事実と真実は違う
事実と真実は違う。
結構前の話だけど、コーチをしている学校に鳥越俊太郎さんが講演に来た時、この言葉を初めて聞いた。
それまでこんなこと考えもしていなかったから、これを聞いた時はかなりハッとした覚えがある。
それ以来、僕の中でモノの見方や考え方が大きく変わった。
事実 ⋯ 実際に起こったこと、目の前で目に見えていること(もの)
真実 ⋯ そうなった理由、その裏に隠されている背景、そうなるまでの経緯
自分はこう解釈しているけれど、これは人によって違うかもしれないな。
「シーンではなくストーリーで」と、コーチ仲間の鬼木さんもよく言っていた。
これは至言だ。サッカーだけでなく、きっとどんなことにも当てはまる。
シーン ⋯ 事実
ストーリー ⋯ 真実 と言い換えられるだろう。
事実と真実は違う。
事実ではなく真実、シーンではなくストーリー。点ではなく、線を見なければいけない。
見るというか、、
そこに想いを馳せる、想像を働かせる、そして本当に真実を知ろうとすることが大事じゃないですか。
事実ばかりを見ていないだろうか。
目の前に見えているものだけで判断し、安易に言動していないだろうか。
そこに至るまでの経緯、理由、背景に、少しでも想いを馳せてみたのだろうか。
という人に、なぜか最近やたらと会ってしまっている。会って、じゃない。遭ってしまっている。
もどかしい。かなりもどかしいし、歯痒い。
サッカーのプレー中、選手が何かミスをしたとしても
そのミスはなぜ起きたのか、その選手よりも前に、他の選手のプレーに原因があったのではないか
その選手自体はどういう準備をしていたのか、そしてどんな準備不足でミスを招いたのか
そもそもミスなのか。
それらをよーく 観察、想像、思考 してからじゃないと、安易に声はかけられない。
お世話になっている整骨院の院長先生いわく
身体のどこかに痛みや不具合が起きたとして、それはどこか他の部位に問題があって、結果として今、その部位に痛みや不具合として表れているだけなのだと。
つまり
結果 = 原因 ではないってことですよね!
それを、僕らコーチはつい見逃しちゃう。
目の前で起きたことだけに反応して、そのミス自体を責めちゃたり。
原因や問題はきっと、他の部分やもっと前にあったはずなのにね。
「ミスする人は、たいていその前の準備でミスってる」
(バナナマン/設楽統)
ミスだけじゃない。サッカーで言えば、今、ピッチで起きている現象(試合の流れや相手とのマッチングの仕組み)= 事実。
ではそれを生み出している真実はどこにあるのかを、よくよく観察して見抜かなければいけない。
選手が、例えば「やる気がない」という趣旨の発言をしたとする。
でもそれ、本当に本心で言ってるのか。その背景には何があったのか。こういう場合、ほぼ「事実と真実は違う案件」だ。経験上、そう。
文章を読むことでもそうですよね。別にTwitterでもいいけれど
そこに書かれてることをそのまま表面上だけで「見て」しまうだけで反応してしまうような人と、そこにある行間、文脈、背景を「読もう」とする人。
僕がことあるごとに「指導者は本を読むべき」って言うのはまさにこういうことで
そこに隠されている本当の「真実」を読み取ろうとする 想像力、好奇心、探究心、思慮力。
人に接する仕事をしているならば、これら必須アイテムだと思うんです。
以前、女子大生が自分の祖母を殺してしまったという事件があった。
ぱっと見、これだけ見たら「祖母を殺した女子大生」が事実。
「何て酷いことをするんだ」となるだけ。
でも、真実は違った。
事件を起こしてしまった彼女は、この祖母の介護を自分の両親に押し付けられ、生活費はもちろん、学費もアルバイトで稼がざるを得ない毎日だった。両親は何もしてくれない。家事も介護もアルバイトもしなければならないから、満足に大学にも行けない日々だった。
そしてとうとう、耐え切れずに事件を起こしてしまった。記事で見た限りでは、今でもこの両親は、彼女に責任を全て押し付けようとしている。
一体、一番悪いのは誰なんだ?となるじゃないですか。
残念ながら彼女は実刑になってしまったけれど、こんなの、情状酌量で執行猶予がつくべきだよ。
数年後に訪れるであろう彼女の第二の人生は、どうか、どうか、幸せなものになってほしい。そう願わずにはいられない。
事実と真実は違う。
これからも、物事や人の言動の裏にある本当の真実に、想いを馳せることができるような自分でありたいと思う。
こういうこと言ってる僕も、まだまだ事実ばっか見ててミスばっかだけどなー。
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