文系のための超基礎医薬講座2「血液はどうして固まらないの?」
こんにちは、くらです。
文系出身でMR(医薬情報担当者)や医療翻訳を目指す人のために、医薬の超基礎をお話していきます。
私は、ある外資系製薬企業で、MR教育を約25年担当してきました。その中には、文系出身者も多くいました。
そこでの経験を、これから医療関連の仕事を目指す方々のためにお伝えしたいと思います。
といっても、目指している人はかなり勉強されていると思いますので、私が新人MR教育で、これは基礎中の基礎だけど、なかなか知る機会がないことだなと思ったことを紹介していきたいと思います。
前回に続き、血液の凝固の話です。
今回は「血液はどうして固まらないの?」です。
血液はどうして固まらないの?
前回は固まる、今回は固まらない、どういうことか。
出血したら血液は固まります。
では、出血していないと、どうして固まらないのか。
血管を流れる血液は、ずっと固まらずに流れています。
これが固まってしまうと、組織に水分や栄養分が届かず、命は存続できません。
では、なぜ身体を流れている血液は固まらないのか。
こたえは、「血管の中を流れているときは固まらない」、です。
血管の内側には、血管内皮細胞(vascular endothelial cell)という細胞が隙間なく敷き詰められています。
そして、この細胞上に、様々な凝固阻止因子が存在する(植物のように内皮細胞上に生えている)。トロンボモジュリン(TM:thrombomodulin)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA:tissue-type plasminogen activator)、トロンビン(thrombin)と結合して凝固を抑制するアンチトロンビン(AT:antithrombin)が結合しているヘパリン類、などが血管内皮細胞上に存在し、常に凝固を防いでいる。
これらの凝固阻止因子は、凝固促進因子とバランスを保ちながら、血流を一定に維持している。
そして、凝固が必要以上に活性化しないように、身体の中では線溶機構が働く。
線維素溶解(線溶)
血管の損傷が修復,治癒した後は,血栓は除去されなければならない。
プラスミノゲンが,組織プラスミノゲン活性化因子(t-PA)により活性化されて,プラスミンになる。
t-PA は,血管内皮細胞で産生されて,循環血液中に分泌される。
プラスミンは,フィブリン・フィブリノゲン(fibrin / fibrinogen)を分解し,血栓を溶解する。
その結果,フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP:fibrinogen/fibrin degradation products),D-ダイマーが生成される。
線溶系の亢進を防ぐため,α2-プラスミンインヒビター(α2-PI:α2plasmin inhibitor),プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)が存在する
(抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロックガイドライン 抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロック:総 論より)
上記を説明するのが、凝固カスケードです。
XII因子は接触因子とも呼ばれ、ガラスなどに接触するとすぐ活性化して凝固を開始するきっかけとなる因子です。
活性化は activated のことで、XIIaのaを意味します。つまり、血液中を流れているXII因子はそのままでは何の働きもしない。でも、何らかのしげきによってXIIaとなり、他の因子を活性化します。
そして、最終的にフィブリンを作るのです。
血栓の大本はフィブリン
必要のないフィブリンは線溶によって溶かされる。
血液中には血液を固める凝固因子と、固まった血液(血栓)を溶かす線溶因子があり、バランスを取っている。
プラスミンは、固まった後のフィブリン、フィブリンになる前の、血液中を流れているフィブリノーゲンのどちらも分解する。
このバランスがくずれると、血管内で凝固が促進し、様々な病態となって発症する。
人間の身体は、本当に奇跡のようにできてます。
身体の中のタンパクが自然にこのようにバランスを保って我々の命を長らえてくれる。
改めて、人間はすごい!と思ってしまいます。