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ココイチしか食べない 三十日目(最終日)

結局執筆作業は朝までかかり、仮眠や気絶を挟んで書き終えたのは4月29日34時30分だった。29日中に校正に投げることができてよかった。だが「34時30分」と言って投げたのに何の反応も無くて急に怖くなったので、急遽別の友だちに連絡して校正を見てもらうなどした。結局毎回突貫での入稿になるので、ダブルチェックしてもらうのはとてもよかった。今後もこの体制でやっていきたい(鷺ノ宮を助けてくれる友人たちに嫌われるまでは…)。


そうして朝になり、昨日栞子さんを誘拐した友達のよほろさんと一旦合流した。というのもこの最終日にラストランをどこで行うか相談していた時に、まだクリアファイルが残っている店舗があるのではという話になったのだ。

桜木町店なんかは店頭の看板なんかを宣伝するツイートがよく見られていたが、流石に最終日にはなくなっていた。当然ではあるが…。
そして色々調べているうちに、元のツイートはもう消えてしまっていたが、町田成瀬店にまだ十数枚のクリアファイルがある……という情報を入手していた。


というか栞子さんと金ローを見ながら、よほろさんが執筆中にず〜〜〜〜っと検索してくれていた。なぜか?多分この週にゴールデンカムイの完結までの無料公開があり、完全に金塊を探すスイッチが入ってしまったとしか言いようがない。一も二もなく、列車に乗って二人で最終決戦の地へと向かう。気分は完全に杉元佐一、いやどちらかと言えば鷺ノ宮は白石由竹のソレだった。


そうしてやってきたのが、CoCo壱番屋 町田成瀬店。小田急線から横浜線に乗り換えて一駅、片道一時間以上。GWの真っ只中で何処に行っても大量の人にもまれる中、まるで平日のように閑散とした静かな住宅地にその店はあった。地図によればここに金塊クリアファイルがあるらしい……。

入店してすぐ、クリアファイル在庫を確認する。あと11枚あるらしい。良かった……!!あとはこれが狩られる前に、走り切るのみ。


58食目(ラスト)

最後に何を頼むかは、実はもう決めていた。

遡ること4/5の段階で、「ヒトリダケナンテエラベナイヨー」の精神そのもののオーダーをキメている人が、インターネットに存在した。見た瞬間に正直言って負けた、と思った。継続力で勝負して行くつもりではあったが、大食いチャレンジするならクリアファイルがあったときの方が絶対によかったからだ。都内に住んでいて早々に枯れることが予期できていたから、こういうチャレンジをする機会はないだろうと思っていた。
だがこうしてクリアファイルのあるお店に来たからには、いつかやってみたかった世界に挑むほかない。

そして、やるならば先人を越えなければ意味がない。


60食目


60食目  ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
フルトッピングカレー&サラダ&ドリンク


圧巻

ビーフカレー1辛300gをベースに各種煮込みトッピングを加えた一皿と、小皿トッピングが4つ。揚げ物類の別皿、そしてドリンク4杯とサラダが5皿。その一部かのように栞子さんを並べ、一緒に最後の写真を撮った。

チーズややさいトッピングなど、おすすめセットで被っている子もいたがそれらは1つのみオーダーしている。揚げ物類は何かあったときに持ち帰れるよう、店員さんが気を遣って別皿に用意してくれていた。というかオーダーの時点から嫌な顔ひとつせず、時間がかかってしまって申し訳ないです、とこんな意味不明なオーダーにも関わらず丁寧に対応していただいた。


ちなみにこれでぴったり7000円ジャスト。キャンペーン担当者がここまで理解っていておすすめセットを組んだのではないと思うが、これはマジでスゴい。注文書をわざわざ席まで持ってきていただいたのもありがたかった。


そして何より会計前の段階で、席までクリアファイルを7枚持ってきていただいた。ありがとう町田成瀬店の店員さん……。あとはこれを、目の前のカレーを集中して食すのみ。

行くぞ!!


……辛い!!
スタートダッシュの時点で辛さと熱さが口内を襲う!そうだ、これはベジカレーではない。ビーフカレー1辛をベースにしているからそもそも辛いのだ。小皿系系を混ぜて食べようとするが、煮込み系のトッピングが多すぎて全然混ぜる余地がない……!
スクランブルエッグの周辺から切り取りつつ、揚げ物のフィッシュフライを食べていく。上に乗ったトッピングを崩しつつ、サラダにも手を付ける。この量のサラダはまあまあ無理だが、ライスの代わりにすればいけるか…?

こんな量を食べきれるのでしょうか……と心配そうな栞子さん

とにかく熱さと辛さが、ベジカレーを期待していた身体にダメージを与えていく。走り出してしまったからには詰め込まなければならないので、小皿系のトッピングを駆使して温度を下げつつ咀嚼していく作戦に切り替える。水も少量のみ、空気を入れすぎないようにしながら胃へと収納していく。大丈夫だ、思い出せ、MAX鈴木さんのyoutubeチャンネルを見ていたあの日々を。深夜に動画を見るたびにお腹を鳴らしていたあのときの気持ちを……!!

金塊の隣で鷺ノ宮を心配する栞子さん


そうだ……栞子さんの前でダサい姿は見せられない!!スクールアイドル同好会部長として……「あなた」として……



今 ここに


命、燃やすとき!!







無理なもんは無理


わかってた、わかってたよ。だってこの一月カレーしか食べてないんだもん。多くも少なくもないカレーを、次の日に影響が出ないよう、食べ過ぎないように注意しながら食べてただけだもん。
先人のくま樽さんでさえライス量は200gに押さえてのチャレンジだったのに、7000円ぴったりだったからという理由でライスは300gにしてるし、サラダとドリンクまであって鷺ノ宮1人の力で倒せるはずがなかった……。

だが幼少の頃通っていた、忍術学園の教えである「お残しはゆるしまへんで」の精神に則って、時間をかけて食べていく作戦に切り替える。メイン皿はここで止まってしまったが、よほろさんと雑談しつつゆっくりと食べていく。サラダは熱さこそないものの、炭水化物と違ってある程度噛まないと飲み込めないのでマジでキツかった。よほろさんの助けも借りてシェアしつつ(サラダ二皿食べてもらった)、持ち帰りできなさそうなサラダ全てとドリンク、そしてカレー皿を全部空にした。


揚げ物はフィッシュフライだけ食べたが、ビーフカツ・手仕込みとんかつ・クリームコロッケ(かに入り)、パリパリチキンは持ち帰らせていただいた。ソースまでつけていただいてありがたい。後日ちゃんと使って食べました。食パンで。


店を出る頃には、完全に日が暮れていた……というか4時間くらいお店で食べていた。ファミレスじゃないんだぞ。本当に嫌な顔ひとつせず、笑いながら対応してくれた町田成瀬店のスタッフの皆様ありがとうございました。



終わりに

少しだけ昔の話をする。
20年前、シスター・プリンセスというコンテンツがあった。

電撃G'sマガジンでの誌上企画から始まって、ゲームやアニメへ展開されたこの作品は、インターネットのオタクたちに熱烈歓迎されていた。その頃主流だった日記型のテキストサイトで、それぞれ心に妹を持つ「兄」たちが自分の日常を面白おかしく書いていた。どれも本当に面白かった。その頃のサイトは今も生きていたり、ドメインが売買され中華系広告がハチャメチャに貼られたサイトになったりしている。

だが当時義務教育の真っ只中だった鷺ノ宮には、100%楽しむことのできないコンテンツだった。DVDも本も買えない、アニメもリアタイできない、ゲームだって親にバレるのが恥ずかしくて、部屋でテレビに布団をかけてイヤホンでプレイしていた。トレーディングカードもパックなんてとても買えず、池袋のK-BOOKSの中古パックを買い漁ってはパズルカードが揃うことを祈っていた。絵も描けないし小説も書けない、同じくらいの情熱を持つ友達もいなかったと言っていい。

鷺ノ宮はラブライブ!サンシャイン!!の、Aqoursのライブにはじめて行くまで、なぜかラブライブ!のことをずっと無視していた。シスター・プリンセスと同じ公野櫻子先生を原案とするコンテンツであることに気づいたのは、ライブから帰って無印のラブライブ!を見始めてからだった。

そして、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会に出会い───三船栞子さんと、出会った。

アニメ2期の放送が始まる直前、鷺ノ宮は考えた。そして心を決めた。あの時、シスター・プリンセスに燃やしきれなかった情熱を、オタクとしての魂を、この期間に、この作品に全部賭けると。燃え尽きて散って灰になるとしても、アニメが終わって周りから話題が減っていっても、「あの時もっとできたはず」と思わないくらいに。


冒頭にも書いたとおりだが、このキャンペーンの速報を見た瞬間、鷺ノ宮はキレた。
A賞、各メンバー30個限定のぬいぐるみ。手に入る訳がない。ミアちゃんとランジュちゃんのもちドルはこれが初という事にも怒っている。

カレー以外の日常部分で三船栞子さんのグッズを買っていたとおり、鷺ノ宮はできる範囲で栞子さんのグッズを集めている。
……全てを諦めて見なかったフリをするのか。後からなんとしてでも入手するのか。
少し考えてから、決めた。もしこれで手に入らなかったとしても、やりきったと思えるくらいに、この期間中に頑張ろうと思った。
その模様を記録に残そう。あの頃好きだったテキストサイトのように、バカみたいな生活を、栞子さんへの愛を込めて書こうと思った。

スタンプのためにやっていると言うのは、ちょっと気が引けた。当たらなかったときに傷つくと思ったからだ。だけど今なら言える。あの頃、スタンプがほしいがために、食費の全てを注ぎ込んでカレーを食べ続けていたんだと。

これまでココイチは行ったことのない店だったし、ナンのインドカレー以外を外食することもなかったが、トータルいいお店だったと思う。どの店も店員さんの雰囲気が良かった。単価が高い分かメチャメチャにヤバいお客さんに出会うこともなかったし、漫画を読んだり考え事をするのにもちょうどよかった。
何よりベジカレーという超うまいカレーに出逢えたことが嬉しい。もっと推してほしいと思うのだが……それはまた別の話になるだろう。

一緒にカレーを食べに行ってくれた友人たちと、面白がってくれたインターネットのみんな、それから全てのココイチに、心からのありがとうを。


最終結果


スタンプ 84個


……おれは、やりきった。


二ヶ月分の食費を一月で使い切ってしまったので、五月中は食パンオンリーで過ごします。これからライブとかもあるしね。
カラダ もってくれよ!!


(おわりです)



(……この時書いてたアイマスの小説はBOOTHで取り扱っています。ラブライブ!の話しながら書いていたのがアイマスなの格好つきませんね。でもいい小説です)


(ほんとにおわりです)

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