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月刊プレイリストボーイ2023年8月号


【今月のプレイリスト】


1.Water Skiing/デュアン・エディ
波乗りは5分で挫折したが、サーフミュージックは好き。テケテケのエレキサウンドがね。この曲はファンキーなバッキングに乗るリードが品行方正なほどキャッチャーなのが良い。むかしはディック・ディルやシャドウズのようなラジカルさに憧れたが、今はポップであることを厭わない方が素敵に思える。

2.Take It and Smile/カット・ワームス
前曲はこの曲のイントロへ繋ぐためのブリッジだった。今月はこのワイルドワンズかと思うくらい俗っぽくイナたい渚系シンガーソングライター cut wormsを毎日聴いていた。やっぱり、ポップであることを厭わない方が素敵。

3.Hotel Pacific/
関口和之meets青柳拓次featuring玲葉奈

いつでもポップであることを厭わないサザンは素敵だが、こんな何のヒネりもない曲には首を捻らざるを得ない。この手のちょいダサラテン歌謡風渚ソングはサザンの定石のひとつではあるが、ここまで安易だとセルフパロディにさえならない。が、そんなマイナスイメージごとちょうどいいセンスに持って行くレヨナの力にはあらためて感服。青柳さんのテケテケギターも、この音数でやり切るところが逆にラジカルでシブい。

4.Night Parade/ロビー・ロバートソン
初めてリアルタイムで聴いたのは2ndソロアルバム「storyvill」だった。ダニエル・ラノワのプロデュースで、ボノやらピーガブやらも参加してる1st(1989年)は、生涯愛聴する大名盤だが、こちらの方がザ・バンドの音楽性に近いなという印象だった。R.I.P.

5. Olive Tree(In-Side Mix)/
ピーター・ガブリエル

ピーガブの満月配信曲。こんなにポップな曲は「Solsbury Hill」以来じゃないか?いつもながら3つのミックスちがいが発表されているが、今回はエッジがやわらかめで全体的に中音域にまとめられてるようなIn-side mix(ドルビーアトモス)が耳馴染みが良かった。毎月満月に曲をリリースする意図を示す発言の中に「再び自然と結びつける方法を見つけないと、私たちは多くを失うことになる」と地球を危惧しつつ「私たちがどこに位置するのかを考えるシンプルな方法は、空を見上げること」と語っている。いよいよ自然と再共存する方法を考えなおさねばならんということは、わかってはいるのだが、果たして何をすれば良いのか。

6.Siesta/Alfred Beach Sandal
なんかわかる気怠るい夏代表。アナログシンセのウニョウニョ感がクール&ザ・ギャングの「summer madness」っぽくて、気怠るいサマーソングとしては正解。「siesta」というタイトルと歌詞から、昼休みに酒を飲んでしまってもう仕事に戻れんわいという歌か?と思った。

7.Short supply/トレイシー・チャップマン
ちょうど30年前に発表された、これもストレートに環境破壊へ警鐘を鳴らす歌。あの当時は何も考えてなかったし、まさかここまで地球がおかしくなるとも思ってなかった。今「don't you see?」と問われても背筋をただす振りをしながら苦笑するしかできない自分が情け無い。

8.そういう時代/
やじぃ&かむあそうトライブス

一聴、純レゲエにありがちなラスタファリズムな自然回帰の歌かと思いきや「オレたちの手軽な生活に あの土地も空も汚されてるらしい」と言われれば、そりゃ他人事じゃない。この人、声いいなぁ。

9.メルトダウン/忌野清志郎
これも30年前の歌。当時はまだ少なくとも日本では原発のリスクがそこまで顕在化していなかったし、清志郎の言ってることにもピンと来てなかった。問題意識を持つようになったのは、やはりあの事故からだった。電気の恩恵を受けてる身として、原発の効率性とリスクのジレンマは常に感じているが、廃炉にするのに30年かかると知ると尚更ゲンナリする。そんなのが日本だけで54基もあるのだ。想像力を働かせようという段階は、とっくに過ぎていた。

10.震える惑星/高橋幸宏
「まぁ、こういうメッセージは僕はあんまり言う方じゃないんですけど…」と言うところに幸宏さんのデリカシーのようなものを感じる。メッセージの伝え方は人それぞれだが、声高に叫ぶ仕方ではなく「地球がずっと良い星であって欲しいというラブソング」を歌えるのは幸宏さんだけなんだと思う。アフロ的なリズムも曲の主張に合ってる。

11.All Summer Long/ビーチ・ボーイズ
映画「アメリカン・グラフィティ」のエンディングを真似て最後はこれ。別にビーチ・ボーイズは夏じゃなくても聴くのだけど、夏はやっぱり初期がシックリ来る。マイク・ラブとデニスのチャラ男加減が高度な音楽性を誤魔化す感じが妙味。冒頭の「Remember when you spilled coke all over you blouse(君がブラウスにコークをこぼしたことをおぼえてる?)」は、ブライアンと最初の奥さんであるマリリンとの思い出がもとになっているのだけど、事実はブライアンが彼女のブラウスにホットチョコレートをこぼしたらしい。人の体にホットチョコレートをこぼすなどという、過失傷害罪に問われて然るべき出来事をこんなゴキゲンなサマーソングにするブライアンはやっぱり変人。夏、最高!!


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