プチ炎上から学ぶ広告を批判する消費者vs広告の問題点:宝島社広告
広告の炎上には2パターンあって、
広告自体に問題がある時と、
特定の価値観を持つ消費者が広告を批判して話題となる場合があります。
この2つの判断が難しいからこそ、広告主にとって、放映や放映中の判断は悩ましいですよね。
今回は、批判を集めてプチ炎上となった宝島社の広告を取り上げ、消費者と広告倫理の双方から分析します。
広告制作や評価の参考になれば幸いです。
批判があった広告内容
実際の宝島社の新聞広告はこんな感じでした☟
プロレスにおけるヒールと広告中の女性の靴のヒールをかけているようです。
早速、どんな点が批判され、どんな点が良かったのか見ていきましょう。
広告の問題点チェック
広告自体の問題度:問題 低
結果:プチ炎上
理由:世代間の認識ギャップ
批判ポイント解説。批判する側の価値観
今回批判が集まった背景をまとめました。
1 煽りと開き直りの態度
2 分断を生む効果
3 Creativeの「やってやった感」
1 煽りと開き直りの態度
まず、一部消費者には、広告コピーが煽りと開き直りの態度として受け取られ、乱暴な印象を与えました。
具体的には、広告キャプションで「団塊は、他の世代にとって悪役だ」とし、『他の世代を挑発し生きてくれ』という部分です。
団塊世代が社会的に他の世代から疎まれているかどうかの真相は分からないですが、団塊世代を悪役とした上で開き直り、改善しない態度を肯定するような文言が不快感を喚起したようです。
煽った表現に不快感を感じた人からは、団塊世代を鼓舞する事自体への批判も上がっていました。
2 分断を生む効果
批判をしているのは、この広告のターゲットではない人(団塊世代に当てはまらない人)のようです。この広告を見た際に、若い世代と団塊世代では、意見が異なるのは当然です。
しかし、若い世代では「他の世代を挑発し生きてくれ」といった表現が、あたかも若手の世代への負担を増やすことに躍起になっているように見えてしまう。
理由としては、今回の広告を批判したと思われる20-40歳は
この広告で、年金や政治的意見などの若者と年配層との社会問題に対する認識の差を連想しやすい事です。
団塊世代に限らず、どの世代でも年上の世代とギャップを感じている節があり、特定の世代への応援が、他の世代への侮辱や軽視に捉えられます。
コピーを見ると、70代の後期高齢者に対して
中年(広告主)が、若者や他の世代を引き合いにして
70代にへつらう構図が見えます。
もう一度コピーを見て見ましょう。
このコピーを書いたのが70代後期高齢者ではなく、
他の世代であり、団塊世代70代~が
他の世代に疎まれている、という評価ではじめ、
コピー中盤では「他の世代を挑発してくれ」最後には「生き様に嫉妬をこめて、盛大な拍手をおくらせてほしい。」と言っています。
コピーを書いたのが40代以降だとすると、
若い世代がそのへつらいに嫌悪感を感じるのは自然かもしれません。
結果、この広告は団塊世代 VS 若い世代という対立構造を生むものとなってしまっています。
3 Creativeの「やってやった感」
更に、悪役の意味のヒールと、靴のヒールを掛けたことは一部、嫌悪感の元になっています。
理由として、広告意図と無関係な靴のヒールを持ち出すことは広告制作側のお茶目演出であり、広告目的「団塊世代の背中をもう一度押す」に関係のある演出ではなかった、と消費者が捉えたからです。
4.女性の表象
そこに女性の表象問題もあった事で批判がありました。
目を引かせるためだけに広告に女性を起用することは、ジェンダー学の観点から批判されてきた事です。今回の広告では、女性を映す必要性はヒールを履かせることだけだと思われます。
このように、広告を目立たせるためだけの女性起用であると感じた人は批判の声を上げています。
段階と言えども、この広告は男性用に制作されているであろうことが窺がえます。
https://x.com/EnjoCheck/status/1633337649342857221?s=20
広告の良いポイント3つまとめ
批判はありますが、この広告はターゲットである団塊世代には響いている良い広告と言えます。
理由として、3つ挙げます。
⑴ターゲット(後期高齢者男性)に刺さるインサイト
団塊世代(1947-49年に生まれ)は新聞を読んでいる人が多く、今回の広告のターゲットは団塊世代でした。なので、大前提として広告効果の目的としては団塊世代に刺さって入ればよいわけです。
ここで、刺さるコピーを分析してみましょう。
「疎まれながら、たくましく生きてきた世代」という言葉で日本で一番同世代が多く、団結を大切にしてきたターゲットに仲間意識を喚起させます。
特に「疎まれながら」という表現は共通の敵を作る構図ですから、団塊世代同世代の仲間意識は一層強まります。
「表舞台から去るのはまだ早い」「盛大な拍手をおくらせてほしい」という言葉は、社会で若者に疎まれていることをなんとなく感じていたターゲットに肯定感をもたらします。多分、団塊世代の人は、そうだ、もっと頑張ろう、今までのように強くいきようと鼓舞されたのではないでしょうか。
⑵キャッチ―なビジュアル
新聞一面にピンヒールの強そうな女性が載る訳ですから目を引きます。
「団塊は最後までヒールが似合う」という文言は、どういう事だろう?と興味を喚起させ、消費差hが注意して広告を見る機会に繋がると思われます。
⑶広告意図の発表
広告主の宝島社は、この広告制作の背景として下記のように説明してます。
批判を受けて広告意図を説明したのではなく、広告掲載時にあらかじめ意図を発表していました。
広告が誤った文脈で理解され、批判されることの多い昨今、
広告を掲載する際にきちんと明確な意図をもっているところは広告主として大変適切で抜かりない態度だと思います。
批判を減らし、意図を明確に伝える代案
上記の批判内容や、宝島社の広告意図を加味して、適切にメッセージを伝え、かつ批判を抑える広告にするにはどうしたら良いでしょうか。
若い世代も不快にさせない代案を考えてみました。
インパクトに欠けてしまいますが、ポイントとしては下記です。
・世代を分断しない
・煽らない
・広告意図の団塊世代を鼓舞する内容を保持
このように、団塊世代だからこその知恵と経験を他世代のために使ってもらえるよう鼓舞する広告だと、批判が集まらないかもしれません。
広告の良し悪しはどう評価するのか
広告炎上や批判可能性を抑えること、メッセージを適切に伝えるには、
社会背景や、ターゲットの傾向、感情など様々な要因を理解する必要があります。
広告評価を行った経験を活かし、広告内容のチェックを行っております。
もし自社広告、発信内容に不安がある方はお役に立てますので、ご連絡ください↓