私の純猥談 超々短編「金魚の恋」
夏の蒸し暑さが、夕方の日差しに交差する時間に、貴方は私を迎えにきた。
真っ白なシャツにジーンズという出立ちで、玄関先で待つ姿に気持ちも昂る。
「お待たせしました。」「待ってないよ。行こうか。」
短い会話を済ませ、手を取る。
夏の匂いと、彼の洗い立ての髪の香りで、少しだけ酔いそうになる。
少しぼーっとしていると、彼が口を開いた。
「高級な金魚みたいだ。」
黒と赤の大輪の花が咲く浴衣と、帯の上に巻いた兵児帯の所為だろうか。
「それって、似合わないってこと?」少し膨れる私に、
優しい目で「すごく綺麗だ」なんて言うから、思わずニヤける。
花火は程々にして、彼の部屋に逃げ込もう。
夏の暑さの所為にして、帯を解いてしまおう。
「ねぇ、まだ脱いでない。」
「脱がないから、乙粋なんだって。」
笑いながらキスをする。背後にはうっすら、花火が光って見えた。