AIエージェント元年:スタートアップ転職4年間を少しだけ振り返る。
少し時間が空いてしまいましたが、10月28日に42歳になり、11月でZEALSに転職して丸4年が経過しました。転職してから忙しくなかったことは基本的にないのですが(苦笑)、10月末からは記憶を飛ばすほどの忙しさで、熱量ある仲間たちと支え合いながらなんとか年末年始に燃料ギリギリでたどり着いた、そんなスタートアップ4年目を過ごしてました。
2024年は本当に色々あった年でして、私生活でも年始から心臓が痛くなったり(軽い狭心症のような症状であることが判明し今でも薬は接種する毎日)、1年も住んでいない千駄ヶ谷のマンションの天井は腐れ落ちて引っ越しを余儀なくされたり、まさに厄年な一年でした。
年末年始ということもあり、たまには今の気持ちなり状態なりを正直にテキストにして見たいと思います。(ジールスではボードメンバーとしての発言を意識していますが、本エントリではどちらかというとスタートアップに転職した一個人として発信させて頂きます)
スタートアップは結局「起業家」のものか?
4年前。ジールス転職前に、とある尊敬する人にこのような問を投げかけられたことがあります。当時も明確な答えを持てていなかったし、今も確定的なことは言えませんが、とはいえ「スタートアップ企業の大半は起業家(CEO)によって決まる」ものだなとは改めて思ってます。ちなみにネガティブな意味ではもちろんありません。
投資家の皆様は常に起業家を見ているし、メディアの方もそうでしょう。最も大きなリスクを取るのも起業家だし、最もハイプレッシャーにさらされるのも起業家、創業者なんだと思います。多くの人に会うし、裏切られるし、いろんな期待をかけられ、意思決定し、いろんな問題が降りかかり、それらを解決していく。そんな環境の中で起業家はモンスターのような強くなっていくし、どんどん視点・目線が高くなっていく。
スタートアップにおいて誰が一番成長するのか?と問われたら、それもまた起業家なんだと思います。仲の良いスタートアップで働く後輩が前職時代にふと「結局社長が一番成長しちゃうんですよね」と言っていたことが何故か耳に残っていますが、多くの場合これはそうなんだろうなと。僕もアラフォー人材として一生懸命働いてはいるんですが、代表の成長速度と比較してしまえばまだまだ過ぎるなと反省の毎日です。
スタートアップで身につくのは「不確実性対応力=なんとかする力」
スタートアップは起業家のものであり、最も成長するのも起業家だとするのであれば、なぜわざわざリスクを取ってまでスタートアップに転職する必要があるのか?
それは不確実性対応力であり、僕なりの言葉でいうと「なんとかする力」が身につくからだと思います。(前提として成し遂げたいVISIONへの共感や合致性等があると思いますが、ここではあえてそこをdigらずキャリア論的に話を整理したいと思います)。
スタートアップらしいスタートアップで、スタートアップらしい起業家のそばでとにかく食らいついていくことで、この力は間違いなく身につくと思うし、他の環境ではなかなか身につかない類の能力ではないかと思っています。(ちなみにその他の正統なポータブルスキルは大企業のほうが身につく可能性は高いのではないかと思います)
2006年に新卒でサイバーエージェントに入社し、2020年からジールス。20年弱の間、インターネット・デジタル関連ビジネスに身をおいていますが、とにかく変化が激しいし、安泰だと思われていたスキルの陳腐化する様をたくさん見てきました。新しいテクノロジーが登場すれば新しいスターが生まれ、一つ前のトレンドに乗っていた人の多くは過去の人になる。実際僕も「過去の人認定」されたことがあると思うし(「あ、昔admanっていう勢いのある若手がいたよね」みたいな感じ笑)、そうした中で唯一心の平穏を勝ち取れるのは、変化に対応し、いま目の前にある課題や問題をなんとかすること。そしてそうした力を身につけること、それでしかないんではないかと思っています。
「正論の暴力」になびかず、「肯定力」を重視する。
ではスタートアップに転職すれば、就職すれば変化対応力=なんとかする力が身につくかというと、さすがにそう甘くありません。少なくても1つ条件があると思います。それは肯定力、YESという力だと思います。
これは当然、YESマンになろうぜ!ということではもちろんありません。(ちなみにここで言う「YESマン」とは否定的な意味を込めて、自分の評価を気にして何でもかんでもYESとする人と定義します)基本的なスタンスとして、起業家、CEOの意思やVISIONに肯定的な態度・スタンスを取り、その方向性を強める力を肯定力としたいと思いますが、これが本当に重要です。
この点について、実は入社当時にnoteに記載していて、ここに記載していることはこの4年間でより強固に、信条に近いレベルにまで強化されてきています。ちょっと当時の文体がイラっとするのですが笑、御愛嬌ということで引用してみます。
スタートアップの毎日は変化の連続です。昨日決めたことが、今日覆ります。制度も整っていないし、人材にもムラがあります。だから「否定的な立場」を取るのは簡単なんです。これはこの前サイバーから他のスタートアップに転職した人間らとも話していたのですが、結構スタートアップあるあるだと思います。
「否定なんかしないよ」という方も、油断すると「正論の暴力」を振りかざしてしまい、いつの間にか「NOマン」になっていることもあります。スタートアップにおいて、正論を振りかざすこともとても簡単だし(あらゆることが足りてないので)、正しいことをしている風なので本人も気持ちがいい。
僕もサイバーエージェントに入社した当初、この「正論の暴力振りかざすマン」でした。なんでこの会社はリスティングばっかりやってるんだ!もっと包括的な広告提案をすべきだ!とか、よりナショナルクライアントを相手にするのであればTVCMも扱えるようにすべきだ!とか、もっともらしいことを言って当時の上司を困らせていたと思います。(結果CAはデジタルに特化した強みを作ることで、広告代理店ランキングを駆け上っていったので僕の正論は愚論だったと言えます)。特に賢い(と思っている)人にこの傾向は強く、べき論で現在の組織を語りがちな人は注意が必要ですし、そもそもそうした「べき論」を振りかざしてユニークなスタートアップを普通の会社にしたくてスタートアップに転職したわけでもないと思います。
僕もこの4年間で幾度となく「正論の誘惑」に駆られることがあったし、たちの悪いことにその正論はたまに本当に正しかったりもするのですが、「俺は『べき論』を振りかざしてジールスというユニークなスタートアップを普通の会社にしたくて転職したわけでもない」と言い聞かせて軌道修正しています。
眼の前で無限に入れ替わる現実や事象に対して、否定的なメガネや正論のメガネではなく、とにかく肯定のメガネで対応していく。当然無駄打ちもあるし、全く日の目を見ないアイデアもあったりはするけど、そうしたことの積み重ねこそが「なんとかする力」に磨きをかけていってくれる。
僕自身、当面ジールスという会社を辞めることはないと思いますが、この力を磨いていけば、一生楽しんでいけるなという感覚を掴むことができたのはこの4年間の財産の一つです。
「素直でいいやつ」採用は理にかなっている。
ジールスに転職してから、前職のサイバーエージェントの幹部の皆様が言っていたことが身にしみてわかる、理解できることが多くなっています。
上述した「肯定するところから入る」というスタンスは、当時上司であったサイバーCHOの曽山さんから頂いたアドバイスだし、同じくらい今重要だなと思っているのが「素直でいいやつ採用」です。
今はどうかわかりませんが、サイバーエージェントはずっと「素直でいいやつ」という(外から見ると)謎の採用基準を大切にしてきました。
外から見ると、「会社のいうことを聞くやつだけを採用するのか」と思いがちですが(当然「正論暴力マン」だった私はこの基準に否定的な立場でした苦笑)、これも今あらためて理解すると「肯定力の高い人材を取ろう」ということなんだと思います。
変化の激しいベンチャー・スタートアップにおいて、高肯定力人材比率を高めることはとても重要です。重要ですし、せっかくリスクを取ってスタートアップに参加するのであれば、ブレーキではなくアクセルになりたい。そういう気持ちでここ数年、肯定力を胸に日々仕事をするようにしています。
実際、常にNOを言っている人のNOよりも、YESを言い続けている人がたまに発するNOのほうが意味や効力を持ちますし、変化に直接的に寄与します。そういう意味でもYESというスタンスは重要だと思います。
AIエージェント元年。
この年末、忙しい中でもたくさんの方とお会いし、お話させていただく機会がありました。そうした時間の中で、何回か言っていただいたありがたい言葉の一つが「渡邊は起業しないの?」というものです。
幸いなことに友人に起業家が多い環境ですくすくと育っているため、身近に感じることが多い「起業」というものですが(それでも自分が起業すれば成功するぜ、なんて簡単には思っていません)、弊社代表の清水を見ていると、当面起業することはないだろうなと思ってます。少なくても今自分が起業して清水(とみんなで)が創ったこのジールスという会社を超える企業を作れる気がしていません。
ちょうど本日清水のアメリカでの挑戦についてnoteが公開されています。ぜひまだの方は読んでいただきたいなと思っていますが、こんなに挑戦に挑戦を重ねている起業家を、少なくても僕の周りでは他に知りません。
起業家としてVISIONを掲げ、そのVISIONに対してまっしぐらに突き進んでいく姿勢は感動すら覚えますし(たまにその突き進み方がブルトーザー過ぎてイラっと来るときもありますが笑)、この人が行くとこまで行ったらどんな景色を一緒に眺めることができるのか、普通に楽しみです。
今年はジールス的にも、世の中的にも「AIエージェント元年」。このコンセプトに行き着くことができたのも、起業家が一心不乱にVISIONに向けてひたすら爆走し、それを支えるみんながYESの力でブレーキをかけることなく会社一丸となって突き進めたからだと思います。
自身がブレーキとなるのではなく、アクセル・レバレッジとなりとにかくコトを前に進めていく。そうした原動力として2025年も駆け抜けていきたいと思います!本年もみなさん、よろしくお願いいたします!
最後に重要なことなのですが、現在様々な職種で積極採用中です!われこそはという方、ぜひ渡邊までご連絡ください!
https://www.linkedin.com/in/admandaisuke/