Nancy Mounirのデビュー作を介して、現代に蘇ったエジプトの偉人たちに思いを馳せる。
エジプト伝統音楽を継承する作曲家が召喚した幽霊との対話のトラックで、過去と今が交錯します。
エジプト、カイロを拠点に活動するNancy Mounirは、バイオリン、ピアノ、ベース、テルミン、伝統的なエジプトの葦笛であるカワラ等の多様な楽器の使い手であり、作曲家/プロデューサーです。彼女は過去にメタルバンド、Massive Scar Eraにも所属していたというユニークな音楽的バックグラウンドも持っています。彼女は自分の人生に深く関わっているという1920年代からのエジプトの歌手と彼らの音楽生活についての研究を通して得たアラビア音楽における伝統的技術を現代に合わせて継承することに一役買っています。
彼女にとってデビューアルバムとなった『Nozhet El Nofous』はアラビア語で「魂の散策」を意味し、20世紀初頭に活躍したエジプト歌手たち(彼女は彼らを”幽霊”と呼ぶ)の情熱を現代に再び輝かせることに成功しました。
例えば、本作品で収録されている「Khafif Khafif」という曲では、当時有名であったSaleh Abdel Hayのアーカイブ録音を利用しています。亡霊の呪術的な祈りのようにも聴こえるその録音に、現代的なアンビエントのアレンジを加えて、再構築しました。擦り切れたテープのようなざらついた音質は、まるでタイムトラベルをしているかのように、その頃の反抗と開放的な空気感と熱をリアルに感じさせてくれます。また、アラブ音楽で多用される”マカーム”という微音階の旋律が使用されたこの独自の情緒的サウンドは、西洋の音楽旋律に慣れたリスナーにとって最初は聴き慣れないかもしれません。しかし、聴き慣れてきたら、この優雅で幻想的な世界にあなたは囚われていくでしょう。このエジプトの過去の魂との遭遇は、あなたに新しい音楽的経験とインスピレーションを与えてくれるはずです。