ゲームの音量バランス調整の大切さと、効率的なやり方について
ゲームのサウンドデザインやらディレクションを生業にしている川口です。
よりよい体験を目指して色々と書いています。
バランスが悪い状態とは?
ゲームをプレイしていて
「なんだか曲がうるさくてセリフが聞こえないな…」とか
「色んな音が鳴っていて、何が起きているかよくわからないな…?」など感じたことはありませんか?
演出としてそのバランスであれば良いのですが、ゲームの進行上のヒントになるもの、例えば助けなくてはいけないキャラクターの悲鳴のような聞こえて欲しいはずの音が聞こえない場合は困ります。
丁寧な調整には時間が掛かる
そうならないためにも、音量バランス調整はとても大事な工程と言えます。
そしてこの工程をしっかり行うには割と多くの時間が必要です。
ゲームのサウンド制作において、楽曲や効果音を用意しただけではまだ全工程の半分くらいでしかありません。それらの素材が揃った上で、どうやってゲームを演出していくのかが体験作りの肝になります。
調整しないとどうなる…?
正直なところこの工程は雑に仕上げてもゲームとしては完成しますが、サウンド担当者から見ると未完成品のように見えたりするのがとても嫌な部分でもあります。
より良いゲーム体験を目指す
この工程は言うなれば、料理の仕上げの味付けや盛り付けのようなものなので、せっかくのA5ランクのステーキ(楽曲など)を無造作に地面に置いたりせず、ちゃんとしたお皿に載せて適切な味付けをしてお出ししましょうね、という感じの話です。
音量バランス調整の流れ
よくあるワークフロー
実際に楽曲や効果音をゲームに組み込んで、遊んでみながらバランスの悪い部分を確認し、細かく調整してから再び遊んでみて確認する。これを何度も繰り返しますが…意外とこの1サイクルには時間が掛かります。
ゲームの規模やプラットフォームにもよりますが、音量を調節したあと、アプリケーションをビルドするのに数分〜数十分、端末にインストールするのに数分、該当の場面までゲームを進めるのに数分…とか、何か一つ変更してから再度確認するために合計数十分もの時間が掛かったりします。
効率よく行いたい
方針は2通りあって
・音量のルールを細かく決めて確認の回数を減らす
・待ち時間を減らし、試行錯誤の回数を増やす
どちらもできると非常に効果的です。
音量のルールについて
細かい数値などはゲームによって違ってくるので方針だけですが
・楽曲や効果音、セリフなどを含めた全体音量を決める
・楽曲、効果音、セリフなどカテゴリ別の音量を揃えていく
これを基本方針として、より細かいところで
・効果音の中でも更に細かくカテゴライズして揃えていく
・どうしても聴かせたい音がある場合は他の音を一時的に下げたりする
・一度にたくさん効果音が鳴ることが想定される場合は、音を間引く
・一定の音量を超えた際に気付かれない程度に音量を下げたりする仕組みを作る
こんな感じでルールを決めていくことで、音量バランスが破綻しにくい演出作りが見込めます。
待ち時間を減らすには
ビルド時間を減らすとか、端末へのインストール時間を減らすのは音量バランス調整以外にも非常に効果が高いのでなるべく頑張ってもらうとして…
理想を言えば、ゲームを動かした状態で音量調整ができたら最高じゃありませんか?
それができたら待ち時間、ゼロですよ?
待ち時間ゼロを実現する
オーディオミドルウェアと呼ばれるツールには、この夢のような機能があったりします。もっと使って欲しい…!(から、この記事を書いています)
え、そんなもの使ったらお金が掛かる?
時間が買えると思えば全然アリじゃない?(個人の感想です)
個人制作向けの無償版でも使えたりします。
そんな夢のような機能の紹介記事はこちら
6年前に自分が書いていたものですが、やり方は今も変わりません。
皆さんの力でゲームのサウンド体験をよりよいものにしていきましょう!