【論文】接着性に優れたクロメートフリー化成処理
こんにちは。
『表面技術』2023年11月号を読んでいます。もう1月ですが…
読んだ記事について、気になった部分やポイントをメモしておきたいと思います。
今回読んだ記事のタイトルは「接着性に優れたクロメートフリー化成処理皮膜の開発」で著者は日本製鉄㈱の荘司さん他数名の方々です。
内容
社会インフラ等の建材に用いられる溶融亜鉛めっき鋼板においては、耐食性向上や塗装密着性向上のために化成処理が実施されます。一般的には六価クロムを含むクロメート処理が必要になりますが、環境負荷物質として厳しい制限を受けるため、代替技術が様々研究されています。
この論文では、耐食性や塗装密着性、また接着剤を用いる接着工法における接着性の高いクロメートフリー化成処理技術を検討しています。
処理反応の過程の中で金属成分と樹脂成分が分離した膜を形成すること(自己複層化技術)によって、クロメートなしで、耐食性・密着性・接着性の高い化成処理膜を形成できる可能性が示されています。
メモ
湿潤環境を経た接着性と塗装密着性、耐食性を発現する断面構造制御技術(自己複層化技術)を開発
水系アクリルエマルジョン分散樹脂に金属成分を分散させ、溶融亜鉛めっき鋼に塗布・熱処理することで、化成処理皮膜を形成
3つの液の接触角から表面自由エネルギー・界面自由エネルギーを算出
ヘキサデカン:分散力成分のみ
ヨウ化メチレン:分散力成分、双極子間成分のみ
水:分散力成分、双極子間成分、水素結合成分
自由エネルギーを用いて各特性や膜形成過程の考察を行った
表面自由エネルギー変化が正の場合には樹脂が分散することで安定化するのに対して、負の場合には樹脂と無機成分が分離、すなわち、樹脂エマルジョンが凝集、濃化することで安定化した結果、複層化構造を形成したと考察
表面自由エネルギー変化を処理液設計に反映することで、断面構造を制御できる可能性あり
表面自由エネルギー変化が小さいほど塗装密着性が高く、負になる条件で最も高い密着性だった
化成処理液の樹脂添加量が高いほうが接着性は向上する。
耐食性は樹脂添加する方が高いが、50%以上入れると逆に悪化してしまう。
複層化構造が形成される条件では、樹脂が凝集・濃化される過程で、ミクロンオーダーの樹脂隔壁が形成され、それによって化成処理皮膜が分断されているような構造になる。このため、クラックが生じにくく、接着性や耐食性が高いと推定される。
ただし、樹脂隔壁は水分を透過するため、これが多すぎると耐食性が低下する
今日は以上です。
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