『惑星の森』鬼束ちひろ
バックで静かに流れるピアノが美しいです。
ピアノの流れる水のような旋律は、深みに嵌まって飲み込まれ、こぽこぽと溺れてゆくよう。
それでもなお、溺れていたい。
貴方がいないこの世は色を失ったも同然。
サビの中で『どうかこのまま』『助けも呼ばずに』『すべてを無視して』『愛のもとにひざまづきたい』というフレーズは、歌い方も相まって、とても好きです。
終始流れる変わらないピアノの旋律。ずっと溺れたままでいたい。貴方がいないのなら、いっそ貴方のもとへ流れ着きたい。歌詞からはそのような印象を受けます。それは貴方だけに嵌まっていたい、というようにも思えるし、失った貴方を追って私も……というふうにも思えます。水の深みに嵌まるような音色は、単なる愛のイメージではなく、水の中へ身投げしたかのようです。
聴いているとあまりの美しさと息苦しさに、心地よさを覚えます。そう……この曲のテーマもまた、息苦しいのに心地よい、むしろ自らそれを望んでいる……そういうものかもしれません。
これはピアノバージョンで、アルバムに入ってるものも同じです。以前、カラオケで歌った時、曲の雰囲気が違った事に驚きました。このピアノバージョンはアレンジで、原曲があったようです。それはピアノバージョンより壮大でした。例えるなら、貴方を感じられるよう、貴方のもとへ行けるよう、私は自然に還る……そんな印象を受けます。
どちらの曲も素晴らしいのですが、私はピアノバージョンの、溺れてゆく様が好きです。
人生は穏やかに送りたいと願う私ですが、大切な人を失ってしまったら、自分はどうなってしまうのでしょう。それでもいつかは明るく前を向いて生きてゆきたいものの、この曲のようになってしまう程なら、苦しいけれどそれは美しい人生だったと言えるでしょうね。
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