『星をつける女』

原宏一さんの作品。

投資家から個別に依頼を受けて、飲食店の覆面調査を行う紗英。紗英は学生時代の先輩である真山と一緒に調査を行っていく。


シェフの挨拶のタイミングというものがあるのだと初めて知った。

紗英の元同僚のフランス人の言葉が印象に残っている。お金のため、生活のために働くのではなく、「休むため」に働いているというのが目から鱗だった。

紗英が2回七海に対してオファーをしたにもかかわらず、七海に断られてしまった。そのため、七海はもう徳島で過ごしていくのかと思っていたら予想外の結末だった。

炊飯添加剤について知って、これまでに食べてきた弁当などを思い返してみると、そういうことかと納得した。


印象に残っている文

シェフの挨拶は、デザートをクリアして食後のコーヒーを二口ほど飲み終えた頃合いだ、と舌打ちしながらダメ出しされた。

芯温とは食材の中心部の温度のことで、肉や魚を焼くときは旨みと食感を最大限引きだすために、芯温は何℃、と決めて温度管理しながら火を入れている。

グラタン・ドフィノアはフランスの家庭料理で、肉料理の付け合わせとしてよく食べられている。

日本でグランメゾンを経営するのは大変なことだ。高価で稀少な食材を手の込んだ技法で調理して何皿も提供しなければならない。高額ワインの充実した在庫も必須だし、店舗の内装や備品にも凝らなければ満足してもらえず、高級食器やカトラリーも山ほど揃えておく必要がある。

「あたしは休むために働いてるの」中略「のんびり愉しく休みたいから、頑張って効率よく働く。あたしはそう考えているんだけど、どうもサエは違うみたいね。働くために働いてるとしか思えない」

「そんな鬱を発症した人には、四つの禁句があるんだよな。第一は、もう常識になってるけど、頑張れ、といった励ましはダメ。第二は、あなた自身にも問題があるんじゃない?といった責め句もダメ。第三は逆に、あなたの気持ちはよくわかる、といった共感づらをしてもダメ。そして第四は、じゃあこうしようか、といった提案もダメ」

近頃は高級と言われる旅館やホテルでもサービスの概念を勘違いしていることが多い。端的な例が名前の呼びかけだ。

安い米に炊飯添加剤を入れて炊いたご飯は、米粒が貧弱なのに特有の甘い香りが立つからだ。食感や舌触りも上質な米をちゃんと炊いた場合よりも落ちる。


いいなと思ったら応援しよう!