『ヤッさん』

原宏一さんの作品。「ホームレスのグルメ帳」「ラブミー蕎麦」「籠城レストラン」「築地の乱」「松の木コテージ」「ターレの行方」といった話が収録されている。

ホームレスのヤッさんは食の知識で飲食店と築地市場を橋渡しするキーパーソンである。ホームレスのタカオはある日、ヤッさんと出会い人生が変わっていく。


個人的に「ターレの行方」が一番好きな話だ。最後は芸能人に対してきちんとやり返すことができたので、嬉しかった。

ヤッさんの移動手段はランニングというのが、とても好感を持った。

ヤッさんの過去を知って、飲食店の経営というのは難しいものだと感じた。あらゆる方面の対策をしないといけないと考えると、成功している飲食店の経営者はすごいと思った。

タカオが記者に対してぺらぺら喋ったことに対して、ヤッさんは許してくれた。そんなヤッさんの器の大きさがかっこいいと思った。


印象に残っている文

「馬鹿野郎っ、ホームレスだから体力がなきゃだめなんじゃねえか。おれたちにゃ健康保険も医療保険もなにもねえんだ。長年ホームレス張ってくつもりなら健康維持は生命線だ。健康のためなら死んでもいい! それぐれえの根性決めて頑張んなきゃな」

「調理にかける手間ひま、衛生管理の良し悪し、店の人間の素顔から出入り業者への支払い状況まで。早え話が、勝手口を覗いてみりゃ店のすべてが見えてくるわけよ」

「いいか、身の上話ってのは逃げなんだ。あたしはこんな身の上だから仕方ないって諦めたり、こんな身の上だから助けてって、だれかにすがりつくための逃げの道具でしかねえんだよ。」

「流通が発達したおかげで、都会のど真ん中にいてもそれなりにうめえもんが食えるようになった。だが一方で、流通に乗せるために食い物の本当のうまさが損なわれてるのも事実だからな」

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