのみ
2022年の制限で、中国は黄リンの輸出をほぼ停止
ベトナムの黄リンをアジア諸国が奪い合う構図
次亜リン酸塩(亜リン酸塩含む)に注目すると、2008年以降のほぼ全量を中国に依存
カザフスタンからの黄リン輸出はウクライナとポーランドを経由するため、ロシアーウクライナ問題で打撃を受けた
ベトナムでも国内の黄リン消費が増加する傾向にあり、日本にとってはリスクが大きい
リスクへの対策
黄リン生産は多数の問題があり、日本で大々的に実施するのは困難
品質の良いリン鉱石が枯渇し始めている
リン鉱石に天然放射性物質や有害重金属が含まれているため、製造現場の環境管理が難しい
高温でリン鉱石を溶融する必要があるため電力消費量が大きい
還元にコークスを使用するために二酸化炭素排出量が大きい
有害物質を含んだ廃棄物処理にコストが掛かる
日本で黄リンを生産するためには、リン鉱石だけでなく回収リンから製造する技術が必要になる
出来るだけ電力消費を抑え、有害物質の排出が少なく、製造環境が悪くない手法が必要
今日は以上です。