『時が見下ろす町』
長岡弘樹さんの作品。
以下の話が収録されている。
白い修道士
暗い融合
歪んだ走姿
苦い確率
撫子の予言
翳った指先
刃の行方
交点の香り
時世堂百貨店の周りで起きる事件の連作短編である。個人的には、「撫子の予言」が一番好きだ。ラストの意外な事実に驚いた。長岡さんはどのように作品の構成を考えているのか気になった。読んだあとは、もう一度読み返したくなった。
印象に残っている文
「ーーまず、黒い絵の具は使わないの。自然の中で『黒い』ものは、実は『黒い』じゃなくて『暗い』だから。」
「『ロカールの交換原理』っていうのを聞いたことがあるでしょう。『二つの物体が接触したときには、必ず、片方の微物がもう片方へ移動し合う』ってやつ」
とにかく怪我をしないこと。それが彫刻刀を使用するうえで一番の基本だ。
「それから、ボクシングの基本は、相手とは反対の動きをすることだ。敵が疲労したときは攻撃する。敵が逃走するときは追跡する、敵が止まったときは撹乱する、という具合だ。