『もう別れてもいいですか』

垣谷美雨さんの作品。

50代の澄子は夫との生活をとても嫌だと感じている。さまざまな葛藤がありながらも、夫と離婚することを決意する。


「夫婦は所詮血のつながっていない他人である」というのを忘れてはいけないと感じた。

澄子のお母さんはとても良い人だと感じた。

澄子の周りの人も、いろいろと大変なことがあったが何とかしている様子を見て、すごいと感じた。


印象に残っている文

ごめんね、雅代。羨ましいなんて言っちゃって。だけどね、早死してくれる以上に妻サービスなことって他にある?

今まで、夫に暴力を振るわれたことは一度もない。そして、「誰のお陰でメシを食えると思ってるんだ」などと言われたこともない。だから、このどうしようもないほどの嫌悪感や威圧感を人に説明するのは難しい。同じ部屋にいるときの、息が詰まりそうな感覚は、経験のある人でないとわからないだろう。

熟年離婚する女はある意味すごいと思うようになった。こんな年になってから女一人で生きていく覚悟をして、人生をやり直そうとするのだから普通じゃない。経済力と強い精神力を持つ女でないと、やり遂げられない偉業ではないかとさえ思う。

望美の話によると、フランスでは離婚するときは双方の同意があったとしても裁判所を通すという。日本のように紙切れ一枚にサインしたら終わりという簡単なのは世界でも珍しいらしい。

「例えば、ダンナはあのとき人前で自分を馬鹿にしたとか、自分より舅姑を優先したとか。そういったひとつひとつの出来事は、男からしたら些細なことに感じるかもしれないけど、屈辱感が積もりに積もっていくのよ。そういうのって時間が経っても忘れたりできない。いわば永久不滅ポイントよ」

女というものは、結婚生活が長くなるにつれて性格が歪んでくる。自分にしても、夫の機嫌を取るために、または舅姑に非難されないために、年がら年中嘘ばかりついてきた。だから……リンダのように楽しげに自由に暮らしていそうな女が憎くなる気持ちはよくわかる。ーー成功しているように見えても、きっと裏があるはず。本当は不幸に決まっている。みんなそう思いたくてたまらない。

「言えばわかってくれるっていうアレね、嘘やから」「えっ?」「本当は、嫁はんがわざわざ言わんでも男はわかっとる。一緒に暮らしとるんやもん。面倒なことは全部嫁はんに押しつけとることも、嫁はんがくたくたに疲れとるのも男は本当はわかっとる。見て見ぬふりしとるだけ」

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