【学会誌】非バルブメタルを含むTi合金の陽極酸化
こんにちは。
『表面技術』2023年4月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になったポイントをメモしておきたいと思います。
今回読んだ記事のタイトルは「陽極酸化処理による医療用金属材料の表面機能化」で著者は北見工業大学の大津さんです。
内容
タイトルにある医療用金属材料はチタン材料を指しています。
特に陽極酸化によって形成される酸化被膜は、光触媒効果があったり、処理条件を工夫することで抗菌作用や他材料との密着性を上げるなど、生体親和性という点でメリットがあります。
しかし、Ni等の非バルブメタルを含むチタン合金では、陽極酸化でキレイな酸化被膜を作ることが難しいようです。
Ti-Ni合金は超弾性という特性を持つ形状記憶合金として知られています。
傷つきやすく柔らかい生物の中で用いる材料としては、Ti-Ni合金は重要な材料なのですが、人体に有毒なNiが生体内に溶出してしまう危険性があります。
酸化被膜で表面を覆うことでNi溶出を抑制したいのですが、Niが含まれていると陽極酸化が難しい、という点が問題になっているそうです。
この記事では、陽極酸化方法を工夫することでTi-Ni合金上にTiO2皮膜を形成する技術について説明されています。
ちなみに、バルブメタルはググったら以下のような説明がありました。
直感的には不導体膜が形成される金属のことのようです。チタンやアルミニウムですね。
ポイント
Niが溶出するHNO3溶液を電解液として用いることで、Ti-Ni合金の表面のNiが除去されることを見出した
パルス電圧で陽極酸化を行うことで、Ni除去と平滑さを両立することが出来た。
アノード反応によるピット形成を抑制し、HNO3による再表面の酸化でピットを封止する、というコンセプトが成功した
パルス電圧で酸化被膜を形成したTi-Ni合金表面では細胞の増殖率が大きくなることを検証した
陽極酸化によるNドープTiO2
本記事では陽極酸化を使ったNドープTiO2についても説明されています。
NドープTiO2は可視光でも光触媒効果を発揮するため、これが容易に作れることはメリットになるようです。
陽極酸化でNドープTiO2を作るには、エチレングリコールやグリセロールなどの有機溶媒を電解液に用いるそうです。
有機溶媒の種類によって膜質や機械特性が変化するようなので、材料を上手くチューニングすることで、いろいろな物性のNドープTiO2が作れそうです。
今日は以上です。
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