エレベーターに閉じ込められた話

金曜日の夕方にあった
まぁまぁな規模があった地震で
急いで立体駐車場に停めてある
自家用車の元に行こうとしたため
エレベーターに閉じ込められてしまった。
僕ではなく母が。
最初は自分もエレベーターに乗って
車が停まってるらしい六階へと
目指していた。
子連れの母らしき人も同乗しており
その人の目的階である
3階に差し掛かろうとした時
俺のスマホがけたたましい
音色を上げ始めた。
そう地震速報である。
鳴り始めたのは室内だったし
全然揺れてもなかったので
「ミスか...?」
と一瞬思ったが
大事を取って子連れの方と同じ階に降り
びっくりしましたねー
などと呑気に談笑していると
かなりデカい横揺れが始まった。
3階だったので結構揺れたが
さすが日本と言うべきか
特にどこも崩れることなく
揺れは収まった。
結構揺れましたねー
なんて同乗者のお母さんと
会話を交わしながら
一旦外に出て安全なところに行くことにした。
と、その時
車と車が正面衝したような音がして
周りの人がざわめき出した。
エレベーターが止まったらしい。
何とまぁギリギリのところで脱出できたなと
安堵するも
そうだそうだ、母親も一緒にいるんだった。
駐車場で精算をしに行った母は
今どこにいるだろうか。
電話を鳴らしてみた。
3コールほどで出た。
「もしもし?大丈夫?」
少し息を荒げた母が電話に出た。
少し嫌な予感がした。
「エレベーターに閉じ込められた。」
え....?
自分よりも後に駐車場に向かったはずの母が?
何で?
「焦ったのが悪かった、ごめん」
矢継ぎ早に続ける。
いや、謝られても...
何で乗ったの?
というかさっきのデカい音は?
答えのない疑問がばかりが頭に浮かび
グルグルと回り出す。
どうやら、急な地震に急いだ母は
安否LINEに返事をしない俺の身を案じ
急いでこっちに向かった際に
エレベーター、ズドーン
という流れらしい。
幸いエレベーターには
もう一人閉じ込められており
一人にはなっていないようだった。

電話を繋ぎながら
中の様子も確認していくと
最初は繋がりもしなかった
サービスセンターも
徐々に会話ができるくらいには繋がり
こちらに救助隊を呼んだ
とのことだった。
その言葉通り、2、3分後には
警察らしい人が来て
エレベーターを何やら調べていた。
因みにその間
隣のエレベーターはフル稼働しており
バンバン人を乗せていた。
無論すぐに両方封鎖されていた。
警察官が来た後は
駅の職員さんらしき人、
警察のもっと偉いっぽい人などが
駆けつけ。
エレベーターのスイッチの下にある
鍵穴に鍵を挿したりして
非日常感で覆い被された。
その鍵は挿した後は
特に回したりはしていなかった。
しばらくして
「エレベーターの向こう側から叩く音がする!」
と救助の光が見え始めた。
が、その後何の音沙汰もなく十分ほど経過し
程なくして母は脱出した。
俺はこの謎のノック音は
エレベーターの神様なんじゃないかと思ってる。
その後、顎マスクたぬきちこと
リーダー格っぽい警察の方から
事情聴取を受け
この事件は幕を閉じた。
その後、夕方のプチプチニュースとして
紹介されたのは言うまでもない。

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