【学会誌】無電解めっきの還元剤反応における水の役割
こんにちは。
表面技術協会の学会誌である『表面技術』2022年10月号は表面技術と水に関する特集が掲載されています。記事毎にマインドマップとポイントだと思う点を書いておきたいと思います。
今回の記事のタイトルは『無電解析出プロセスにおける水の働き』で、著者は早稲田大学の國本さん本間さんという方々です。
マインドマップ
ポイント
無電解めっきの電気化学反応における水の役割を理論計算を用いて解析・考察
次亜リン酸の酸化反応では、酸素原子側に水和構造を作ることで触媒金属表面へ吸着しにくくし、水和構造を作りにくい水素原子側が触媒金属表面へ吸着しやすくすることで、触媒反応が発言している
ホルマリンの酸化反応では、中間体CH2O2-が水分子によって安定化されることで、持続的な反応を支えている
感想
めっき等の液ものについては、金属塩やら添加剤やらの議論をされることが多いですが、水に焦点を当てて、理論計算結果を紹介しており、とても興味深い内容でした。
ウェット系の薬液で水の重要性は認識されていると思いますが、ある程度綺麗なものを使っておけば、化学反応の議論の中では無視しても良いように考えているように感じます。
というか、考えないようにしているというところが大きい気がします。
影響はそこまで大きくないだろうし、反応過程にどうやって影響してくるか分からないし、と。
この記事では水の有無で吸着性が大きく変化する結果が紹介されており、とても驚きですが、ある意味では納得の結果でした。
最近ではイオン液体や有機溶媒系のめっき液の研究が目立ってきている印象ですが、これらの溶媒を何を選ぶかについても、今回紹介されているような取り組みは重要な要素になると感じています。
まだ研究段階だと思いますが、ある程度全体像が見えてきたら、”電気化学における水の教科書”のようなものが出てくると、業界全体のレベルも上がっていくと思いました。
今日は以上です。