『料理人の光』
原宏一さんの作品。ヤッさんシリーズの4作目。
主人公はイタリアから帰ってきたリョータである。リョータは足立市場から魚を万引きしているところをヤッさんに見つかり、罰としてヤッさんの保護下に置かれる。
帝都ホテルの宴会担当料理長のタケ坊の話が一番印象に残っている。宴会担当料理長になると、現場から少し離れてしまって管理や調整の方が多くなるということを知らなかった。
ヤッさんの「アーティスト型」と「プロデューサー型」という話がとても勉強になった。
ラーメン屋台のおやっさんの味を引き継ぐために、リョータと健吾が頑張るシーンが良かった。
印象に残っている文
「もう一つの基本は、ジャガイモの皮だ。たかがシャトー剥きができるぐれえで得意そうにしてたが、野菜の皮を直接ゴミ箱に放り込むなんざ、ど素人もいいとこだ。ジャガイモや人参の皮だって野菜出汁のもとになるだろが。種だって骨だってスジだって目ん玉だって、食材は余すことなく使い切るのがプロの鉄則だし、それが食材に対する礼儀ってもんだろが!」
怒鳴られたり叱られたりしたときは無性に腹が立ったものだが、料理人たるものの心得を保護司のごとく諭してくれた説教には、骨身に沁みる説得力があった。ショータの欠点をズバズバ突かれたというのに心洗われる爽快感すらあった。
ガテマンジャーとは、調理場内でサラダやパテ、スモークサーモンといった多種多彩な冷製料理を担当する料理人だ。
「つまり宴会担当料理長っていうのは、宴会料理部門の仕切り役として存在してるだけなんだよね。日常的には予算管理や売上管理、部下の人事管理、そして将来に向けて人材も育成していかなければならない。ほかにもホテル経営陣との折衝、他部署との調整、出入り業者との交渉、顧客や得意先との付き合いなんかもあるから、調理場にいられる時間なんて本当に限られている」
「アーティスト型は、まずもって終始一貫、アーティスト型のまんま突き進んでいくんだが、プロデューサー型の場合、ときにアーティスト型に憧れることがある。自分一人の葛藤と決断だけで突っ走れるアーティスト型と違って、チームを統率しなきゃ自分を表現できねえプロデューサー型は、背負いきれねえほどの軋轢を抱え込むことがあるもんだから、それから逃れたい一心でアーティスト型に転向しようと、もがいちまう」
日本は先進国で唯一、“都道府県単位または海域単位”で漁獲総量が決まっている。つまり自分の地域の漁獲総量内であれば、一人の漁師が早いもの勝ちでごっそり魚を獲ってもかまわない。