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8.観心寺 如意輪観音菩薩坐像
毎年4月17日18日のみに公開される秘仏。平安時代密教彫刻最高の仏像といわれる観心寺本尊如意輪観音菩薩坐像。
像の詳細
国宝に指定。
観心寺金堂に安置(公開は4/17・18のみ)
木造 乾漆造
像高109.4㎝
平安時代(840年頃)
如意輪観音菩薩について
如意とは如意宝珠、輪とは法輪の略で、意のままに願いを叶える如意宝珠と煩悩を打ち砕く法輪を持つことから如意輪観音菩薩の名前がつく。
これらの功徳により、煩悩を打ち砕き、あらゆる願いを叶えて人々を苦しみから救い、財宝と幸福をもたらす。
法輪・・・古代インドの武器が転じて、煩悩を破壊する仏法の象徴となったもの。
変化観音のひとつで六観音の1つに数えられ、天道に迷う人々を救うとされるが、6本の手で六道すべてに救いの手を差し伸べるともいわれている。
変化観音・・・観音菩薩が衆生を救うために相手に応じて種々の姿に変身したもの。
六観音とは
「地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天」の六道にいて、それぞれの衆生を救うという六体の観世音菩薩。
六道・・仏教において、衆生がその業の結果として輪廻転生する6種の世界(あるいは境涯)のこと。
如意輪観音菩薩の像容について
如意輪観音像が造られるようになった8世紀頃は、二臂の半跏像(台座に腰掛け、左足を垂らし、右足は左足のひざの上にのせる)が造られ、9世紀に密教が日本に伝えられると六臂で片膝を立てた姿が主流になった。
臂・・・ひじ(腕のこと)
像の特徴
長い間秘仏とされてきたため、極めて保存状態が良い。(現在でも4月17・18日のみ公開)
損傷が少なく、彩色も鮮やかなままである。
体の線はなめらかで、ふっくらとした頬と唇、柔らかな腕と指。
憂うような半眼、艶めかしく女性的な印象をうける
一木造(一本の木材から造る)で、表面に木屎漆(木の粉や繊維くずなどを漆にまぜたもの)を盛ってしあげる乾漆(漆塗り)の技法が併用されている。そのため肌の柔らかな感じなどがよく表現されている。
6本の腕という異形の姿であるが、不気味さがなく、均整がとれている。
右第1手 頬に当てて考えるポーズを取る「思惟」の相を示す
右第2手 胸前で如意宝珠を持つ
右第3手 外方に垂らして数珠を持つ
左第1手 体側に下げて掌を大地に向ける「光明山を按ずる相」
左第2手 未開敷蓮華(今にも開きそうな蓮の蕾)を持つ
左第3手 指先で法輪を支える
右膝を立てて、両足の裏をあわせるようにした輪王座という如意輪観音ならではの独特の座り方。
像が造られた背景
観心寺に伝わる9世紀後半に書かれた寺の財産目録である「観心寺縁起資財帳」によると、嵯峨天皇の皇后である橘嘉智子が、子の仁明天皇の身体安穏を祈って造立した講堂に安置されていたものだと考えられている。