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「ゴジラ×コング 新たなる帝国」不器用そうに見えて、意外と処世術を心得てるコング。

どうも、安部スナヲです。

レジェンダリーピクチャーズの怪獣映画シリーズ「モンスター・バース」の最新作、「ゴジラ×コング 新たなる帝国」観て来ました。

サブタイトルになんでもかんでも「帝国」とつけたがる太古のハリウッド様式に失笑してしまいましたが、実際は失笑ではなく爆笑の嵐。スッカリ童心に帰った至福の1時間55分でした!

【あらましのあらすじ】

タイタン(怪獣)の研究機関「モナーク」の管理下に置かれていたコングは、わけあって再び地上に出現したゴジラと戦わされたり、なんだかんだ人間の都合に振り回されながらの紆余曲折を経て、今は故郷である「地下空洞」に暮らしている。

ある日、モナークが地下空洞からの気掛かりな波形の信号を受ける。

時を同じくして、髑髏島の原住民イーウィス族の生き残りで、唯一コングと手話で会話できる少女、ジア(ケイリー・ホトル)も、その波形信号を感じ取っていた。

ジアを養子にして大切に育てているアンドリュース博士(レベッカ・ホール)は、この波形信号が意味するメッセージを探るべく、陰謀論系怪獣インフルエンサーのバーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)、獣医師のトラッパー(ダン・スティーブンス)と結束し、地下空洞へ赴くー。

一方、タイタンが凌ぎを削るような地下空洞で必死に生きているコングは、この世界を支配するスカーキングという類人猿タイタンに遭遇したことで、あらたな闘争に巻き込まれていく。

コングは窮地を乗り越えるため、宿敵ゴジラに助けを求めて地上へ赴くが…

【感想】

子供の頃、キングコングの存在を信じていた時期がある。

おそらく何度か夢に出てきたコングを、現実に見たと思い込んでいたのだろう。

ちょうど、ジェシカ・ラングのフェロモンビームが世の男どもを虜にしていた1976年リメイク版がブームになっていた頃なのだが、とにかくあの巨大ゴリラは、表情から喜怒哀楽がハッキリとわかるので、他の怪獣より情が移りやすかったのだ。

モンスターバースに初めてコングが登場したのは2017年の「髑髏島の巨神」だが、あの時点では、まだ強くて狂暴なモンスターというだけの印象だった。

私が子供の頃コングに抱いていた愛おしさが甦ったのは、前作にあたる2021年の「ゴジラVSコング」からだった。

精巧なCGIで作られた今のコングは、表情や仕草の機微がより細かく表現されているということもあるが、例えば豪快に敵を撃退したあと、「はあ、疲れた…」みたいな感じで肩で息するところや、無防備に寝そべったり、尻をぽりぽり搔くところなど。

愛くるしさに加えて生活臭やオッサンの哀愁まで漂わせてきたのは、あの作品からだ。

今作も、のっけからハイエナみたいなタイタン「ワート・ドッグ」の胴体を引き裂いて威嚇!!というゴアな決めシーンの後、滝でシャワーを浴びてサッパリするというオフショット付き(この時も、ちょっと体のベタつきを不快がっている仕草がたまらん)。

極め付けは、むし歯だか歯槽膿漏だかで苦しむという、あそこまで行くと可愛いいを通り越して、マジで心配する。

前作よりも、人間や他のタイタンらとのコミュニケーションが高度になっているのもポイント。

ジアとの強い絆に加え、今回はジアを通じて人間サイドの思惑を慮っているようにも見えた。

出典:映画.com

そして地下空洞に棲息するスーコやグレイトエイプら、一度は衝突した別党派のお猿コミュニティと、微妙な駆け引きの末に連携するあたり、不器用そうに見えて意外と処世術を心得てる(また、類人猿のなかでも比較的温厚で友好的なゴリラをコングに、狂暴で縄張り意識の強いチンパンジーをスカーキングに当てているところも興味深い)。

出典:映画.com
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紆余曲折を経て、故郷たる地下空洞に落ち着いたコングだが、そこが決して安住の地ではないというところもテーマ性に深みを与えている。

結局、人間であれタイタンであれ、多数が集まって〈社会〉が構成されれば、支配や分断が生まれる。

今作は特に怪獣映画ならではのシュールな笑いに満ちていたが、最も笑ったのは、ゴジラに協力を求めるためにエジプトに行ったシーン。

問答無用の剣幕で襲いかかって来るゴジラに「ちょっと待て!まずハナシを聞け!」と言わんばかりのコング、さらにそのあと仲裁に入ったモスラに頭が上がらない感じのゴジラも超可笑しかった。

ゴジラとコングの対決シーンは、もはや怪獣プロレスを超えて、大仁田厚とかのアレ、つまりただのプロレス。ブレーンバスターやバックドロップまで出てくる、完全なエンタメ興行であった。

印象が薄れがちな人間勢だが、これがなかなか健闘している。皆キャラも立ってるし、結構〈胸アツ〉なシーンを見せてくれた。

出典:映画.com

アンドリュース博士とジアの互いに健気な親子愛もさることながら、バーニーは自身の功績への不当な評価にやさぐれながらもやっぱり頼もしく、何をやってもお茶目。

出典:映画.com

そして今作のMVPは新キャラの獣医師トラッパー。

出典:映画.com

まず登場シーンからして、おいし過ぎる。

コングのむし歯治療(というより工事だが)のため、彼は軽快な音楽に合わせて上空からロープをつたって口内に入るというヒップな曲芸を披露、しかもアロハにグラサンという出立ち!何てイカした男なの!(ああいうデキるチャラ男に憧れを抱くのは私だけだろうか)

そしてクライマックスに登場する〈ビーストグローブ〉なるガンダムの腕みたいなガジェット。

シーモからの冷凍波攻撃により右腕を負傷したコングにそれを装着させるあのシーンは、まるっきり阿保なのだが、トラッパーのような男がやると謎の説得力がある。

ちなみに、予告編やポスター等であのビジュアルを見た時は、「遂にコングもメカ化した!?」と一瞬誤解してしまった。

おそらく、コングの腕に何かメカっぽいのが着いてたらかっこええやんという結論ありきで、無理矢理当て込んだアイディアなのだろう。

が、嫌いじゃないぜ、そういうの。

だって大の大人が集まってそんなくだらないアイディアについて話し合ってるところを想像しただけで映画が二重に楽しくなるのだから。

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