ベルギービールの代表格シメイ。4種類飲んでみる。 1000BeerChallenge(49-52/1000)
■昔、ベルギービールが流行ったことがあってだね
はっきりした時期は覚えていないのですが、2008年前後あたりだったかと思います。ベルギービールが日本でちょっとだけブームのようになったことがありました。
ちょうど今のクラフトビールのように、いわゆる普通のビールとは違った、個性的な凝ったつくりのビールがたくさん紹介されました。タピオカブームでのタピオカ屋さん出店ラッシュとは比較になりませんが、ベルギービール専門のバーなんかもいくつかできたのを覚えています。
単価も高かった。最近はクラフトビールに慣れてしまったからか500円でも高いとは感じますが驚きはしませんけれど、当時は350ml瓶で500円とかするビールはほとんどありませんでしたから、贅沢感も新鮮でした。
そのプチブームの後、酒屋さんに並ぶベルギービールも、ベルギービール専門のバーも、ファンも、種類も絶対量も減ったものの、一定数はきちんと生き残りました。今では日本でもビールの1ジャンルとして定着しています。
■ベルギービールの代表格シメイ
ベルギー国内でも消費量から言ったら日本と同じくピルスナータイプのビールが全体の7割を占めているそうです。しかし、日本でベルギービールと言えば、香り豊かなエールビール、さらにはスパイスを使ったりアルコール度数が高かったりの「濃い」ビールを指すことがほとんどです。
その代表格がシメイです。
トラピスト会というカトリック系の修道院が、その修道院内部に独自の醸造所を持ち製造している、トラピストビールと呼ばれるもののひとつです。トラピストビールは、色が濃く、スパイシーで、アルコール度数も高いビールが多いので個性がわかりやすく、修道院で作っているというストーリー性もあって、知名度が上がりました。
シメイは、日本ではヒューガルデンと並んで最もよく知られたベルギービールでしょう。
■トラピストビールとは
トラピストビールというのは、トラピスト会の修道院の中でつくられているビールの総称です。トラピストビールを作っている修道院は、ベルギー国内には6箇所、その他に5箇所あるそうです。トラピスト会の修道院は世界中にあり、日本にもいくつか。わりと厳しい修行をすることが特徴らしく、その過程で農作物の加工も自給するようになったのでしょう。
トラピストビールのつくり方については、はっきりした工程が見つかりませんでした。独自のレシピと製造法という感じなのでしょう。特徴としては、ハーブ類を使ったり、柑橘類を使ったり、瓶詰め前に酵母を加えて瓶内二次発酵をおこなう、などのようです。そして色も味も濃いのも特徴。
■[beer049] CHIMAY GOLD BLOND
どうやら、このゴールド・ブロンドと書いてあるラベルのものと、単にゴールドと書いてあるものの2種類があるようです。ちょっとややこしいのですが、おそらく中身は同じでしょう。
シメイの中では軽いラガータイプとのこと。
■ビール情報
名称:CHIMAY GOLD BLOND
メーカー:シメイ
産地:ベルギー
タイプ:ピルスナー
アルコール度数:5%
価格:500円くらい
入手場所:ビックカメラ
■味わいメモ
外観:くすんだ麦わら色。
アロマ:軽めの甘い香り。柑橘感と酵母感も。
味わい:酸味。ホップの苦味。熟成香。
ボディ:ミディアムボディ
ベルギービールといえば濃い色というイメージだけれど、これは名前の通りゴールドです。どうやら指名の中では珍しく軽めのピルスナータイプらしい。
香りもさほど強くはありません。ただ、柑橘系の香りが印象的です。甘い香りと、酵母っぽさもありますが、まず柑橘感が来ます。
味わいも第一印象は柑橘感。酸味が強いビールという感覚。柑橘の渋みもあるので、それがホップの苦味と混ざると、意外と癖強いじゃないかと感じることも。軽くて爽やかな飲みやすいピルスナーとはいかないのがシメイらしくていいのですが、好みは分かれるかもしれません。
余韻は酵母っぽさと苦味がわりと穏やかにキレていきます。
好き度:★★★
シメイにしては普通のピルスナーって思ったら意外と個性派でした。あくまでシメイのピルスナーなんですね。
■[beer050] CHIMAY BLUE
青ラベル。高級感あります。
シメイ・ブルーは、もともとはクリスマス用につくられたビールだったそうです。修道院にとってクリスマスはもちろん特別な日なのでしょう。そのために豪華に手の込んだビールをつくったはず。そりゃ美味しいはずです。
それが評判になり、今では1年中つくられるようになっています。あくまで特別なビールですからとは言わず、1年中クリスマスやっちゃいましょうっていう姿勢がとてもいいですね。
■ビール情報
名称:CHIMAY BLUE
メーカー:シメイ
産地:ベルギー
タイプ:トラピスト
アルコール度数:9%
価格:500円くらい
入手場所:ビックカメラ
■味わいメモ
外観:黒に近い。
アロマ:カラメルのようなこってりした甘い香り。クローブのようなスパイス感。
味わい:クローブかコリアンダーみたいなスパイス感。こってりした甘さ。苦味。酸味。
ボディ:フルボディ
確かにこれはベルギービールのイメージ。いや、イメージより濃い。こってり。
色もほぼ黒。でもスタウトではない。
香りもこってり。クローブとかカラメルとかっぽい印象で、グリューワインを思い出しました。
そう思って飲んでみると、口当たりもグリューワインみたいに感じます。スパイス感と甘みが広がる感覚。炭酸があるからワインとは違うんですけど。
それから熟成香みたいな甘さと、苦味がじわっと出てきます。同時に酵母なのか柑橘なのか、酸味もじわっと。
好き度:★★★★★
ビールというよりはワインに近い感覚で飲むべきもののような気はしますが、とても美味しい。スパイス感と酵母感と、癖は強いので好き嫌い分かれるような気もしますし、アルコール度数も高いので勧める相手も限られるかもしれませんけれど。
■[beer051] CHIMAY RED
赤ラベル。落ち着いた高級感があります。
実はシメイはレッドがオリジナルだったようです。最も古くからつくられているらしい、いわば元祖です。赤いやつっていうとアップグレード版だと思い込む世代なので、これが元祖だとは思いませんでした。やっぱり一番古い伝統のつくり方を守ってるんでしょうか。
■ビール情報
名称:CHIMAY RED
メーカー:シメイ
産地:ベルギー
タイプ:トラピスト
アルコール度数:7%
価格:500円くらい
入手場所:ビックカメラ
■味わいメモ
外観:くすみのある濃い茶色。
アロマ:凝縮感のある甘い香り。カラメルのようなこってりした甘い香り。クローブのようなスパイシーな香り。酵母っぽさもある。
味わい:クローブやコリアンダーのようなスパイス感。こってりした甘さ。凝縮感ある熟成香。苦味。酸味。
ボディ:フルボディ
確かに元祖と言われれば元祖っぽい。青ラベルほどこなれた華やかさはないけれど、しっかり要素を詰め込んでますっていう感じです。
香りで目立つのはフルーティーな熟成香だと思うのですが、ドライフルーツのような凝縮感があります。カラメルっぽい甘さもあいまって、こってり甘い香り。酵母感もあります。これも瓶内二次発酵だそうで。
味わいもそれぞれの要素がこってりしてる印象。クローブみたいなスパイス感、濃厚な熟成香、カラメルみたいな甘さ。苦味はあまりなく、酵母感があるので酸味も少し。後味はまたスパイス感が強くて、やっぱりグリューワインに近いイメージです。
好き度:★★★
個人的な好みからすると、ちょっと自然の味が強いーって感覚にはなりました。さすが元祖。
■[beer052] CHIMAY TRIPLE ALE
シメイ最新のビールらしいのですが、1966年からつくられています。エールだし、瓶内二次発酵してるらしいし、とりあえずトラピストだし。強敵だぞという雰囲気が漂ってきます。
TRIPLE ALEというのが正式名称のようです。ラベルにも書いてある。しかし、ラベルの色から、シメイ・ホワイトという呼び方も日本では一般的らしい。とはいえ、原料に小麦とは書いていないので、ホワイトビールではありません。
トリプルというのは、アルコール度数が3%のものを基準にして、その3倍の度数があるからトリプル、という話のようです。とはいえ、アルコール度数は公式には8%です。
いろいろ混乱する部分があるのですが、まあトラピストビールだから仕方ないと思わされちゃうのがずるい。
■ビール情報
名称:CHIMAY TRIPLE ALE
メーカー:シメイ
産地:ベルギー
タイプ:トラピスト
アルコール度数:8%
価格:500円くらい
入手場所:ビックカメラ
■味わいメモ
外観:濃くて濁った麦わら色。
アロマ:スパイシーさ。麦。熟成香。酵母。
味わい:スパイシー。麦の甘み。苦味。柑橘感。酵母感。
ボディ:ミディアムボディ
もやっとしてて濃い色。香りも個性派です。麦やホップの印象もあるのですが、カルダモンとかコリアンダーのような、目立つスパイス感が強い。
味わいもなかなか個性的。まあシメイは全体的に個性が濃いけれど。
口当たりがスパイシーで、やはりカルダモンとかのイメージがわきます。苦味もわりとあるのですが、柑橘感が強くて、ちょっとえぐいとも感じるくらい。
好き度:★★
ベースになっている味わいは麦感と熟成香のある意外とすっきりしたビールなのですが、その上に癖が乗っかってるような感じで、これが好き嫌いを左右しそうです。
■トラピストビールをぼんやりと把握しました
こってり&スパイシー。そして自然派。それでもってアルコール度数が高い。
夏の夕方にピルスナーをごくごく飲むのとは正反対の、雪の夜にのんびり飲むようなイメージでしょうか。まあそこまででなくても、休みの日の夕方とか、食後とか、ゆっくりするタイミングで飲みたいビールでした。