窓際のトットちゃん
仕事の付き添いで、「窓際のトットちゃん」という映画を見てきました。
付き合いでも映画が見られるのは有り難く、自分で見に行ったら絶対に鬼太郎を見ていただろうところを今回、この映画を見ることができてラッキーでした。
というのも、とても完成度が高く泣ける作品で、見終わった後の満足感がとても高かったからです。涙というのも、不幸や不遇を押し出して安易に泣かせようとしている作品とは違い、何か心に響く涙でした。この感動を自分なりに残そうと思います。
まず、映画冒頭で電車を改造した教室の中で、トットちゃんが空想にふけるシーンがあるのですが、自分の大好きな世界にひたすら没頭している頭の中というのを、アニメーションならではの表現で豊かに表現していたと思います。障害者ならではの周りが見えなくなる感じを最後に机を叩いていた姿に感じました。
やすあきちゃん(小児麻痺の男の子)が、プールの中で体が軽くなり自由に動けるというシーンでも、その時の感情や身体の感覚というのを、タッチを変えた画風で表現していたのも、同じくアニメならではの完成された良さだと感じます。
内容についても、縁日で「ひよこが欲しい」とせがむトットちゃんに対して、お父さんの「縁日のひよこは体が弱いからやめておけ」という言葉に対して「一生のお願いだから飼ってくれ」と涙を流してお願いするシーン。
あの、親は「すぐ死んでしまって悲しむのがわかっているから、子供を思って親は止めている」しかし、子供はそれを望んでいないという構図から。
トットちゃんが腕相撲で、としあきちゃんを哀れみ手加減して負けてあげたことに対して、としあきちゃんから「ズルしないでよ!」と怒られてしまうシーン、そして唐突に訪れる、としあきちゃんとの死別。
それらが、ひよこと対になっているだけでなく。その中で描かれる関係も「優しさや哀れみで苦難から遠ざけようとする周囲に対しての、「手加減するな体験させろ」という叫びであり、「困難でも、周囲が作る人生じゃなくて、私の人生を歩みたい」という強いメッセージに感じました。
としあきちゃんは死別の前に、1冊の本をトットちゃんに手渡します。それは黒人奴隷の困難について?書かれたものですが、恐らく当時の屁っぴり姫を読んでいるトットちゃんからしたら、興味のない、意味のわからない本だったと思います。
しかし、その本を読むことをトットちゃんは約束していました。そんな本を、としあきちゃんのお葬式会場である教会から走り去る時に落としてしまいます。
そんなことは気にも止めず、線路沿いや町を駆け抜けて学校にたどり着くトットちゃん。そこに追いかけてきた長先生が、「これは大切なものだろう。」と問いかけながら本を手渡すシーンに私は人との繋がりを見ました。
実は、最近グループの友人がコロナで孤独死をしてしまい。それについて考えていた私には、「人は死んで消えても、それまでの繋がりは他者に残り。そしてその受け継がれたものは未来を共に生きる。」という話しに思えてならなかったのです。
お葬式で、トットちゃんが遺体を覗き込むシーンで「でも、大きくなったらまた会えるんでしょ?」と、やすあきちゃんに語りかける場面がありました。
子供、もしくは障害故に死ということに関して、理解がうまくできていないとも解釈できますが。生徒たちが疎開するため?にお別れになると言うシーンで、「友達の家の鶏はどこまで行っても必ず戻ってくる」「私たちもどんなに離れてもまた会える」そんな言葉で、トットちゃんが皆んなを励ますシーンで、としあきちゃんの席に置いてある花瓶がズームアップされていました。
単なる距離ではなく、「人間の関わりというのは時間や空間を超えて、いつまでも繋がっている。」そう言われている気がして勇気をもらい、涙が溢れました。
トットちゃんがお葬式会場から逃げる際に、表通りの商店街では戦争に向かう軍事さんに対するパレードが開かれているのですが、路地裏に入ると戦死した人の遺骨を抱いて悲しみに暮れる人や、戦争で手足を失った人が現れます。
そんな町中を走り抜ける姿に、混沌の時代の中で戸惑い、怯えながらも必死に生きる、子供や弱者の姿が表現されていたように思います。
空腹で歌を歌えば「卑しい歌を歌うな」と怒られたり、飼い犬が食糧難のために亡くなる描写もあり、戦時中という厳しい環境にトットちゃんや日本がが置かれているのが伝わってきました。
実は、この少し前に「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を付き合いで見てきたのですが、私はどうしても安易に戦争反対を叫ぶだけのヒロインが好きになれず、作品を楽しめませんでした。
戦争の負の面を描きながらも、戦争に対して安易な否定というのがないことも気持ちよく鑑賞できた理由です。
最後に、これが実話を元にした文庫本から書き起こされた内容だと知り、とんでもビックリいたしました。
やすあきちゃんは最後に何と言ったのでしょう…?
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