CoC7版の呪文習得ロール、要る?
こんばんは。
シナリオ製作に行き詰まっているので、息抜きにシナリオに関する記事を書くことにしました。
今回は新クトゥルフ神話TRPGの呪文について話します。6版ではなく7版のお話です。特に呪文習得ロールとキャスティングロール、およびその成功率ついて取り上げます。
7版でシナリオを作成する際に、呪文まわりの難易度(主に呪文習得ロールを要求するか否か)で迷うこと、ありませんか? 私もどう設定したらシナリオのゲームデザインに見合った難易度を実現できるのか、いまいちよくわかっていなかったです。なので、そのあたりのメモを置いておこうと思います。
シナリオ製作者がそれぞれのやりたいゲームデザインに見合った難易度を実現できるようになると良いなと思っています。
呪文習得ロールとキャスティングロール
新クトゥルフ神話TRPGで呪文を成功させるためのポイントに、呪文の習得ロールと「キャスティング・ロール」があります。
それぞれのルールブック上の定義を確認します。
呪文の習得に必要なロール(以下「呪文習得ロール」)についてはルールブック172ページ右下にこのような記載があります。
呪文習得ロールを必要とするかどうかは、シナリオ次第(あるいはキーパー次第)ということになります。
呪文習得ロールが要求される場合、ハードのINTロールが必要です。
一方、キャスティング・ロールについてはp.174の左側に記載があります。
キャスティング・ロールに関しては条件節はないので、常に要求されるものだと理解できます。
キャスティング・ロールにはハードのPOWロールが必要です。
呪文を唱えられる確率
これらのルールブックの記載をふまえると、呪文の詠唱が成功する確立は「呪文習得ロールを要求するか否か」によって変わってきます。呪文習得ロールを要求しないほうが呪文は成功しやすくなり、呪文習得ロールを要求すれば呪文は成功しにくくなります。
呪文習得ロールを必要とするか不要とするかによって、呪文の成功確立は下記のように変わります。なお、これは退散の呪文みたいに「誰か一人は成功すればいい」状況を想定しています。少なくとも一人が成功する確率です。
呪文習得ロールを要求する場合、呪文の成功確率は
PL1人なら8.5%、PL2人なら16.3%、PL3人なら23.5%です。
呪文習得ロールを要求しない場合、呪文の成功確率は
PL1人なら26.3%、PL2人なら45.6%、PL3人なら59.9%です。
呪文習得ロールを要求する場合、PLが3人いても目星の初期値ぐらいしか成功しないという形になります。結構シビアな数値ですね……。
次の節では、この計算過程を書いておきます。
なお、これは呪文の詠唱それ自体が成功になる確立であり、対象とのPOW対抗が必要な呪文である場合などには更にそのロールも要求されることになります。……シビアですねぇ~。
計算過程の明示
探索者のステータスが探索者によって異なるのは勿論ですが、それを言っていては計算ができないため、あくまで期待値による平均的なステータスで算出をしていきます。
INTは(2d6+6)*5で算出されるため、平均的には65となります。よって、呪文習得ロール(=INTハード)で要求される平均値は32.5程度です。
POWは(3D6)*5で算出されるため、平均は52.5となります。よって、キャスティングロール(=POWハード)に要求される平均値は26.25程度です。
プレイヤーAが成功する確率をP(A)、プレイヤーBが成功する確率をP(B)、プレイヤーCが成功する確率をP(C)として表記します(これは計算式の表記上呼び分けるだけで、確率はすべて同じです)。
■呪文習得ロールを要求する場合
呪文習得ロール(INTハード)と、キャスティングロール(POWハード)の双方に成功する必要がある場合、32.5%と26.25%を掛ける必要があります。よって1回の呪文詠唱(試行)における平均成功率は、0.325*0.2625≒0.0853、すなわち約8.5%となります。
PLが2人であれば、どちらかが成功する確率は
P(A∪B)
=P(A)+P(B)-P(A∩B)
=8.53%+8.53%-0.73%≒16.3%
PL3人であれば、誰かが成功する確率は
P(A∪B∪C)
=P(A)+P(B)+P(C)-P(B∩C) - P(A∩B) - P(A∩C) + P(A∩B∩C)
=8.53%+8.53%+8.53%-0.73%-0.73%-0.73%+0.6%
≒23.5%
■呪文習得ロールを要求しない場合
キャスティングロール(POWハード)のみが要求されます。1D100を1回振ったときの平均成功率はPOWのハードと同値、すなわち約26.25%です。
PLが2人であれば、どちらかが成功する確率は
P(A∪B)
=P(A)+P(B)-P(A∩B)
=26.25%+26.25%-6.9%
≒45.6%
PL3人であれば、誰かが成功する確率は
P(A∪B∪C)
=P(A)+P(B)+P(C)-P(B∩C) - P(A∩B) - P(A∩C) + P(A∩B∩C)
=26.25%+26.25%+26.25%-6.9%-6.9%-6.9%+1.8%
≒78.8%
所感
呪文習得ロール(INTハード、平均値32.5)とキャスティング・ロール(POWハード、平均値26.25)の両方を成功させないといけない、というシチュエーションのシビアさがわかりました。
探索者にとってクトゥルフ神話の呪文は日常的に知っている知識ではないでしょう。呪文を成功させることはシナリオの展開に影響を及ぼすことが殆どです。成功した世界をどの程度の確立で見れるようにしたいかによって、シナリオ製作者やキーパーは呪文習得ロールを要請するかどうかを決めるといいでしょう。
たとえば、探索者が退散の呪文を使用することを前提としたシナリオ展開の場合には、呪文習得ロールは要求しない。しかし一方で、探索者にとってより有利な効果のある深層のバージョンの習得には呪文習得ロールを必要とする……、といったこともできますね。作れたら面白そうです。
以上! おわり! ありがとうございました!!
(※計算間違いがあったら教えてください)
2023/03/28追記:計算間違いがあったので再計算しました……。
2024/02/21追記:「所感」を少し簡略化。出典を明記。
引用元:
サンディ・ピーターセン, ポール・フリッカー, マイク・メイソンほか 著、坂本雅之 ほか 訳、2019、『新クトゥルフ神話TRPGルールブック』、KADOKAWA
余談
クトゥルフ神話TRPG(6版)では「呪文の習得は誰にでもできること」とされています(p.111)。なおかつ、6版にはキャスティング・ロールのルールも存在しません。
6版シナリオはそうした状況を前提にかかれているため、6版シナリオを7版へコンバートして遊ぶときに呪文習得ロールやキャスティング・ロールを要求すると、シナリオ製作者が本来意図したであろう難易度と実際の数値的な難易度が大きく乖離します。
シナリオをコンバートして遊ぶときには頭の片隅に入れておくと良いかも知れませんね。