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【プロスピ2021架空選手】#1 縁の下から花形ストッパーへ 広島・坪内将俊
ドラフト指名(2022年)
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この年の広島は、ドラフト1位で即戦力投手の獲得に成功する。名は坪内将俊。その年の社会人No. 1投手であった。「今すぐうちのブルペン陣の一角を担える。」と広島はその能力を高く評価し、他球団とのくじ引きも辞さない構えであったが蓋を開けてみるとなんと広島の単独指名。彼の能力を信じて疑わなかった広島スカウト陣は嬉しさ反面他球団の指名回避を訝しんだが、入団早々そんな彼の素質の一端が判明する。
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なんと彼、1年目からまさかのコーチに向いていない判定を受けてしまう。彼の持ち味は様々な方向にぐにゃぐにゃ曲がる変化球であるが、他の人には彼の鋭い変化球の秘訣が分からなかったのだろう。もしかしたら彼は天才型なのかも知れず、そこを他球団は敬遠したのかも知れない。別にコーチに向いていなくたって、選手として大成してくれればそもそも何の問題もない。そんなこんなで、坪内のプロ野球人生はスタートした。
2023年シーズン(1年目)
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坪内は順当に開幕一軍入りを果たすと、スカウトの見立て通り救援陣の欠かせないピースとなった。1年目から43試合に登板し防御率は1.70と、社会人No. 1投手の名に恥じない活躍を見せた。これほどの防御率を残しながら登板は43試合にとどまっており、首脳陣からしっかり優しくしてもらった…ようにみえるのだが、なんと彼、63回2/3を投げているではないか。イニングまたぎを全く苦にしなかったのである。これも七色の変化球をあやつる天才性が所以か。抑えた次のイニングは失点しやすいなんてジンクスは、彼には気にならないことなのかも知れない。チームは63勝75敗5分で最下位に沈む。坪内は2年目のジンクスも躱し、チーム浮上に貢献できるか。来季年俸はたったの1900万円。いくら最下位とはいえ、1年目からこれだけ頑張ったルーキーに厳しすぎである。
2024年シーズン(2年目)
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坪内には2年目のジンクスなんぞ気にすることはなかったのか今年も元気に1年間一軍完走。ブルペンの席の一つを守り切った。ただなぜか、首脳陣は登板数だけやたら過保護なのか今年は昨季を下回る33試合登板。ただイニングについてはあまり気にしてないらしく、投球回が試合数を大幅に上回る45回2/3。昨季ほどではないものの、今年もしっかりイニングまたぎを担っていた。今年は打たせて取るスタイルにシフトチェンジ。効率よく打者を打ち取り、長いイニングを投げるためのものか。このスタイルがしっかりハマったのか防御率等の各指標は昨季より改善されており、年間通じて被本塁打はゼロ。リリーバーの鏡である。チームは59勝80敗4分の5位。この成績でよく最下位にならなかったなと思えるが、この下には勝率わずか.397の中日が待ち構えていた。救援防御率もリーグ5位の中でなぜ監督が電話で坪内の名を告げないのか、不思議なものである。年俸は何故か400万円減の1500万。坪内のチーム愛は下がる一方であるが、当然である。
2025年シーズン(3年目)
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この年も当たり前のように一軍でシーズンを完走し45試合登板。投球回がその数字を上回るのも最早お馴染みの光景と化しつつある。ただ一つ気になるのは、各指標が過去2年を下回っている点である。ただ例えば防御率にしろ、一軍の中継ぎ投手としてなんら恥じる数字ではないことは間違いないのだが。被本塁打1はさすがである。チームは62勝76敗5分と昨季より数字をやや改善させたものの最下位に沈んだ。坪内がモチベーションを見出せないシーズンだったとしても当然のことである。3年間の勤続疲労だってあるだろう。年俸は300万減の1200万。いい加減理解不能である。
2026年シーズン(4年目)
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この年の坪内はとにかくイニングを跨ぎまくった。プロ入り後最多の48試合に登板し71回2/3を投げた。救援陣の中で彼の次にイニング数が多かった松本ですら63回なのだから、彼の特異性が伝わってくる。四球率の数字が年を経るごとに落ちているのは唯一と言っていい不安であるが、全体的な数字を去年より良化させており、契約更改で受けている仕打ちを知っている広島ファンは涙が止まらないことであろう。一体彼のモチベーションはなんなのか。FA権でないことを祈りたいが、首脳陣に祈る資格はないように思われる。チームは59勝78敗6分で5位。毎年率を残せない打線が原因なのだが、もしかしたら暗黒期突入かも知れないとファンは頭を抱えていた。年俸は200万増の1400万円。広島フロントが何を年俸算出の基準に据えているのかはさっぱり不明である。
2027年シーズン(5年目)
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この年の坪内は珍しくあまりイニングをまたがず、41試合に登板し50投球回であった。ただホールド数はプロ入り後最多の9ホールドとなっていたため、やや厳しい場面で投げさせる回数を増やした首脳陣からの配慮だったのかも知れない。過保護もいいとこである。ただ防御率はプロ入り後では最も良くない2.70。十分良い数字ではあるのだが、1・2年目の頃の防御率1点台の姿を思い返してしまうファンもいるかも知れない。ただ最早奴隷契約と言っても差し支えない状況の中で毎年当然のように一軍で投げてくれる彼に、そんなことを口に出して言えるファンがいるはずもなかった。チームは60勝77敗6分で最下位に。坪内が大舞台で投げている姿を見たいと願うファンも少なくなかったであろう。年俸はまさかの400万ダウンの1000万円。おそらくフロントは投球回以外見ていないのであろう、なんだこの中継ぎ軽視は。おおよそ戦前の野球である。
2028年シーズン(6年目)
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この年は昨季をさらに下回る30試合の登板となった。怪我での離脱もなく今年も一軍にフル帯同したが、とにかく電話で呼ばれなかったのである。イニングまたぎもそれほどしておらず投球回は38回1/3であった。2年連続で防御率が坪内比では高めに推移しているが、登板間隔がある程度空くことへの難しさなのだろうか。得点圏被打率が0.273と今年は高かったのも気がかりなポイントである。まあ何に関しても文句は言えないが。チームは65勝74敗4分で5位。ここ数年は隔年で最下位になっているだけに、来年が心配である。投球回しか見ていない疑惑のある広島フロントの査定が心配になるところだが、年俸は現状維持の1000万。何か坪内にお金を渡したくない理由でもあるのだろうか。
2029年シーズン(7年目)
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この年の坪内はここ数年の落ち着いたピッチングを払拭する、目の覚めるような快投を見せた。38試合48回1/3を投げ防御率は2年目以来となる1点台の1.49。それ以外の数字もすさまじく、まず5勝0敗と勝ち星にも恵まれていた。被打率も同じく2年目以来となる1割台。奪三振率も突如8を超える数字を出した。彼の優れたコントロールと組み合わさりK/BBは脅威の6.14を叩き出した。まあ阪神に同数値10の石川直也とかいうバケモノはいたのだが。だが彼の一番のサプライズは、得点圏で打たれたヒットはわずか1本だったことだ。得点圏被打率に直すと0.03。最初は誰もが見間違えか小数点の間違いだと思ったに違いない。チームは70勝66敗7分で久しぶりのAクラスである3位に入った。チーム打率リーグ最下位ながら本塁打数はリーグトップのウホウホ長打マン打線が作ったリードを、リーグトップの防御率を誇るリリーフ陣が守り切った。坪内を含め防御率1点台のリリーフ投手は4人。ブルペンに何か特効薬が施されたのであろうか。ちなみにCSではファーストステージで阪神にストレート負けしていた。この年FA権を取得した坪内にファンも覚悟を決めていたが、蓋を開けてみれば年俸3300万円で2年契約を結び残留。ことごとくフロントにとって都合のいい投手である。
2030年シーズン(8年目)
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この年のシーズン開始前、衝撃的なニュースが広島の街を駆け巡った。「坪内、ストッパー転向。」前年オフ、それまでチームの守護神を務めてきた宋家豪が退団。その穴を埋めたのは、まさかの坪内だった。ピンチになっても崩れず一発の心配が少ない、プロ入り後から今まで一度も長期離脱がない点など、彼を守護神に推すに足るデータはあったものの、それでも突然すぎる。確かに毎年数個セーブをあげることは今まであったが、それは首脳陣が3イニング投げさせるせいであり、この数字があるから守護神でも大丈夫!というのは見当違いもいいところなのである。ファンは彼の雑な扱われ方に心を病んでいた。しかし元来彼は様々な変化球を縦横無尽に曲げ、契約更改でハンコを押す際に年俸の数字を見ていない宇宙j…天才投手なのである。我々の心配をよそに、坪内は1年間ストッパーとして役割を果たし切ってみせた。49試合に登板し32セーブ、防御率1.71の成績を残した。慣れない9回のマウンドであったはずだが、彼は狼狽える姿は一度も周りに見せなかった。昨年の成績の確変は続かなかったが、被本塁打はシーズン通じてわずか1つ。期待されていた姿は今年も健在であった。そんな坪内の熱投をよそに、チームは56勝83敗4分で最下位に沈んだ。なんでだよ。去年の反動がきたのだろうか。年俸は複数年契約締結中のため今年も変わらず3300万。これを見越して複数年契約をフロントが提案していたのだとすれば、悪徳商売もいいとこである。
2031年シーズン(9年目)
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この年は昨年から急に厳しい場面で投げ始めた疲労が出たのか、防御率はプロ入り後初めて2点台を下回る3.00。まあほぼ2点台ではあるのだが。しかし彼も9年間一軍で投げてきたベテラン投手。良いとは言えないコンディションの中、敗戦数はわずかに2、得点圏被打率も3割近くまで迫ったが、それでも被本塁打はわずかに2本。柵越えだけは許さず、守護神としての威厳を保った。プロ入り後一度もシーズン50試合登板がないなど、登板数だけは優しくされている彼。一軍で投げる姿を少しでも長く見たいと願うファンも多いだろう。チームは59勝79敗5分の5位。またいつものループに入ってしまったようである。この年彼の年俸は大幅アップし、年俸9000万の2年契約を新たに結んだ。どうやら抑え投手の価値ならフロントは分かるらしい。
2032年シーズン(10年目)
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この年は光と影のはっきりしたシーズンとなった。抑え3年目を迎えた今季、ついに50試合以上への登板を果たし、最終的には53試合で38セーブを上げ、初の個人タイトルとなる最多セーブを獲得した。チームも昨年の5位から一気にジャンプアップし、75勝66敗2分で首位とゲーム差なしの2位に躍進した。ここまで聞くと充実のシーズンかのように思えるが、投球内容にかなりの不安を残していた。まず、昨年始めて3点台に乗った防御率がさらに悪化し、4.21まで下がってしまった。抑えという重要なポジションを託されながら痛打される場面も目立ち、8敗を喫した。四球が増えたこともそうだが、得点圏被打率.349、被本塁打率もプロ入り後ワーストとなるなど、ここ一番で粘りきれない場面も多かった。来年は安定感を取り戻し、不動の守護神としての地位を確立することができるか。年俸は複数年契約締結中のため来季も変わらず9000万。
2033年シーズン(11年目)
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今年の坪内は、若い頃のようなバリバリの投球とはいかないまでも、円熟味のあるピッチングで4年目となる抑えの役割を全うし、2年連続での最多セーブのタイトルを獲得した。昨季はセーブ数ほどの信頼感を得られなかったが坪内だが、今年は各指標を改善させ、しっかり見られる数字にまとめてきた。奪三振率はプロ入り後初めて5点を下回りなかなか空振りを奪えない場面も多かったが、被本塁打はわずかに2。超えてはいけないラインの一歩手前で踏みとどまってきたことが伺える。ただチームは68勝73敗2分の5位とBクラスに1年で逆戻り。来季はベテランのピッチングで再浮上なるか。年俸は4000万増の1億3000万円となった。苦節11年、ついに年俸は大台を突破した。
2034年シーズン(12年目)
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坪内もとうとう35歳、寄る年波と戦いながらのピッチングとなった。これで3年連続となった50試合登板を果たし、防御率もなんとか3点台にまとめてきた。この年顕著となったのは制球力の衰えである。四球率は4.35となり、コントロールを乱してランナーを溜める場面も多かった。それでも年間通じて役割を全うしたのは500試合以上投げてきた経験あってのものか。来季以降を案ずるファンもこの年は多かった。チームは69勝70敗4分の4位となった。年俸は1000万減の1億2000万となった。
2035年シーズン(13年目)
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この年抑えを外された坪内はかつての定位置である中継ぎへと戻り、衰えていく球威と闘いながらのんびりと投げていた。それでも指標的には昨季とあまり変わらないクオリティの投球を披露した。昨季があの投球内容で抑えにいるというのはちょっと危なっかしすぎただけという側面もあるが。こんな感じでのらりくらりとやっていけば、まだ彼の選手生命は長いのではないかという見方もあった。ここから彼がどう年齢に適応していくかが見所である。それよりも彼にとって嬉しかったのは、チームがリーグ優勝を果たしたことだろう。最終戦までもつれ込むデッドヒートの末、76勝64敗3分で横浜を振り切った。苦節13年、Bクラスにいた年も長いチームだったが、坪内はついにビールかけの歓喜に酔いしれた。年俸は約半減の6800万となった。やはりこのチームはホールドとセーブ以外で救援投手を査定する手段がないらしい。
2036年シーズン(14年目)
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いよいよ坪内も37歳を迎え、ついに球の衰えは隠せなくなってきた。今まではバットに空を切らせてきた球で空振りが奪えず、四球で塁を埋める場面も今年は多く見られた。しかしそれでも、何故かヒットを打たれることは少なかった。これぞベテランのなせる技だろうか、衰えた力をプロで14年生き抜いてきた投球術で補い、防御率も久しぶりの2点台を叩き出してみせた。そんな坪内長老に率いられた広島ブルペン陣は救援防御率リーグ2位と試合の終盤を締め、チームの75勝63敗5分でのリーグ連覇、日本一に貢献した。ついに今まで達成できていなかった日本一のタイトルを掴み取った坪内、あと4つに迫った600試合登板の達成をはじめとした
キャリア最終盤の道筋がファンの注目を集めていた。ただ広島フロントの年俸カットはとどまるところを知らず2300万減の4500万となった。なんでやねん。
2037年シーズン(15年目)
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とうとう若手の活きのいい投球に押しきられてしまった坪内は、プロ入り後はじめての一軍登板無しに終わった。チームは76勝62敗5分で3連覇を惜しくも逃す2位に終わったが、優勝争いを続けるチームの中に坪内の姿はなかった。シーズン終了後に、今季限りでの引退を表明した。
引退
通算成績
登板…596
勝利…33
敗戦…40
セーブ…184
ホールドポイント…115
投球回…703回2/3
奪三振…497
防御率…2.60
被打率…0.214
被本塁打率…0.49
K/BB…2.47
WHIP…1.11
主な獲得タイトルなど
最多セーブ…2回(2032・2033)
5年連続30セーブ(2030〜2034)
総評
クローザー時代を除いて厳しい場面で投げることが少なく、リリーフというポジションも相まってなかなかその存在が際立つことは少なかったが、長きにわたって安定した投球で広島のブルペンを支えた。怪我もせず、回またぎも厭わない彼は投手コーチの心理的安定に大いに役立ったことであろう。30歳を過ぎてから突然のストッパー転向を命じられたが、5年間その役割をしっかり果たし、広島の長期低迷脱却に貢献した。あと4つに迫っていた600試合登板や残り16の通算200セーブなど、達成を見たかった記録もあるが、七色の変化球をコーナーに制球よく投げ分け長打を許さないその姿は、人々の記憶にしっかりその印象を焼き付けていることだろう。
以上、坪内のプロ野球人生でした。