『さきちゃんたちの夜』
よしもとばななさんの作品。
短編集である。
スポンジ、鬼っ子、癒しの豆スープ、天使、さきちゃんたちの夜と5つの話が収録されている。
個人的に一番好きな話は「癒しの豆スープ」だ。
無料で豆スープをあげていた祖父母の行動が素晴らしいと思う。
また、祖父母の死後に無料豆スープを再開するかどうか悩む親子の様子がとてもリアルだ。
この飯岡くんにも高崎くんにも親がいて、彼らだっていつかこんなふうにお腹に入れられて運ばれながら育っていったのだ、そう思うだけで、ふたりともが愛おしかった。
実際に見たこともないものを語る世界って、きりがない分、なんて空しいんだろう。
「そして俺が思うに、無料っていうのは、ほんとうはとても残酷なことなんじゃないのか?結局はそれを相手が背負うことになるだろう。自分の得たものを。それはゆくゆく積もりつもって、その人を蝕むんじゃないのか?」
↑ この言葉を読んで、深く考えさせられた。
言葉と、その人の考えに距離があることはいくらでもある。そのほうが普通だと思う。内心いろいろ思っていても感じよくふるまったり、こう言っておいた方がいいだろうということを言ったり。
子どもの懇願の声は、大人が命令するときのトーンと同じだ。自分のつごうをぐいぐいとただ押しつけてくる。
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