『夢は捨てたと言わないで』

安藤祐介さんの作品。

かつて甲子園を沸かせてプロ野球選手になったが、活躍できず引退した栄治。引退後に働いていたスーパーエブリで、社長から吉祥寺本店のアキチーナを活用してお笑い実業団を作るという指令を受ける。


スーパー×お笑いというのが、どのような化学反応を生むのかとても気になった。

物語に出てくる漫才がどれも面白かった。

それぞれの芸人に個性があり、みんな応援したくなった。

四代目社長の思いを知ることができて、とても良かった。


印象に残っている文

「だからね、樫村君は四月から『惣菜売場副主任兼娯楽事業開発室長』」

栄治には彼らの会話の応酬が、相当な訓練を要する離れ業であることは直感的に分かった。百数十キロの豪速球を投げる力や、その豪速球を細いバットで打ち返す力と同様、芸人たちの会話に対する研ぎ澄まされた感覚は、鍛え上げられた特殊能力だ。

異動させられた、押し付けられた。そういう意味付けをしているのも自分自身。ならば違う意味付けをしてみる。負けてたまるか。こう考えたら、どうだろう。

最後にロック春山が『ヘイ・ジュード』の替え歌『米寿』で締めくくった。

牛乳のように回転率の高い商品を欠品させるのは大きな販売機会損失だ。

「ピン芸はむずいで。型がなくて何でもありな分、センスが試される。ネタを飛ばした時のごまかしもきかへんし、スベった痛みも全部ひとりで被らなあかん」

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