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月刊プレイリストボーイ2024年9月号

【今月のプレイリスト】


1.Twilight Time/高木大丈夫
出張で倉敷に行った。夕暮れ時の美観地区の散歩にこの曲がピッタリだった。白壁に柳。江戸風情のなか、老舗から今時の洒落た店までが雑多に軒を連ねる感じと、モダンで雑多なトイミュージックには共通の何かがある。きっとそれを「モダン」と呼ぶのだ。

2.Movin'On Up/プライマル・スクリーム
「地面師たち」は確かに面白いが、刺激的な展開によって脳の快楽報酬系が弄ばれてるみたいでやや閉口。あの感じはスナック菓子がやめられず、気づいたら一袋たいらげてしまった時に味わう謎の敗北感に近い。自分には「全裸監督」がベスト。キャラクターの人間臭さ、エロ産業と映像メディアの時代相関を辿る意義深さもある。この曲は村西が銀行の融資担当に衛星放送事業をすすめられるくだりで流れていた。振り返ればあの時、地獄への扉を開けたのだ。

3.男たちのメロディー/SHOUGUN
日本描写への飽くなきポリシーを、ハリウッドスケールで実現させたことに重大な価値がある。今度のエミー賞18冠は、ちょうど劇中の三浦按針のように、西洋人から見た日本人への掴みどころのない畏敬に他ならぬ。この曲を選んだのはただの字面合わせだが「運が悪るけりゃ死ぬだけさ」というフレーズだけは、これから関ヶ原の合戦に向かうシチュエーションに辛うじてつながる…か?

4.すしバーソング/少年ナイフ
ある意味、真田広行よりアメリカでの成功がずっと早かったのが少年ナイフ。寿司食いてぇな。秋は寿司だよ。

5.Eating The Cats /ザ・キフネス
大統領候補のテレビ討論会にて、またしてもトランプによる「移民たちは犬や猫を食べている」という、もう荒唐無稽を通り越してオカルトな迷言を受け、すぐさま発表された曲。曲の良し悪しはさておき、このスピード感で反応するキフネスのアーティストシップに敬服。

6.New Day /堀込泰行
いつのまにか「刷新感」という言葉がポピュラリティーを得ている。こと今回の自民党総裁選では厭になるくらい聞いた気がする。そんなフワッとした感じで、劣化しきったガバナンスを誤魔化せると思うなよ。で、ドナルド・フェイゲン風のメロと揺蕩うバックビートで刷新感を出したヤスくんの再起はサイコーだったなーってハナシ。

7.Le Freak/シック
9月20日、Zepp Osaka Baysideでのナイル・ロジャース&chicのLiveに行って来た。オープニングがいきなりこれだった。何ら奇を衒わない、堂々たる幕開けにこちらも無防備に腰が動いた。音楽に齎されるしあわせの最上級は、この曲で踊れることかも知れない。

8.Get Lucky/ダフト・パンク
今月いちばん聞いた曲。Liveの予習がてら、まだ知らなかったナイル・ロジャースworksを探っていたらドハマりした。中毒性が高く、一回聞いたら20回は繰り返してしまう。今やナイル自身の代表曲にもなっていて、先日のLiveでも、盛り上がりを加速させる佳境で演奏されてた。ニューウェーブやニューロマンとディスコの融合は、ずっと前からやっていたが、2013年にこの曲がヒットしたことによって、どうやらそのDNAは、さらに次世代に拡散されたようだ。B.T.SやLizzoなんかを聞いてると、もろナイルやんって曲、あるもんな。

9.Bad Advice/Cornelius&アート・リンゼイ
先月発表された新曲。今月はナイル・ロジャース脳になっているので、これも“ナイル・ロジャースmeetsブライアン・イーノ”的なエレクトロファンクに聞こえてしまう。アート・リンゼイの低体温ヴォーカルとコーネリアスの意外な親和性に感心しつつ、実は曲を引っ張ってるのはシンベだったりするところが面白い。

10.Different Kind Of Lady/ジャクソンズ
ジャクソンズの次男、ティト・ジャクソンが今月15日永眠されたとのこと。ナイル・ロジャースと肩を並べる(と、つい言いたくなってしまう)R&Bギターカッティングの名手でした。ご冥福をお祈りします。

11.When Seasons Change /
カーティス・メイフィールド

「季節が変わり 再び9月を乗り越えた時 あなたを怖がらせたたくさんの傷跡…」冒頭の歌詞はそのように解釈すれば良いだろうか。とにかく世界に一日も早く平和が訪れますように。

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